獣耳少女と初めての共同生活!? まさかの同棲スタート!?
魔獣《雷喰獣》を撃破してから数時間。
俺は神殿近くの宿舎に案内されていた――いや、正確には、「そこしか空きがなかった」らしい。
「ねえ冥くん、ほんとにここの部屋でいいの? 一緒に住むことになっちゃったけど……」
そう言って首をかしげるのは、獣耳少女・ティナ。
神殿の案内役をしていた彼女は、なぜか俺の“管理担当”になったらしく、同じ部屋で生活することになったのだ。どうやら冒険者見習いと異世界人は“ペアで行動させる”のが王都のルールらしい。便利すぎるルールだな、これ。
部屋の中は、シンプルな木造り。ベッドが一つ、テーブルと椅子が二つ、あと――
「……ちょっと待て、布団が一枚しかないんだが」
「え、えへへ……そうみたい。し、仕方ないから、一緒に寝ちゃう?」
ちょっと顔を赤くしながら見上げてくるティナ。獣耳がふにふに動いて、なんかもう反則級にかわいい。
「……ふっ、俺は夜の闇と契約した存在。“抱き枕程度”で理性が崩れるほどヤワではない……が」
「が?」
「……その尻尾、無防備すぎるだろ。距離感を間違えると俺が理性を落とすぞ」
「きゃっ!? こ、こういうの、冥くん慣れてるの……?」
「フン、女の子と一緒の布団で寝たことなんて、あるに決まってるだろ……俺の夢の中ではな」
「わぁ~! それって初めてってことじゃん!」
──バレた。けど、なんかティナは嬉しそうに笑ってるし、まぁいいか。
そんなこんなで、その夜。
ティナとひとつの布団で並んで寝ることになった。
「ねぇ冥くん、なんでそんなに強いの? 最初からあんな魔法使えるなんて……」
「……闇と契約したからだ。俺の力は“奈落の書”によって増幅されている。代償は――まぁ、ちょっと中二病になる程度さ」
「ふふっ……でも、その中二病、あたし結構好きかも」
ティナの声は優しくて、どこか眠たげだった。気がつけば、彼女の手が俺の腕に絡みついている。
「……ちょっとだけ、ドキドキするけど……うれしいな」
柔らかい体温と、ふんわりした匂い。
これが……異世界生活ってやつなのか……!
──しかし、翌朝。
「……って、なんであんたたちが同じ布団で寝てるのよ!!?」
ドアを蹴破って飛び込んできたのは、はい、皆さんご存じツンデレ令嬢・リシェルさんである。
「お、落ち着け、リシェル。これは、王都の……ルールでな……!」
「そ、そんなルール、あたし知らない!!」
──混沌の朝、ハーレムラブコメ編、ついに開幕である。
次回
第5話『修行パートは添い寝つき!? リシェルの秘密と、お風呂場でばったり事件!』