三つ目の血6
一気に話終えて少し胸が軽くなった。
「来て」
シロキが優しい匂いのする胸の中に俺を包みこんだ。
「僕が代わってあげたかった」
そんなことを言いながら泣き出す手前の表情で俺を見る。
俺はシロキの胸から顔を離して言った。こんなに至近距離でこいつを見るのは久しぶりだ。全部、打ち明けてしまいたい。
「たった一つの救いがあの鳥だったんだ。俺が泣き疲れていた朝、あの白い鳥が飛んで来て湖に降りた。見てると不思議と気持ちが落ち着いた。今もあれを見て消えた魂のことを一つずつ思い出すんだ。あの鳥お前に良く似てるだろ?」
シロキが優しく笑い俺の背中を撫でる。鳥の羽に包まれているようだ。
「千切れた魂は、湖の上空に開いた穴に吸い込まれいくんだ。極楽の入口は二つ、お前の門と鏡の地獄の空だ。と言っても俺のは自分の意志で開け閉めはできないが。魂は回収されて――」
「待って、知ってる。記憶があるんだ」
深く息を吸って、シロキが思い切ったように言った。
「培養液の栄養になるんだろ」
――その通りだ。それは培養液のトリプガイドが枯渇しないように言葉通り、栄養分となり、沈殿した残渣物は空に廃棄される。
俺はただ頷く。
「あいつが、そんな犠牲を強いてまで作りたい世界とはなんだろうね」
シロキの言葉に最後に見た作成者の顔を思い浮かべるが、何もわからない。
無表情で俺を見たあいつの目。何を考えていたんだろう。
「この間、あいつを見たんだ。俺が魂を送る前に自分から奪いに来た。あんなことは初めてだった」
「その時、いつも通り魂は破壊し終わっていたの?」
「え? どうして?」
「これは大事なことだよ。もし魂が半端な状態で極楽に奪われたのなら、それは今、栄養にすらなれないでいると思う」
「――まだ、破壊は完了していなかった。途中で作成者が空に絡め取って行ったから」
「だとしたら、魂がないのに苦しいという感覚だけが残った、幽霊になってしまったかもね」
「そんな……」
「ねえ、僕は二度と鏡の地獄に魂を送らない」
シロキがきっぱりと言ったその時だった。
その時、カドが融合を始めた時のような強烈な振動が起こった。祈りの鳥が羽を広げ騒ぎ出し、湖が大きく波打っている。
俺たちは言葉を交わすのももどかしく、同時に立ち上がると、鏡の空間の方へ走り出していた。




