表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/334

三つ目の血5

 こいつはまだ俺がここで浄化をしていると思っている。自分を殺した者の魂も、俺によってまた人間の世界に還されていると信じている。

「俺は、魂を破壊して極楽に送っている」

「そんな――ことをさせられていたの」

 俺を真っすぐ見つめたままシロキが言った。正直、取り乱すかと思っていたので、冷静な口調が意外だった。やっぱりこいつがおかしくなるのはカドのことだけだ。

「それしか方法がないんだ。お前に残酷な話を聞かせたくなくて、汚わらしいと思われたくなくて、ずっと言い出せなかった」

「僕が弱いから、受け止められないと思ったんだね。今までずっと一人で抱えていたんだね。僕はずっと破壊されるしか道のない魂をお前に届け続けていたんだ。ねえ、お前にお願いがある」

 そう言って俺の手を握った。

「僕を許さないで」

 シロキの常に揺らいでいる声がこの時は真っすぐに響いた。もしかしたらこっちが本来の声なのか。

「――なんだ、そのお願い。許さないも何も……お前のせいじゃないだろ」

 シロキが首を振り真剣な表情で言う。 

「違うよ。今までお前を苦しめたことをちゃんと恨んでもらいたいんだ。僕はお前が思っているほど弱くはないから、憎しみだって、汚れだってちゃんと受け止められる。だから安心して僕を試して。憎んで。それでも僕は、いつまでも、僕が消える瞬間まで、ずっとお前を好きでいるよ」

 俺の方が真っすぐな視線に耐えられなくなって目を伏せた。

「……そう言われたって、憎めるわけないだろ。お前は俺の神様なんだから。無理言って困らせるなよ」

「……ごめん。それでも僕はいつでも罰を受ける覚悟はできているからね。これまで消されていった自分を殺した者の数、救えなかった魂の分まで、ひとつ残らず僕が罰を受ける」 

「これだから神様はやりにくいな」

 俺は手元の真っ白な雪を凝視した。シロキと目が合わせられず、しばらく視線で溶かしてしまいそうなくらいそこだけを見つめていた。

 同じく沈黙して動かないシロキにやっとの思いで次の言葉を投げかける。

「――あの白い鳥なんだが、あれは魂たちを破壊する儀式を行う度に、一羽ずつ現れるんだ。初めてお前から魂を受け取った時、実は俺も浄化をするものと思っていた。他の地獄でやっているように。これから時間をかけて、この悲しい魂たちを美しく磨いて人間の世界に還してやるんだ、と興奮していた。俺一人でこんなたくさんの魂が浄化出来るかと少し不安にもなった。そんな心配はいらなかったのにな。どうせ一度で全部バラバラになって極楽に呑みこまれて行くんだから。毎日きれいになっていく魂が見られるんだ、と漠然と期待していたから、全て消えてしまうのを見た時には本当に悲しかった。救ってやりたいのにどんどん遠ざかってしまうんだ。最初の頃は消えた魂を求めて一晩中空を探した。欠片でも残っていないかと思って。自分のやり方が間違えているんじゃないかと何度も考えた。でもどうしようもできなかったんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ