祈りの鳥4
――雪?
俺が魂を引き連れて湖に向かって歩く時、雪は降らない。
初めて役割を果たした日から長い間、一度もだ。
それなのに、今、指先に雪と同じ冷たさのものの感触があって驚いた。
見ると、その場所に一つの魂が佇んでいる。ずっと俺にわずかに触れたまま離れない。何だ?
昨日運ばれてきた中にこんな魂がいただろうか。それは他の地獄へ行くものと同じ赤い色をしていた。 一瞬、まぎれ込んでしまったのかと思ったが、直ぐに違うと理解した。
――これは魂の色が変わったんだ。
俺が記憶に触れたせいだろうか? 俺があまりに距離を縮めて話しかけてしまったせいだろうか? それは数秒、赤く燃えていたがまた青に混じられ、元の紫色に戻った。俺の指を離れ、群れの中に帰っていく。
何だったんだ? 魂の色が変わるのを見たのは初めてだった。
あの魂とは昨日触れ合ったのを覚えている。あれは確か……
湖に着く頃には完全な夜だった。
月がきれいに浮かんでいて、一時だけでもほっとする。今日は左側が少し欠けているのが苦し気で優しい。月には全てを照らそうとするおせっかいさが無くて好きだ。負は負のままで許してくれそうな冷たさが心地よい。
他の地獄では太陽のいる時間に浄化を行うことが多いようだ。
俺のは正確には浄化ではないから、こんな月の夜が合っている。
魂の群れは俺の頭上を越え、湖の中央へ躍り出る。
濃淡様々な魂が、冷えた湖の上に溢れ出す様子を見て思う。
自分達がどれほど美しいかをこいつらに見せてやりたい。教えてやりたい。出来ることならここに来る前にそうしてやりたかった。




