表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/334

鏡の使い2

 新しい光が俺に反射し、鳥たちが騒ぎ出す頃、やっとシロキさんが休息を終えた。

 白い着物も髪も乱れ散らかしながらシロキさんが伸びをして、俺から出ようとした。

「シロキさん、少し整えてよ。月の神様に幻滅されるよ」

 シロキさんが乱れた姿のまま笑う。

「そうだね、お兄さんらしくしていないと」

 どんなに乱れている時も汚れている時も、シロキさんはいつも清らかな空気を纏っているから全然やな感じはしない。いや、むしろずっと映していたいくらい素敵だ。

 そんな事を言ったらずぼらなシロキさんは喜んで、汚いままでいるに決まっているから、絶対伝えないが。万が一、人間にでも見られたら神様の威厳がない。

 俺の身体、鏡の立方体の一部が溶けてシロキさんが外に出る。

 ちゃんとしていれば誰が見てもすごく綺麗な神様だ。朝が身体中で発光しているようなシロキさんを映しながら思う。

 それからしばらく、シロキさんは地面に落ちた深い赤や黄色の葉を拾ってパタパタ顔の前で動かしてみたり、リスを追ってみたりしていた。

 あまりのわざとらしさに俺の方が先に痺れを切らした。

「シロキさん、月の神様の所に行きたいんでしょ。行ってきなよ」

 シロキさんはびくっとして俺を見上げた。

「そうだけど、いいの?」

 神様本体が使いの顔色を窺いすぎじゃないだろうか。

「いや、むしろ俺の方が気になって仕方ないから、行ってよ」

 シロキさんは俺を独りにすることを酷く嫌がる。俺は独りでも平気なのにシロキさんが怯えると共鳴してしまって俺も怖くなる。

 俺にはシロキさんの感情がわかる。昨日の夜だってシロキさんがいくら平静を装っても、帰ってくる前から衝撃を感じていた。

 シロキさんが俺に向かい両掌を当てて言った。

「うん、実は月の神様に遊びに行くって約束をしちゃって。いつ言いだそうかと思ってたんだ。お前に隠し事はできないね。でも『役割』の時間までには戻ってくる。昨日みたく遅くならない。明るいうちに戻るよ」

「月の神様と約束したのか。神様なんだから約束は守ってよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ