闇の力に目覚めた俺の転生は、どう考えても仕様ミスだった
──世界が、俺を拒絶した。
目を閉じたその瞬間、俺は全てを理解した。孤独、絶望、痛み。そして――「力」が、俺に語りかけてきた。
『──契約するか? 我が力を受け入れよ』
そんな中二病的な声が、真っ暗な意識の中に響いたとき、俺の選択肢は一つしかなかった。
「当然だろ……俺は選ばれし存在だからな」
──そして目を開けたとき、そこはもう見慣れた日本の教室ではなかった。
石造りの神殿のような空間。天井から吊るされたクリスタルが、幽かに紫の光を放っている。俺の体は何かの魔法陣の中心に横たわっていた。周囲には、ローブを纏った男女が数人、呆然とこちらを見ていた。
「し、召喚……成功だと……?」
ああ、なるほど。これはもう完全に異世界召喚ってやつだな。
中学二年の頃、暇さえあれば妄想していたあの展開。クラスで浮いていた俺が、ただ一人異世界に呼ばれて、最強の力で無双し、世界の運命を握るやつ。
でも今の俺には、ただの妄想じゃない確信がある。
──あの時、契約したんだ。闇の神《イグ=ナクル》と。
「……ねえ、あなた、本当に“外の世界の勇者”なの?」
ローブの中でも特に目を引く、銀髪の美少女が一歩前に出てきた。透き通るような肌、宝石のような紅い瞳。年齢は16〜17くらいだろうか。胸元が大胆に開いたその服は、どう見ても貴族階級のものだ。
「……ああ、そう呼びたいなら好きに呼べばいいさ。だが覚えておけ、俺はただの勇者じゃない。“深淵より来たりし、終焉を告げる存在”だ」
一瞬の沈黙。
「ちょっと……意味わかんないけど、なんかカッコいい!」
銀髪少女の頬が赤らむ。周囲の女神官たちもざわめき出す。
──ふっ……これが俺の真骨頂。厨二病? 上等だ。
「名前は?」
「……九条・冥。だが、契約者の名は“黒翼の刻印者”とでも呼ぶがいい」
「め、冥くんね……!? なんだかすっごく……運命的な感じ!」
──こうして、俺の異世界無双が始まった。
バトル? もちろんある。でも、問題ない。俺にはイグ=ナクルの力、即ち**チートスキル《奈落の書》**がある。
恋愛? 任せろ。すでに一人、美少女が俺にときめいてる。
エロ? そのうち“事故”でいろいろ起きるだろう。
なにせ俺は――
この世界にバグとして現れた、最強の中二病勇者なんだからな。
次回『ハーレム第一号は高飛車令嬢!? 異世界ツンデレ攻略戦、開幕!』