正妻戦争、勃発寸前!? 冥をめぐる“朝ごはんの座”バトルロイヤル!
迷宮都市ロストベルでの大任務を終えた俺たちは、街の外れにあるセラフィーナの屋敷にて数日間の静養中。
……しかし、“静養”とは名ばかりだった。
なぜなら──
朝から修羅場だったからである。
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始まりは「朝ごはん当番」の小さな争いだった
「冥くんの朝は、やっぱり私の焼いたベーコンが一番だよね!?」(ティナ)
「ちょっと待ってくれる? 今日は私が冥の分も含めて“魔力栄養管理食”を作ってるから」(セラフィーナ)
「私……冥のために昨日からずっと仕込みしてたんだけど……」(フィーネ)
「……冥。どれかを選んだら、あとの子が泣くと思うけど……選んで?」(ルミア)
「というか、どっか外食にしない? もうめんどくさくない? この状況」(リシェル)
テーブルの上には、5人分の手作り朝ごはんがズラリ。
どれも旨そう。だが、選んだ瞬間、たぶん戦争。
「なぁ……俺の胃袋、そんなに国家機密級だったっけ?」
結果的に、俺は5品をすべて平らげた。
腹はパンパン。心はボロボロ。胃薬と愛が染みる朝だった。
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その夜、屋上でフィーネと二人きりの時間
空を見上げると、満天の星。
フィーネが、そっと俺の袖を掴んだ。
「……ねぇ、冥。誰のことが、一番好き?」
無表情に見えるその顔に、いつもと違う揺らぎがあった。
「……それ、今ここで答えると……誰か傷つくと思う」
「……そう。でも……私はずっと、冥のそばにいたい。たとえ他の誰かと結ばれても」
小さな声だった。だけど、その言葉は深く刺さった。
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その頃、迷宮都市の地下では……
夜の迷宮で、一つの魔力の封印が解かれつつあった。
「──《白の魔眼》、発動準備完了。標的:転生者“冥”」
「“あの方”に選ばれし者にしては、ずいぶん甘い生活をしているようだな……ふふ」
黒衣の人物が、不気味な笑みを浮かべながら、冥の名を刻んだ札を握り潰す。
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その夜、冥の夢の中に現れたのは──
「久しぶりね、冥。私を、忘れてもいいのよ」
前世の恋人・エリスが、夢の中にだけ現れた。
彼女は、哀しげな微笑みを浮かべていた。
「でも、私の愛は……忘れられないようにしてあるから。ね?」
そして目覚める直前、彼女の唇がそっと、冥の額に触れた。
次回予告
第13話『夜の迷宮、再び。冥を狙う“白の魔眼”と、暴走寸前のフィーネ』




