王女セレスティアの提案──冥、王家との“契約”へ
王都中央議会塔、その最上階。
赤絨毯に覆われた謁見の間には、たった一人の王女が待っていた。
セレスティア・アルバレスト。
現王の一人娘にして、王都の影の支配者──その美貌と才知は「氷の華」と呼ばれる。
冥が足を踏み入れると、セレスティアは笑った。
「ようこそ。“虚無王”の器でありながら、三人の少女に命を賭けさせた男よ」
「……言い方ってもんがあるだろ」
「ふふ、冗談よ。今日はあなたに“取引”を持ちかけに来てもらったの」
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セレスティアの提案──王家との“条件付き契約”
セレスティアが提示したのは、こうだった:
•冥を“王家直属の守護騎士”として登録する
•形式上、王女セレスティアと「仮婚約」することで、王族の庇護を得る
•対価として、冥の力の一部を“封印管理”すること(形だけ)
「これであなたは“封印対象”ではなく、“国家戦力”になる。
ヒロインたちも守れるし、影の冥への対抗策も打てる。……悪くない話でしょ?」
冥は黙ったまま、その瞳を細めた。
「ふざけんなよ。これは“縛り”だ。俺は、俺の意思で動く」
「そう。だから、選ばせてあげる。
……私と“形式的に”婚約するか、それとも“王都を追放”されるか」
静かな脅しだった。
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ヒロインたちの反応──三者三様の揺れ
その夜、冥はティナ、ルミア、フィーネにすべてを話した。
「ふざけてる……!」
ティナはテーブルを叩き、立ち上がった。
「王族の守護なんて、冥に必要ない! 私たちが守る!」
「でも……仮婚約って、“冥様の気持ち”と関係ないんですよね?」
ルミアの声は冷静だったが、手は震えていた。
「だったら私は反対しません。冥様の自由を守れるなら──」
「……ルミア、無理しなくていい」
フィーネが優しく抱き寄せる。
「でも……でもさ、私は本当は……冥と、普通に手をつないで、隣で歩きたかっただけなのに……!」
誰もが、冥の“決断”に揺れていた。
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冥の決断──仮婚約、受諾
翌朝、冥は再び王城を訪れ、セレスティアに告げた。
「いいだろ。だが条件がある。
俺が“自分の意志”でそれを拒むときは、王族であろうと手加減しねぇ」
「ふふ、あなたらしいわね」
セレスティアは満足げに頷いた。
「では契約成立。これよりあなたは──王家直属の“黒の守護者”」
その瞬間、王都の権力構造が静かに書き換えられた。
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サブエピローグ:影の冥、動く
その頃、王都から遠く離れた廃都にて。
影の冥が何かを創り出していた。
「冥……つまらぬ道を選んだな」
彼の手には、冥と同じ顔を持つ“もう一つの器”──不完全な模造体。
「次に会うとき、お前は“誰を守れる”?」
影は、静かに笑った。
次回予告
第22話:歪みの都へ──冥、封印都市へ潜入




