きみの名前を呼ぶ日──冥の物語の終わりに
世界の再構築は完了した。
冥たちの戦いは、誰の記憶にも刻まれていない。
神々が消えた今、それは“存在しなかった歴史”として葬られるはずだった。
──だが、それでも彼らは確かにここにいる。
冥は、静かな丘の上に立っていた。
仲間たち──ティナ、ルミア、セレスティア、そしてフィーネが彼の元に集う。
春の風が草を揺らし、空は穏やかだった。
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フィーネの本名
フィーネは、微笑みながら冥の隣に立つ。
「……覚えてる? 私、本当の名前を聞かせてほしいって言ったよね」
冥は頷き、ゆっくりと口を開く。
「……“アリス”。
お前が俺の夢にずっと出てた名前だ。俺にとって、お前は最初からアリスだった」
フィーネ──いや、アリスは目を見開き、やがて泣き笑いのような顔になる。
「……冥。ありがとう。やっと、私になれた」
彼女はそっと冥に寄り添う。
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それぞれの想い
ティナは、王国の再建の中心にいた。だが彼女は言う。
「私はもう、騎士ではない。ただ、あなたを守りたい女よ」
セレスティアは王位を放棄し、ただの一人の“女”として冥と向き合う。
「この世界で、いちばん自由で、いちばん無責任な王になるのよ、冥。
……私が、その王妃になるから」
ルミアは、魔眼の封印を完全に閉じた。
「あなたを壊さないために、私は私を壊さないって決めたの。
──だから、ちゃんと私を選んで」
その問いに、冥は真剣に答える。
「俺は……全員、好きだ」
皆が一瞬呆れて、そして笑う。
「──やっぱり、あなたって最低ね」
「でも、そういうとこが好き」
「……王としての覚悟、ね」
「冥だから、許す」
彼はただの“最強の中二病”ではない。
いま、真に“誰かを守り、愛する男”になった。
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物語の結び──
冥は、丘の上から遠くを眺める。
新しい世界はまだ不安定で、戦争も貧困も完全には消えていない。
でも、彼には仲間がいて、愛する人たちがいる。
「……行こうか。俺たちの、新しい物語へ」
アリス(フィーネ)、ティナ、ルミア、セレスティア──
四人のヒロインたちは、それぞれ冥の手を取る。
──そして、彼らは歩き出す。
この世界を、生きていくために。
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〈完〉
次回
【後日談】
『そして、世界は恋に満ちた──異世界再構築後、冥と4人のヒロインの甘すぎる日常』




