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第E5話 『ブルーの苦悩』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない? 番外編




著者:ピラフドリア




第E5話

『ブルーの苦悩』





 ヒーロー。それは怪人と戦い、世界の平和を守る英雄。




「いらっしゃい……」




 青いヒーロースーツを見に纏ったヒーローが、喫茶店に入る。

 客が入ると店長の男性とバイトの少女が出迎えた。




「ブルーさん、お久しぶりですね」




「アンちゃん、久しぶり」




 ブルーは奥のカウンター席に座ると、テーブルに置かれたメニュー表を確認する。




「あれ、カレーを追加したのか?」




 ブルーが聞くと店長は頷く。




「新メニューです。色々ゴタゴタはありましたが、ようやく完成しました」




「そうかー、しかし、今日は食べてきちゃったからな。今度頂くよ」




 ブルーは新メニューに興味を持ちながらも、いつも通りのコーヒーを注文する。

 店長がコーヒーを作っている間、テーブルを拭いているアンと雑談をする。




「ブルーさん。最近お仲間とも関係はどうですか?」




「それがなぁ、あいつらいつもリーダー争いだ。赤に近いものがリーダーだって、ずっと争ってんだぜ。疲れるよ……」




「前も言ってましたよね……。大変ですね」




「しかもな、アンちゃん、聞いてくれよ!」




 ブルーはストレスが溜まっていたのか、それを発散するように愚痴り始める。




「それにレッドは夜な夜な飲み会に行くし、オレンジは両親の許可がないと何もしない、小豆に至ってはアジトで小豆洗ってるし!!」




「大変そうですね……。しかし、グリーンさんがいるんですよね、彼はまともなんじゃ……?」




「あいつが一番やばいよ……」




 ブルーは溜息を吐く。




「グリーンはレッドに誘われてヒーローになったが、元々怪人だぞ。めっちゃ良い奴だよ、一番まともだよ! ……でも仮面の下が、腐った死体なんだよ!」




「そういえば、グリーンさんはゾンビって言ってましたね」




「アジトに戻って仮面外す時めっちゃ怖いんだよ!! 目玉飛び出してるんだよ! それに臭いし!! しかも、飲み物飲むと身体の穴から漏れてくるし!!」




「それは……大変ですね」




 ブルーの話を聞いたアンも、その説明だけでお腹いっぱいであり、冷めた笑顔になる。

 二人が話しているうちに、コーヒーが完成したようで店長がブルーの前にコーヒーを置いた。




「はい、お待たせ」




 ブルーはコーヒーを受け取ると、まずは匂いを嗅ぎ、それから一口味あって飲んだ。




「相変わらず美味しいな。これだけ美味いなら宣伝次第でもっと客が来るんじゃないか?」




 ブルーの問いかけに店長は首を振る。




「俺は細々とやる方があってますよ。派手なのは苦手です」




「派手は苦手か……」




 店長の言葉を聞き、ブルーはふとある人物を思い出す。




「そういえば、またこの辺で出たみたいだな。派手な奴が」




「っと、いうと?」




「怪盗さ……。店長もニュースで見たことくらいあるだろ?」




 店長は頷く。




「知ってますよ。赤いマントを羽織った大怪盗ですよね」




 怪盗を説明する店長の声はいつもよりもハキハキしていて楽しそうに聞こえた。

 ブルーはそんなことは気にせずに話を続ける。




「そうそう、その怪盗だ。噂だとフシギ伯爵とも戦ったらしい」




「へぇ〜。ブルーさんは怪盗を捕まえないんですか?」




 店長の問いかけにブルーは首を振った。




「俺達はヒーローだ。戦うのはヴィラン、怪人だけだからな。泥棒の相手は警察に任せる。ま、どっかの国ではなんでも屋みたいなヒーローもいるがな」




「そうか、それは残念です。ブルーさんと怪盗の戦いを見てみたかったんですけどね」




 店長は少し残念そうに語る。それを聞いたブルーはコーヒーの飲んでから、




「ま、活動中に出会えば戦うぜ。その時は中継とかで見ててくれよ!」




 親指を立てて自信満々のブルー。そんなブルーを見て店長は嬉しそうな顔で微笑む。




「それは楽しみにしておくよ」




 しばらく優雅な時が流れる。カップの外の色が薄く見えていた頃、ブルーがふとアンに尋ねた。




「アンちゃんって、いつ店長さんと出会ったんだ? この人良い人だけど、趣味とかないだろ」




「私と店長さんの出会いですか。そうですね、ロザントスでモカと…………」




 アンが語り出すと、横から店長がアンの頭を軽く叩く。




「痛いです。店長さん……」




「お前な……。下手に喋るな……」




「大丈夫ですよ。私はダッチさんと違ってそういうところは計算して、情報を出すんです。こういうのは真実と虚偽を織り交ぜることが大事なんです」




「確かにそれは大事だがな……。真実のインパクトが強すぎだ」




 店長が呆れた様子でブルーの方を見ると、ブルーはテーブルに乗り出して聞いてきた。




「アンちゃん、あのロザントス出身なのか!!」




「はい」




 ブルーはアンの回答を聞いて倒れるように背もたれに背中をつける。




「マジか……。あんなところにいたのか……」




「ブルーさんはロザントスに行ったことは?」




 アンが聞くとブルーは疲れ切った様子で否定する。




「あんなところに行きたくもない。ヒーローすら寄せ付けない悪の巣窟。警察は賄賂で買収されて、毎日強盗恐喝殺人、犯罪のオンパレードの街だ。絶対行きたくない」




「そういえば、ロザントスでヒーローは見たことないですね」




「ヒーローを見かけたら、吊し上げで見せしめにされる。恐ろしい街だ……」




 ヒーローであるブルーが怯えている。それだけヒーロー達の間では恐れられている街でもあるということだ。




「っで、なんで出会ったんだ?」




「色々ありまして」




「ま、ロザントスじゃ言えない事情もありそうだ……」




 ブルーは最後の一口のコーヒーを飲み干すと、財布から小銭を取り出して、ちょうどぴったりのお金をテーブルに置いた。




「じゃ、また来るよ」












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