第E7話 『かくれんぼ』
霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない? 番外編
著者:ピラフドリア
第E7話
『かくれんぼ』
ひとりかくれんぼ。それは人形を使った降霊術であり、コックリさんに並ぶ都市伝説の一つだ。
「本当にやるのか?」
新田が心配そうに萩村に尋ねる。
「最近配信者の中で流行ってるらしいんだよ。なら、やるしかないだろ」
萩村はアパートの至る所にカメラを設置する。
「でも、家族はどうするんだよ」
「両親は出張。爺ちゃんは温泉旅行だよ。ほら、そこにそのカメラ置いて」
萩村に言われるがまま、新田はカメラを設置する。
「幽霊を撮ったら、石上に送りつけてやる。あいつも悔しがってやるはずだぜ」
ニヤリと成功した時のことを考えて笑う萩村。新田はそんな萩村の顔を見ながら、こいつは幽霊よりも危険な悪魔だと、萩村のことを思う。
準備を終えた萩村は新田に子供用のおもちゃの無線機を渡した。
「通信が通じるのは20メートルくらいだけど、長持ちくる。もしもの時はそれで連絡する」
「もしもって……度胸あるなぁ」
新田は萩村を説得しようとしても、意味がないとわかり、諦めてアパートから出た。
萩村は米と爪を入れた熊の人形を箱から出して、人形に話しかける。
「最初の鬼はブーくんだから。最初の鬼はブーくんだから。最初の鬼はブーくんだから!」
そして人形に伝えた後、浴室に行き、水の張ったバケツの中に人形を沈めた。
人形をバケツの中に放置して、萩村は浴室から出ると、リビングの照明を消し、テレビを付けて砂嵐にした。
そして目を瞑ると数を数える。
「1、2、3…………10」
10を数え終えると、テーブルに置いておいた包丁を手に取って浴室へ向かう。
そしてバケツの前に立つと、
「ブーくんみーつけた」
と言って包丁をバケツの中で沈んでいる人形に突き刺した。
人形から米が漏れて、バケツの中に数粒溢れる。
そして人形に包丁を刺したまま、
「次はブーくんが鬼だから。次はブーくんが鬼。次はブーくんが鬼!!」
そう言ったあと、萩村は浴槽を出て、塩水を置いておいた押入れに隠れた。
萩村が隠れて数分。何も起こらず、萩村は暇でカメラに向かって話しかけた。
「だいたい10分くらい経ったかな。まだ何も起きません。何かこちらからアクションを起こしてみようと思います」
そうすると、萩村は手を叩き、
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ〜」
と愉快に歌い出した。場違いな歌なのは分かっていたが、暇だから仕方がない。
しかし、歌い始めて一巡をした時、リビングから物音がした。
ガタリ……ッ。と小物の何かが高いところから落ちた。
それを聞き、萩村は手を鳴らすのをやめて真剣にカメラに話しかける。
「今物音がしました。少し覗いてみますね」
そう言って押入れを少し開けて、外の様子を覗き込む。
リビングはいつも通りの部屋だ。だが、棚の上に置いてあったはずの写真立てが落ちていた。
「写真立てが落ちただけだったようです」
萩村はカメラにも外の様子を映し撮る。カメラのメンズ越しにリビングを覗くと、黒いモヤが見えた気がした。
しかし、気のせいだったようですぐにそれは消え、肉眼で確認することはできなかった。
それから一時間。足音が聞こえたりはしたが、それ以上のことは起こらず。萩村はカメラに映らないようにあくびをして、そろそろ終わらせようと考えていた。
「もうすぐ一時間二十分くらい経ちます。二時間以上はやってはいけないらしいので、この辺りでやめようと思います」
ひとりかくれんぼを辞めるために、塩水を手に取り口元に近づける。
「どぉ〜こぉぉぉ、どぉぉぉごおぉぉ!?」
低い声が廊下から聞こえてくる。ゆっくりと近づく足音。
押入れの隙間からリビングを覗くと、廊下から浴室にいるはずの人形がトコトコと歩いてきた。
しかし、足音は人形のものとは思えず、重くどっしりとした足音が鳴っている。
不気味に思う萩村は早くゲームをやめないといけないと判断し、塩水を含もうとする。
だが、萩村は外の光景を見てそれができずにやめてしまった。
人形は棚を開けると中からカッターを取り出す。そしてカッターを片手に窓にあるカーテンを刺した。
「ぢぃがぁぁうぅ」
カーテンの裏に隠れていると思っていたのか。カーテンを刺した人形は残念そうにカッターをカーテンから抜く。
その様子を見ていた萩村はすぐに分かった。あの人形は本気でやりにきていると。
しかし、ゲームをやめるためには人形に塩水を吹きかけなければならない。
だが、人形のところに行くまでに……。
萩村がどうしようもなく困っていると、玄関の方から鍵が開く音がして扉が開く。
「おい、萩村! 大丈夫か!!」
それは外で待っているはずの新田の声。なぜ入ってきたのか、だが、そんな疑問よりも、
「新田、逃げろ!!」
「え?」
新田は後ろから押された感覚がして、部屋に押し込まれる。そして玄関の扉が閉まった。
「なんなんだよぉ〜。おーい、萩村〜。はっぎむっらぁ〜」
さっきの声が聞こえていなかったのか。新田はリビングへ近づいてくる。
このままでは新田が人形にやられる。
勇気を出して萩村は押入れから飛び出す。それは新田がリビングに到着するのと同時で、二人は顔を合わせた。
「いるなら返事しろよ」
「そうじゃなくて、今人形が!!」
萩村は人形のいたところを見る。しかし、そこには人形はおらず、カッターと穴の空いたカーテンだけが残っていた。
「人形? 何があったんだよ」
「人形に襲われたんだ!! そこに落ちてるカッターを使って!!」
「カッター? まぁ、落ちてるが……自分で置いたんじゃないのか? 俺をビビらせるために」
「そんなわけないだろ!」
「だってお前、無線で痛い痛い、助けてーとか、ふざけて言ってただろ。だから俺来たんだぞ」
新田が揶揄うように何があったのかを言う。それを聞いた萩村の額を汗が流れた。
「俺、そんなこと言ってない……」
「冗談言うなよ、なかなかの演技だったぜ。んっで、例の人形はどこなんだよ」
萩村と新田は人形を探す。すると、人形は元にあった浴室に戻っていた。
萩村は早速ひとりかくれんぼを終わらせる。
口に塩水を含み、まずコップの塩水を人形にかけて、次に口に含んだ塩水を人形に吹きかけた。
「ぶぅぅっっ!!」
「きったな!! 俺にも唾かかっただろ」
「聖水だと思って我慢しろ」
部屋の電気をつけて、萩村は片付けを始めた。棚から落ちた写真立てやカッターを元の場所に戻す。
萩村が片付けをしている中、新田は人形を見ていてあることに疑問を持った。
「なぁ、この人形ってこんな色だったっけ。なんか前の奴より新しくね?」
「気のせいだろ。それ明日燃えるゴミに出すから渡せ」
萩村は新田から人形を奪い取る。しかし、人形はどこか軽く、中には綿が入っているような気がした。
しかし、萩村は思い込みだと思い、気にしないことにするのであった。
2日後。萩村はいつも通り学校へ向かう。通学路の長い坂、そこで不思議な話を聞いた。
「ねぇ、ママ〜、あたしの人形、重た〜い」
「あ、あんた、人形さん汚れちゃってるじゃない。も〜、家帰ったら洗ってあげなきゃね」
その人形は少女に抱かれながら、何かを探しているような眼をしていた。




