黒き翼の初陣――最強スキル、見せてやるよ
空を裂いて飛ぶ風の音が、耳を突き抜ける。俺の背中には、《奈落の書》により顕現した闇の翼。その存在はこの世界の物理法則すら無視し、俺の意志だけで自在に飛行を可能にしていた。
「……いたな。あれか」
地上を見下ろせば、黒い毛並みに鋭い牙を持つ巨大な獣が、神殿の外れにある街路を暴れ回っている。全長4メル(約8メートル)はあるだろうか。角には雷のような魔力が走り、皮膚からは煙が噴き出している。
《雷喰獣》──ランクCの危険魔獣らしいが……この俺の前では、ただの的でしかない。
「さて……試し打ちってやつだ」
《奈落の書:ページ六――『虚無穿つ魔弾』、展開》
俺の右手に闇の魔方陣が浮かび、その中心に黒紫の光が収束していく。気配に気づいたのか、魔獣がこちらを振り返り、咆哮を上げる。
だが遅い。
「──沈め、《虚無穿つ魔弾》!」
放たれた一撃は、音すら追いつかない速度で魔獣の額を貫いた。次の瞬間、爆音とともに魔獣の頭部が消し飛び、巨体は地面に崩れ落ちた。
神殿の近くで見守っていた住民たちから、どよめきと歓声があがる。
「ひ、一撃……!?」
「なんなの、あの闇の翼……!」
そして──
「す、すごい……ほんとにすごいわ冥……!」
声の方を振り向けば、リシェルが目を輝かせてこちらを見上げていた。……やれやれ、さっきまでツンツンしてたくせに、もうこの反応かよ。
「……ふん、まぁこれくらいは“序章”に過ぎないがな」
あくまでクールに返す俺。しかし、リシェルはなぜか頬を赤らめながら小さくつぶやく。
「……でも、ちょっと……カッコよかったかも」
聞き間違いか? いや、否。これは確実に攻略進行中の合図──!
「おーい! 冥くーんっ!」
遠くから聞こえる元気な声。振り返ると、神殿から駆けてくるのは、栗色の髪にふわふわの獣耳を持つ、元気いっぱいな女の子だった。
「あなたが異世界から来た人!? ねえねえ、すっごいカッコよかったよー! あたし、冒険者見習いのティナだよっ!」
耳ピコピコさせながらぐいっと近づいてくる彼女の胸元は、非常に視線を引く柔らかい質感を強調していた……が、リシェルの視線が刺さってくるので、視線を泳がせて誤魔化す。
──ふふ、どうやらハーレム第二号、追加されちゃいましたね?
だがこの程度で終わりじゃない。
俺の“中二病異世界最強譚”、まだまだ始まったばかりだ──!
第4話『獣耳少女と初めての共同生活!? まさかの同棲スタート!?』
(※布団は1枚しかありません)