第66話 『秋のパーティ』
霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?
著者:ピラフドリア
第66話
『秋のパーティ』
満開な紅葉の下で、お肉を焼いて乾杯をする。花より団子とはこのことを言うのだろう、紅葉に興味を示さず、肉に酒を楽しむ。
「霊宮寺さ〜ん、ここのお肉も焼けますよ〜」
「はいはーい」
私は一面真っ赤な景色の中、バーベキューをしていた。
「コトミちゃん。このお肉美味しいね」
「そうですよね! それ、アゴリンさんが選んでくれたんですよ!!」
「アゴリンさん、ナイスよ!!」
私はお肉を焼いているアゴリンさんに親指を立てる。すると、アゴリンさんもドヤ顔で返してくれた。
少し離れたところでは、リエと京子ちゃんが談笑していたり、マッチョの二人とスキンヘッドが筋トレしている。
「レイさん、見てください! 綺麗な落ち葉ですよ!!」
「あ〜、綺麗ね。あれ? 私、あんたと一緒にタカヒロさんいるものだと思ってたんだけど、どこ行ったの?」
「師匠ですか、師匠は…………あ!! いました!!」
楓ちゃんが黒猫を発見する。黒猫は紅葉を見て楽しんでいる魔法少女の背後に座り、怪しい位置から見上げている。まるでスカートの中を…………。
「師匠ーーー!!!!」
なぜ、私たちがこうした大人数で紅葉を見にやって来たのか。理由は簡単だ。コトミちゃんに呼ばれたからだ。
普段なら組のメンバーで行く予定だったが、コトミちゃん、京子ちゃん、そしてスキンヘッドの三人しか集まらず、急遽人を呼ぶことにした。
そして集まったのがこのメンバーである。
まず私、リエ、タカヒロ&ミーちゃん、楓ちゃんのメンバー。
次にスキンヘッドの友人であるマッチョの先輩と後輩。さらにどこから情報を知り得て来たのか、私を付け狙う黒淵さん……。
京子ちゃんのお料理友達でアゴリンさん。そのアゴリンさんの彼氏のスコーピオン。
ゴーゴーレンジャーは忙しくて参加できず、スコーピオン繋がりで、魔法少女の三人、詠美ちゃん、セナちゃん、美津子ちゃん。
このメンバーで紅葉を見に来ることになった。
私はお肉を頬張りながら、みんなが何をしているのか観察する。マッチョの二人とスキンヘッドは筋肉の自慢をしあっているから、興味ないとして……。
椅子に座った京子ちゃんの膝で、ちょこんと座っているリエ。あの二人が何を話しているのか気になる。
最近、初めて知ったことなのだが、京子ちゃんは日本の西の方ではかなり名のある霊能力者だったらしい。
楓ちゃんもそれを知ってから、スキンヘッドから知らされるまではしなかったようで、この前そんな話をした。その時に忍者が探していた強い力の持ち主も、京子ちゃんのことじゃないかという疑惑も出たが、終わったことだし確認はしていない。
そんな力の持ち主の京子ちゃんと、幽霊であるリエ。二人の話が気になった私は、そっと二人の背後に回り込む。
「私はパン派ですね。京子さんは何派ですか?」
「私はご飯はだ。やはり米が一番だろ!! 納豆と一緒に食べると美味いぞ」
「う〜ん、分からなくはないですけど、やっぱりパンですね〜」
この二人はなんの話をしてるんだ!?
なんで幽霊と実力のある霊能力者がパンかご飯かの話をしてるんだよ!!
まぁ、今はそんな話が出来るほど、平和なのかもしれない。
私は会話に入る気にもなれず、そっと二人から離れる。テーブルへ戻っていると、お肉を焼いていたアゴリンさんが新しく焼けたお肉を紙皿に乗せて、私に手渡す。
「すみません、これあそこにいる詠美ちゃん達に渡して来てください」
調理で忙しいのか。そんなことを頼まれる。まぁ、今はお腹もいっぱいで暇なため、私は紙皿を受け取ると、三人の魔法少女の元へ向かった。
魔法少女達は木下で、妖精のような小さい幽霊と談笑している。
「三人とも〜、お肉持って来たよ〜」
「霊宮寺さん、ありがとうございます!!」
いち早く詠美ちゃんが気づいて、笑顔で駆け寄ってくる。しかし、地面から飛び出している木の根に足を引っ掛けて、壮大に転ぶ。
「大丈夫!?」
思いっきり転んだ詠美ちゃんに駆け寄って、私は手を掴んで起き上がらせる。怪我はないようでよかった。
「詠美、何してるんですわ」
「急ぎすぎやで」
「えへへへ〜」
詠美ちゃんが転ぶのは、いつものことなのか、三人とも慣れた様子だ。
詠美ちゃんは軽く土を払うと、紙皿を受け取った。
「美味しそうやな〜」
「食べていいんですか!!」
「そのために持って来たのよ」
私がそう言うと、詠美ちゃんは二人に箸を渡して早速食べ始める。
しかし、私や他の二人は詠美ちゃんのワンピースに残った土が気になって、手で払って綺麗にする。
三人で詠美ちゃんの世話をしている気分だ。
「もうまだ土が残ってますわよ」
「もっと詠美はこういうところ、しっかりしないとダメやで」
詠美ちゃんの服を綺麗にしてから、やっと二人もお肉を食べ始める。ここに来る途中もそうだが、この詠美ちゃんの面倒を二人が見ている雰囲気がある。
一番子供っぽいっていうか、純粋っていうか。
それに比べると、一番大人っぽいのが、美津子ちゃんだ。変身したら……ゴリラだが。しっかり者で周りが見えている。お肉を食べる時も、上品に口まで運んで食べている。
セナちゃんは破天荒で元気いっぱいだが、詠美ちゃんと比べるとしっかりしている。たまに喋り出すと、「やでやで」言いながらツッコミしてくるのがウザいが、そういうキャラ付けをしているのだろう……。
私はお肉の感想を聞いて、アゴリンさんに報告しておこうと、三人の顔を見る。すると、三人ともリスのように口に大量のお肉を含んでいた。
三人とも結局子供だ……。
今は喋れなそうだと判断し、私が戻ろうとした時。詠美ちゃんは噛まずに飲み込んだのか、
「霊宮寺さんは魔法少女に興味ないんですか?」
と、喋りかけて来た。噛めよっと言いたかったが、その前に……。
「興味があるとかじゃなくて…………。少女って何歳から何歳までだと思う……」
私はそのまま思っていたことを三人に伝える。
詠美ちゃんは一呼吸おいた後、セナちゃん、美津子ちゃんと交互に顔を合わせて、頷き合う。そして、
「「「年齢は関係ないと」」」
「嫌よ!! それにちょっと考えたでしょ!!」
明らかに一瞬止まっていた。それに対して私が突っかかっていると、詠美ちゃんが首を傾げる。そして純粋な顔で聞いて来た。
「霊宮寺さんっていくつなんですか?」
「……………」
私は答えずにその場で立ち尽くしていると、どこからやって来たのか。いつの間にか後ろで座っていた黒猫が、
「この前にコイツの免許証を見たんだが、その時に……ぶっ!?」
私は黒猫に掴みかかって口を閉ざす。
「何勝手に免許証見てるのよ」
「だってその辺に放置してあるから……。てか、年齢なんて気にするような歳じゃないだろ、まだそこまでは……」
私は黒猫を黙らせるために、上下に振ってシャッフルする。脳の震えた黒猫は、フラフラになり目を回して、静かになった。
「じゃあ、ごゆっくり〜!!」
私は黒猫を連れて、そのまま魔法少女達から離れて、テーブルの場所に戻った。
テーブルに戻ると、アゴリンさんがスコーピオンとイチャイチャしながら、お肉を焼いていた。
「どうでした? 美味しかったって?」
「あー、美味しかったって言ってましたよ〜」
感想を聞き忘れたが、まぁ、美味しそうに食べていたし、適当にそう答えておく。
私が椅子に座ると、隣に座っていたコトミちゃんが黒猫の異変に気づく。
「あれ? 猫ちゃんどうしたんですか?」
まだ目を回してクラクラしている黒猫を、コトミちゃんは抱き上げる。
「まぁ、ちょっと色々ありまして……」
「怪我はしてないけど。ちょっと休ませてあげましょうか」
事情を知らないコトミちゃんは、黒猫を膝の上で寝かせる。寝かされた辺りから黒猫は意識を取り戻した感じがあるが、放置しておこう。
なんだか若い子と膝で寝てる嬉しい思いと、人見知りの辛さで、葛藤している様子だし、面白いからこのまま任せる。
そんな黒猫よりも、私はあそこにいる二人が気になる。
「そういえば、いつの間にあの二人は付き合ったんだろう」
幽霊と霊能力者の会話も気になったから、向こうにひっそりと言ったが、アゴリンさんとスコーピオンの関係も、今日会ってからずっと気になっていた。
この二人が付き合っていたことを、今日初めて知ったのだ。
黒猫を撫でながら、コトミちゃんが知っている限りのことを口にする。
「確かお料理教室の帰りにまた会って、それから意気投合したとかって、そう聞きましたよ」
そういえば、あの二人は顔見知りではあった。しかし、その帰りで会って、仲良くなっていたとは……。
「なんで怪人と付き合ったんだろう〜」
「私にも分かりませんよ。両手ハサミですし……」
そりゃ〜、分からないよね〜。
イチャイチャしている二人を眺め、私はテーブルに置きっぱにしていた缶ビールを手にして、ぐびっと飲んだ。
そして空っぽになると、近くにあるビニールに捨てる。
「そういえば、あなたは新しい彼氏はつくらないの?」
私は缶を捨てると、コップにオレンジジュースを注いでいるコトミちゃんを目線を向ける。
コトミちゃんは一瞬動きを止めたが、ジュースを注ぎ終えると首につけているネックレスを握りしめた。
「そうですね……。まだいいかな…………。今は」
ネックレスを大切そうに抱きしめる顔は、未だに忘れられないという表情だ。
目を閉じて、昔をことを懐かしんでいる様子。
首なしライダーの件から、すでに数ヶ月。こうして彼のことをずっと想い続けている。首なしライダーは幸せ者だ……。
私はコトミちゃんの様子を見ていると、横から誰かが抱きついて来た。
「レイちゃーーーーん!!!!」
「っげ!? 黒淵さん!!」
「ち、が、う、でしょ!! モエちゃんでしょ!!」
抱きついて来たのは黒淵さん。黒淵さんは私を両手でがっしりと掴むと、頬に頬を擦り付けてくる。
「やめてーーー!!!!」
「良いじゃない!!」
私は必死に抵抗して、どうにか黒淵さんを振り払うのに成功する。そして今も尚、ネックレスを抱きしめているコトミちゃんを盾にして、黒淵さんから逃げた。
「どこに行くのよ〜、レイちゃ〜ん!!」
「来ないでーー!!!!」
「私、絶対にあなたのことを忘れないから……」




