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蜘蛛を助けた男1

蜘蛛を助けた男          シロキさん


 カドが新雪に描く足跡を追う。僕の目の届く場所にいて。

「あまり、遠くに行っちゃだめだよ」

 カドの背中に声をかけたその時、急に頭がくらくらして僕は雪の中に膝をついた。

 ――あれ? 

 規則的に何かに打ち付けられるような感覚が襲ってくる。僕はそのまま前のめりに倒れ込んだ。雪がとても冷たく柔らかい。

「おい、どうした」

 ナイトが駆け寄ってきて僕の肩を支えた。僕を仰向けにして肩に腕を入れ、不安気に覗き込む。

 こんなことをされたのは初めてだ。青空を背景にしたその顔を見て、ああ、そんな表情も出来るんだな、と薄い意識の中で嬉しくなった。

「ごめん、たぶん門に共鳴してる」

 今は僕にもそれしかわからない。

「シロキさん!」

 雪の上を滑る音がしたと思うと、カドが僕の横に座り込み手を強く握っていた。

 繰り返す痛みが、徐々に血管や神経をバラバラにされるような、独特なものに変わってきた。

 取り乱すかと思ったカドは、声も出さずに下を向き、握った手から自分の力を僕に送り始めた。凄いな、痛みが和らいでくる。

「門に戻ろう。シロキ、歩けるか?」

「カドのおかげで動けそうだ。早く戻らないと。あれ?」 

 立ち上がると、真っ白な雪に赤い小さな染みが出来ていて、自分の頬をつたっていた生ぬるいものが涙ではなく血だと知った。自分の中を流れていたとは思えない。とてもきれいだ。

 指で血を逆になぞると頭の横に浅い傷があった。本体の僕にまで傷がつくなんて、今頃門はどうなってしまってるんだ。

「無理するな」ナイトは小声でそう言うと、僕の手を取って走り出した。斜め後ろを振り返ると、カドが意外なほどしっかりした表情をしてついて来ていた。口を固く結んで、目は真っすぐ前を見ている。そして驚いたことに、門が近づくと、僕とナイトを追い越し前に出て、躊躇いもなく門を開いた。

僕はナイトに抱え込まれ、ほとんど崩れ落ちるように鏡の空間に入った。


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