修行パートは添い寝つき!? リシェルの秘密と、お風呂場でばったり事件!
「──ふう……」
朝の騒ぎのあと、俺は神殿の中庭にて、魔力操作の訓練をしていた。
もちろん、俺の《奈落の書》の力があれば、基礎的なスキルなんて練習しなくても発動できる。が――
「……中二病を極める者として、“意味のある修行”は常に大歓迎だ」
ただし、俺の周囲には今、監視役として2人の美少女がいる。
片方は、元気いっぱいな獣耳少女ティナ。
そしてもう一人は、少し距離を取りながらこちらを見ている――リシェルだ。
「ふん……修行なんて、見せびらかしたいだけでしょ? バカみたい」
「だが、お前も見ている。ならば俺の“影の舞”をその瞳に焼きつけるといい」
俺は魔力を右手に集中し、空中に炎を描く。《闇の焔》――常人には扱えぬ、黒く燃える魔力の炎だ。
「わぁ……綺麗……」
「……ッ!」
ティナが素直に褒めてくれたのと対照的に、リシェルはなぜか小さく舌打ちして顔を背けた。
──ツンが過ぎる。
訓練を終え、汗をぬぐうために神殿の浴場へと向かった俺は、運命の“事件”と出会う。
「……ん? 誰か入って――」
ギィッと木扉を開けた瞬間、そこにいたのは――
「きゃああああああああっ!?!?!?」
蒸気の中に浮かび上がる、絹のような白い肌と、長い銀髪。タオル一枚の姿で、浴場の中央に立っていたのは他でもない、リシェルだった。
「おまっ、ばかっ! 何してるのよぉぉぉ!!」
「いやっ、俺はただ、風呂に……神殿の掲示板には“男子使用中”の札がなかった……」
「外したのはティナよ!! 絶対あの子わざとでしょ!!」
彼女の顔は真っ赤。けれど、逃げようとせず、ただ手で胸元と下を抑えてこっちを睨んでくる。
「見た、わよね……? 見たのね……?」
「……闇に誓って、記憶の中に永久保存された」
「ふざけんなあああああああああ!!!!!」
──その後、俺の顔面には“雷属性の平手打ち”が炸裂し、風呂桶ごと外へぶっ飛ばされた。
だが、ほんの一瞬見えた表情。
恥ずかしそうに、でもどこか安心したように笑ったリシェルの顔を、俺は忘れない。
そう――この“事件”をきっかけに、彼女との距離がほんの少し、縮まった気がしたのだった。
次回
第6話『新キャラ登場! 無口系魔法少女・フィーネのキスから始まる召喚契約!?』