前世の真実──冥の正体、“虚無の王”の記憶
深夜。王都の一角にある古代図書塔。
冥はフィーネの案内で、王族ですら立ち入れない最深部の禁書区に足を踏み入れていた。
「……ここに、俺の“前世”の記録があるのか?」
「ううん、“記録”じゃない。“封印”……あなた自身の記憶、その一部よ」
壁に浮かぶ黒い紋章。それに触れた瞬間、冥の視界が真っ白に染まる。
⸻
冥の記憶回帰──千年前の虚無戦争
──そこは、光も影も存在しない空間。
ただただ、果てのない“虚無”が広がっていた。
その中心に、一人の男が立っていた。黒衣に身を包み、背中には剣ではなく“巨大な封書”を背負っている。
『全てを壊してやる。神も運命も、この世界さえも』
世界を滅ぼしかけた存在──それが、冥の前世だった。
だがその虚無の王は、最後の瞬間に一人の“少女”に説得され、自ら記憶を封じ転生した。
その少女こそ、前世のフィーネ。人工的に創られた、虚無王制御のための「安定装置」。
そして、冥の心に直接語りかける声が聞こえる。
『──起きろ、“冥”。この世界はまたお前を裏切ろうとしている』
『全てを滅ぼす力があるなら、なぜ赦す? なぜ、愛する?』
⸻
冥は目を覚ます。額には汗が浮かび、瞳には鈍い光。
「……思い出した。俺は……虚無の王、“ネザレク=エイグレッド”。この世界を滅ぼしかけた、化け物だった」
フィーネは首を振る。
「違う。あなたは冥。私が大好きな、優しくて強い人……それだけよ」
冥はフィーネの手を握る。
「たとえ過去がどうであれ、今の俺は“彼女たち”のために生きる。過去の罪は、未来で贖うさ」
そして冥は、再び静かに笑った。
「大丈夫だ。今の俺は、“最強の中二病”だ。世界が何だろうと、俺が決める」
⸻
サブエピローグ:王家の動き
王城最上階。王は一人、地図を見下ろしていた。
「目覚めたか、“虚無王”……ならば計画を前倒しせねばなるまい」
その背後には、冥に似た顔をした、謎の男の姿──
「第二の“虚無”もまた、目を覚ましつつある」
次回予告
第19話:王都暗躍──もう一人の“冥”、影なる虚無