記憶1
記憶 エンド
俯いて話していた鏡の悪魔が顔を上げた。それが酷く寂し気に見えて俺は思わず声をかける。
「なあ、ナイト、こっちに来ないか」
みんなから少し離れて座っているナイトは固まったまま動こうとしない。こいつ、鏡の地獄でも、人間の世界でも一人でいた時間が長過ぎて、他人との接し方を忘れてしまっているかも知れない。
こちらから行くしかないか。
俺は立ち上がり自分からナイトの横に座った。
カドもついてくる。俺の作った焚火代わりの炎を受けたカドの瞳が、柔らかく光っているのを見て安心する。
「お前、本当に格好いいな」
鏡の悪魔が俺の顔をまじまじと見て言った。正直嫌われていなくてほっとした。
俺からすれば、シロキさんに良く似ているこいつの顔の方がうらやましいくらいだが。アドバンドも昔からシロキさんやカドと仲が良かったようだし、炎と鏡は呼応しやすのだろうか。
黙って話を聞いていたルキルくんが「裏切られるとわかっていたら――」と小声で言いかけて止めたのが気になった。
俺もナイトの話にわからないことは多かったが、誰が何を裏切ったと言うんだ? ナイトとカドが極楽を裏切ったということだろうか。ルキルくんも極楽は残酷だと言っていたのに。
この時、ルキルくんには極楽にとても複雑な感情があるのだと思った。カドとナイトは今の声に気がつかなったようだ。
「ナイト、俺の記憶は二回、消されていることになるよね?」
カドが俺の隣に座り直しながらのんびりした口調で聞いた。
「一年前のは意図的ではないと思うぞ。お前の魂をシロキの身体に移すだけならばまだしも、人間の魂やらトリプガイドやら、取り込むものが多すぎて、記憶の回路を一時的にそっちに使ったんじゃないか? でも鏡に融合する前の記憶がないのに関しては、シロキが消したからだ」




