幽霊に追われる3
幽霊の後ろに立ったナイトが言った。
「お前も早くカドの中に入れ」
はっと息をのむ音が、鏡の門からもれた。
「カド、会いたかったよ」
ナイトが門に微笑むと同時に、幽霊の持つガジエアを奪おうと腕を上げる。
「待って!」
僕は叫んで、思い切り自分から幽霊に飛び込んだ。
幽霊にとっては好都合だろう、どうせ僕のことも解体すつもりなんだから。幽霊は躊躇することもなく僕の脇腹にガジエアを突き刺した。やっぱりこれ痛いな。実態に痛みを感じるのは久ぶりだ。
幽霊の背後で完全に「馬鹿か?」という顔でナイトが僕を見ている。カドが「シロキさん、何してんだよ!」と叫んでいる声も聞こえる。なんだ、二人に呆れられて、心配されて、ただのいつも僕じゃないか。
僕は幽霊に顔を近づけ言った。
「もっと深く刺せよ。僕はその方が都合がいい」
僕は自分からガジエアの刃に深く落ちて行き、身体の中で固定した。びくっと幽霊が動くのを感じた。
「これは指示されていないんだ」
僕は身体をひるがえし、幽霊を振り払った。
「ナイト、今度はゆっくり会おうね」
僕はナイトの顔をしっかり見て言った。せっかく会えたのに。またしばらく会えなくなってしまうから、再成の中で夢に見ていられるようにしっかりと記憶した。ナイトが僕に独り言みたいな小さな声で言った。
「シロキ、俺はまた――」
最後まで聞くのが怖くて、僕は言葉が終わる前に頷いて彼に背を向けた。
ガジエアのせいでふらつきながらカドの方へ進む。カドの方も僕に近づいてくる。自分で動けたのか、初めて知った。
「シロキさん、早く入って!」
半ばカドの方が僕を取り込むような状態で中に入る。
「カド、地獄の中央穴へ」
さあ、これから魂が破壊される前にやることがいくつもある。
力を温存しないと。
カドが地獄に向けて上昇すると同時に僕は鏡の床に倒れ込んだ。
外でナイトが何か言っている声が聞こえるが、急に轟いた冬の雷の音で途切れ途切れにしか届かない。
「カド、お前はやっぱり頼りになるな」
それだけは、はっきりと聞こえた。僕には絶対言わない言葉、僕はふっと笑う。
「お前も一緒に――」
カドが悲痛にナイトに叫ぶけど彼には聞こえただろうか?




