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祈りの鳥1

祈りの鳥          ナイト


 雷の強い夜にシロキとカドが役割に降りてから、一週間が経つ。そろそろ数えきれない魂を鏡の空間にしまって、地獄へと上昇してくるだろう。そして今夜あたり魂の引き渡しが始まるんだ。

 こんな事があとだれだけ続くんだろう。湖の上をなぞるように悠々と登ってくる太陽を見ながら思う。

 俺の中で、夜は終わらない不安と、朝は少しの絶望を与えるだけで、何の違いもなく、胸に巣食うものが消えてくれることはない。

 いつも通り、ここからは白い水鳥の群れが見えている。今夜、あそこにもう一羽、祈りの鳥が降りるんだ。


 その夜、予想通り、地獄を振動させる大きな音が響き、鏡の門が地獄へ魂を乗せ戻ってきた。あれは人間の世界から戻ると必ず中央穴で一回転してから止まる。その時に十ある地獄をこする摩擦音が鳴り響く。

 魂を受け取りに来いという合図なのか? と一度シロキに聞いたことがある。

 あいつは意外そうな顔で「そんなつもりじゃないよ。一周させないと上手く固定できないんだ。鍵のようなものだよ。でも特徴的だろ? 音が鳴ると悪魔が扉の近くまで来てくれるから助かるよ」と笑顔で言った。

 その声とこの門が軋む音が似ていた。十の地獄を表して、違う音色を奏でながら廻り、もがいているような、喜んでいるような、どちらとも取れる速度で最後は一か所に落ち着き静まり返る。

 その後、小声で「僕は本当は静かな方が好きなんだけどね」とつぶやいていたが。

 さあ、そろそろ扉の前へ行かなくては。いくら気が重くても俺が受け取ってやらないと迷子になってしまう魂が待っている。


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