選定の儀・後半戦──フィーネ覚醒! 闇の力と“前世の記憶”
選定の儀、第二試合。
出場者:フィーネ・ネメシス。
その名が呼ばれた瞬間──王族の一部がざわめいた。
「ネメシス……その名、記録にあったはず……」
「まさか、かつての“影魔導兵計画”の……?」
だが、フィーネ本人はそれを知らない。
今の彼女はただ、冥のために強くなりたかった。
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対戦相手──王立魔導院主席、ローゼ・アレクティア嬢
「王都魔導の誇りにかけて、田舎娘に負けるつもりはありませんわ」
貴族令嬢たちとは一線を画す、本物の天才魔導士。
その魔法は精密、速攻、破壊力すべてに優れていた。
開始早々、フィーネのバリアが砕ける。
「ふふ……やはり“愛の力”では、実戦では通用しませんわね?」
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精神の崩壊と、禁じられた記憶の開放
倒れたフィーネの視界が滲む。
(私……また、足を引っ張ってる……)
(冥の“力になる”なんて言って……結局……)
──その瞬間、彼女の中で何かが“解放”された。
(違う。私は、冥を守るために生まれた)
(それが“私の役目”。それが、“前の世界”での……約束)
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フィーネ覚醒──影魔導式“グリムコード:Λ(ラムダ)”
魔力が暴走する。
空が揺れ、観客席から悲鳴が上がる。
「な、なんだあれは……魔力量が桁違いだ!」
「結界が、貫かれる!? バカなッ!」
フィーネの体に漆黒の魔紋が浮かび、瞳が赤く輝いた。
「ごめんね、冥。少しだけ、昔の私に戻るね」
彼女が放った魔法は、超密度の“重圧空間”魔術──
《終焉圧壊》
地を、天を、魔導院主席ごと圧縮して消滅させた。
だが直撃寸前、冥が乱入し、力場を中和。
「……十分だ、フィーネ。もう、“帰ってこい”」
フィーネは泣きながら、崩れ落ちた。
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そして評価──「前世の因縁」へ
王都は騒然となるが、王は笑っていた。
「面白い。あの娘、完全に目覚めてはいない……が、“器”だ」
そして、冥の前世──“世界を滅ぼしかけた魔王候補”としての記録が
王族の書庫で静かに開封される。
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夜の一幕──フィーネの涙と告白
夜、冥は泣いているフィーネを抱きしめていた。
「私は、ただ冥の隣にいたかっただけ……。戦うためじゃなくて……ただ、笑っていたかったの……」
「それでいい。お前が“何者だったか”じゃない。俺にとっては、お前が“今”どう思ってるかだけだ」
──そして、フィーネの恋心は、静かに、確かなものになる。
✦次回予告
第18話『前世の真実──冥の正体、“虚無の王”の記憶』