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鏡の使い7

 ただ赤く燃えるだけの罪人の魂と違い、その合間に金と銀の火の粉を散らしながら燃えているその魂を見て、シロキさんが助けたいと言った意味は瞬時に理解した。

 ただ、不思議なのは魂が二重になっていることだ。さらに、魂の中心部にある、青いガラス玉みたいなものは何だ? 無数の魂を見てきたがこんなのは初めてだ。これが追われている理由か。シロキさんはこれを守ろうと?

 じゃあシロキさんも早く俺の中に入れよ。直ぐに移動しよう。

 そう思って視界を鏡の外に戻した時、また俺は信じられないものを見た。

 シロキさんが幽霊と対峙している。そして三体の幽霊のうち一体の手に神様を殺す刃が握られていた。

 人間の世界に何本ガジエアがあるんだ。そしてなんで幽霊が持っている? 月の神様を襲ったガジエアは悪魔が持っていたってシロキさんが言っていた。じゃあ、幽霊と悪魔が手を組んでいるのか。そんな訳が……混乱する俺は次のシロキさんの行動に更に衝撃を受けた。

 シロキさんが自分から幽霊の方へ向かって行ったのだ。

 ――何を考えてるんだ。

 刺されどころが悪ければ月の神様の使いのような傷跡では済まない。深く差し込まれて、成分が血液に乗ったりしたら、神様の魂ごと破壊されてしまう。魂をを失うという事は、神様は再成できずに消えてしまうということだ。

「シロキさん、何やってんだよ! 早く俺の中に入れよ!」

 叫んだ時、俺はシロキさんの脇腹にガジエアが深く入り込んでいるのを見た。

 やだやだやだやだ。

 シロキさんがガジエアを身体に刺したまま、幽霊を振り払った。そしてガジエアごと俺の方に向き直り走りだす。

 意図はわかった。自分から刺さりに行き、身体から抜けないように神様の力で固定してガジエアを奪ったのだろうが、だめだ、消えてしまう。俺は門が壊れるほど震えていた。

 シロキさんが白い着物を赤い血で染めながら走ってくる。不謹慎にも血の気のない顔がきれいだと思った。

 消えちゃだめだ。ねえ、早く、早く俺のところに来て。

 俺は自分の意志でシロキさんの方へ移動し、シロキさんを回収した。 シロキさん、早く場所を指示して。門を移動させよう。俺の中に倒れ込んだシロキさんに声をかけた時だ。

「カド、お前自分の意志だけで門を動かせるのか。頼りになるな」

 外から声がした。

 黒い着物の悪魔が俺を見ていた。シロキさんに似たきれいな顔、でもシロキさんよりずっと凍えた目。

「本当、どうしてなんだよ!」

 俺は移動と同時に叫んだ。遠い昔に地獄から消えた、鏡の悪魔に向かって。


 俺はシロキさんとガジエアと少年の魂を乗せて、地獄の中央穴に移動した。

 シロキさんがいつの間にか、ガジエアを身体から抜き取っていたが、鏡の床に血は増えていない。

「シロキさん、良かった。身体、修復できそうだね」

 シロキさんが乾いた声で答えた。

「そうだな、身体は修復させるよ。でも魂は治しきれなさそうだ。中央穴についたら僕は身体を置いて魂だけで極楽に行く」

「身体を置いて?」

「ああ、僕の身体をお前にあげる。好きに使えばいいよ」

 シロキさんが優しく俺の床を撫でながら言った。

 ……シロキさんの身体を?

 もしかして、俺に身体をよこすために自分からガジエアに刺さりに行ったのか? 身体が不要な状況にでもならなきゃ俺が受け取らないから?

 魂の修復の方が優先なのに、身体を先に治したのも俺のせい?

「いや、だめだよ。俺は中央穴で待つから、シロキさんは身体ごと極楽に行って魂を再成して戻ってきて」

「魂の再成には少なくとも一年以上かかる。どうせその間、身体を使うこともない。もったいないだろ?

 それに、これは僕の願いだから。叶えさせて」

「シロキさんは本当にわがままだな」

 俺はシロキさんの身体の周りを液状の鏡で包んだ。

「お前は冷たくて気持ちいいな」

「シロキさんは温かくて気持ちいいよ」

「あとね、お願いが三つある」

「お願い、結構多いな。でも何でもいい、俺に出来ることでも、出来ないことでも」

「まず、あの子の魂をお前に持っていて欲しい」

「あの人間の? この空間に入れて置けばいいの?」

「いや、お前の魂であの子の魂を包んで隠し持っていて欲しい。二つ目は、お前が僕の身体で目覚めたら、炎の地獄に行くこと。最後に月の神様を探して。それで全部だよ」

 聞きたいことがいっぱいあった。でも時間のないシロキさんにそれをぶつけることも出来ず、俺はただようやく泣かずに言った。

「わかったよ、約束する」

 俺の言葉を聞くとシロキさんは満足そうに頷き、仰向けのまま手に持ったガジエアで鏡の床を裂いた。


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