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鏡の門2

「エンド、何を考えてるの」

 腕の中のカドから声をかけられ、俺は我に返った。

「ちょっと情報が多くて混乱していた。なあ、それにしてもシロキさんとお前、同じ顔なのに中に入っている魂が違うだけで、印象もずいぶん変わるな」

 造形より感情や意志の方が印象を作ることを思い知らされる。

「エンド、シロキさんに会ったんだよな。どうだった? シロキさん」

「どうって、そうだな、ものすごく色っぽい神様だった」

「お前、シロキさんをいやらしい目で見るなよ、神様だぞ。罰が当たっても知らないぞ」

 カドが睨む。

「そんな意味じゃないよ。印象が揺らいでいて掴みどころがない。笑いそうで笑わない、泣きそうで泣かない、怒りそうで怒らない、そんな危うい瞬間を切り取ったような神様だな。色気ってそういうことだろ。やっぱりお前とは違うな」

「エンドにはそう映るのか。シロキさんは優柔不断でだらしなくて優し過ぎる神様だよ」

 カドの無邪気な表情を見て、俺は確かめたくなる。

「お前、鏡の悪魔のことも思い出したか? シロキさんの記憶だと、お前らの間でかなり辛いことがあったようだが」

「そこまではまだ……かなり昔の話だろ。ナイトのことは思いだせる。いつも俺に優しかった。でも……お前の言い方を借りれば色っぽいのはナイトだよ。いつもすごく傷ついてるみたいだった。何も言わないし、表情にも出さないけど。俺にはシロキさんと違った意味で大切だった。いや今でも大切だ」

 その悪魔に会ってみたいな。シロキさんの憧れでカドを甘やかす悪魔か、どんなやつだろう。

「そうか。それじゃ物足りないだろうが、しばらく俺で我慢してくれ。近い将来、シロキさんとその悪魔とまた再会できるまでの間だ」

「そんな、それまでの間とか言うなよ……いやだよ、ずっと一緒にいてよ」

 カドが本気で焦った顔をする。鏡の悪魔の気持ちがわかるな。自然と笑みがこぼれてしまう。

「お前が好きなだけいてやるよ。鏡の悪魔とも気が合いそうだ」


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