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古い炎3

 シロキさんはカドに身体を渡すことになった出来事と、さっきみんながここから人間の世界に降りた時までのことを話してくれた。

「どうして鏡の世界はいつまでも残酷なんだろうな」

「それは僕の罪だから、僕がどうにかしなきゃ駄目なんだ」

 シロキさんは、カドが身体を失ってから少しずつ幼さが抜け、今では本当に神様らしくなった。未だにカドの事となると取り乱して感情的になるが、以前よりずっと強くなった。

「シロキさん、このまま身体も再成するんだろ。そうしたらまた前のように戻れるんじゃないか」

 シロキさんが溜息をついた。

「僕もそうしたかったんだけどね。カドは僕が魂の再成を終えたら、身体を返すって言うんだ。さっき、ここを出る前に僕にそう願っていったんだ。アドバンド、お前だから言うけど、あの子、一度だけ、自分の心の中を僕に映させてくれたことがあるんだ。僕はあの子の望むものは全て叶えるつもりだ」

 カドの心の中がどうなっていたのかはわからないし、それが願いを叶える事と、どう関係あるのかも知らないが、身体を返したいという気持ちは理解できる。

 シロキさんがそれを受け入れる気持ちも。

 神様は本体の魂さえ残っていれば自分自身の身体の再成はもちろん、新しく使いや門を作成することもできる。

 だが、実際それを実行した神様を、俺は知らない。土地にのまれて消えていった神様なら知っているが。

 そっくりな新しいものを手に入れたところで、記憶を共にした者の代わりにはならない。一緒にいた時間は繰り返すことはない。

 神様だって同じものは二度と取り返せない。カドはもう昔の自分の身体を必要としていないし、シロキさんの身体も自分のものではないとわかっている。

「あの身体は……カドはただ『自由な身体で出会いを経験して欲しい』そんな僕の願いを叶えてくれた、それだけなんだ」

 シロキさんが優しく揺れる声で言った。

「カドは、それでも嬉しかったと思うぞ。シロキさんのわがままを聞くだけで幸せだろ。ところで、この青いガラス玉だが……」

「そう、あの時、蜘蛛を助けた男が極楽から盗んだものだ」

 シロキさんが拍子抜けするほどあっさり認めた。

「少し見た目が変ったような気がするな。シロキさんが中にいるからか。さっきの話だと、人間の少年の魂の中にあったんだよな。その子は……」

「どういう経緯だろうね、ナイトに聞く前に幽霊に見つかってしまったから、聞きそびれてしまったよ」

 軽い口調で言うシロキさんの魂がはっきりと震えている。今、身体もここにあったならどんな表情をしているんだろう。ガラス玉から魂を取り出して包み込んでやりたい。

 少しの沈黙の後、シロキさんが涙声で言った。

「僕のことかわいそうだと思ってくれているの? ありがとう」

 シロキさんは憐れまれることを嫌がらない。だから俺も好きなだけかわいそうだと思わせてもらう。

「アドバンドはどうしてずっと僕らに優しいんだろうね。再成を始めてから僕は何度も何度も思い出していたんだ、あの日のこと」


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