崩壊のリリス──模造冥との邂逅と、選ばれなかった少女の願い
──《リリス》が、狂っていた。
空が真紅に染まり、建物は意志を持つかのように唸りながら崩壊していく。
「この都市全体が“模造冥”の瘴気に飲まれてる……!」
ティナが剣を構えるが、足が震えていた。
「逃げ道はない。このままだと全員、飲まれる」
冥は冷静に状況を読みながらも、心の奥底では焦っていた。
──あいつを追わなきゃならない。でも、こいつらを置いてはいけない。
その葛藤の中で、事件が起きた。
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ルミア、暴走
「冥様は……どこに行くつもりなんですか?」
ルミアの声は、妙に静かだった。
「私たちを置いて、“影”を追うんですか? あんな不完全な模造品を、あなたは……」
「ルミア、落ち着け。俺は──」
「冥様は、私のものです」
次の瞬間、ルミアの魔眼が全開し、空間がねじれた。
ティナとフィーネの身体が、動かなくなる。
「!? ルミア、何を──」
「だって、わかってた。冥様は私を“恋愛対象”には見ていない。
でも私は、ずっと、冥様を“愛していた”んです──他の誰よりも、ずっと」
彼女の周囲に黒炎が舞う。魔力の奔流は、模造冥に近い“虚無の属性”だった。
「お願い、冥様──“あなたのすべて”を、私にちょうだい?」
冥は、初めて言葉を失った。
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選択──冥の答え
「……ルミア。お前の気持ちは、受け取った」
冥は、そっと彼女の頭に手を置いた。
「だけど俺は、お前を“道具”にはしたくない。
お前が望むような狂気の愛ではなく、俺は……お前を“守る”ことで応えたい」
「そんなの……嫌……!」
ルミアは泣き叫びながら力を暴走させる。崩壊が加速する。
だがその時──
「ルミア!!」
ティナが身体の拘束を破り、彼女を抱きしめた。
「バカ! お前が壊れたら、冥がどんな顔するか……!」
ルミアの身体から黒炎が消え、彼女はその場に崩れ落ちた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
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冥、模造冥と対面へ
リリスの最深部。
冥はついに、模造冥と向かい合う。
「オレは、お前の“負の面”から生まれた。つまり、オレこそが“本物”」
「……違うな。お前は、“俺の影”だ。だが影は、光がなければ存在できない」
冥が剣を構え、模造冥もそれに呼応して構える。
《冥 vs 模造冥》──開戦。
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サブエピローグ:セレスティアの焦り
王都──鏡の間。
セレスティアが報告書を読んでいた。
「リリスが、陥落寸前……? 冥を送った意味が、逆効果になっている……?」
彼女は額を押さえる。
「──私の計画が、狂ってきている」
その瞳に、わずかな焦りがにじんでいた。
次回予告
第24話:冥と影──“自分”という存在を懸けた戦い




