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鏡の悪魔
鏡の悪魔 ナイト
ああ、シロキが再成中だから地獄送りの魂がたまっていたか。
それにしても月の神様、目立ち過ぎだろう。人間に騒がれるぞ。
あんなかわいらしい顔をして月の神様は恐ろしい。最初に会った夜もシロキが来なければ間違えて消されてしまっていたかも知れない。悪魔を完璧だなんて言いながら、自分が一番の脅威だと気がついているのか。
この浜辺で待っていれば、みんな俺を見つけてくれるだろうか。
お前は見つけてくれるよな、カド。
シロキの身体で海に落ちたようだから、初めて人間の世界に来た炎の悪魔より心配だ。あの身体は泳げない。
「迎えを送ってやるか」
俺は立ち上がり、ふくらはぎまで海水に浸る。
そこで鏡の舟を作り、水面に浮かべた。それは真っすぐ、光の柱が消えてゆく方向にむかって進む。月の神様とその使い、炎の悪魔、そしてカド。協力してもらう前に伝えなければ。カドが壊れた日のこと、鏡の地獄が壊れた日のこと。
もうすぐ月が夜に戻ってくる。月食を終えた月が反射する海を見ながら待っているよ。




