第58話 『忍者屋敷にレッツゴー!!』
霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?
著者:ピラフドリア
第58話
『忍者屋敷にレッツゴー!!』
「あなたも着いてくる必要あったでござるか?」
「私はこの子の保護者よ。危ない場所に行くのに、放っておくわけいかないでしょ」
私、リエ、楓ちゃんの三人は、セイの案内で城戸というクノイチの潜伏している屋敷を目指していた。
「レイさん、ありがとうございます。僕のために……」
「良いのよ。というか、私としては来なかったあの猫が気に食わない」
「師匠ですか……」
黒猫は「楓なら一人で大丈夫だから、俺は寝てる」と言って事務所で留守番している。
確かに大丈夫だろうけど、心配くらいしてあげてほしい。
山を登ってしばらく経つと、Y字の分かれ道に辿り着いた。
「看板がありますよ」
リエが道の別れ際に置いてあるに近づき、内容を読み上げる。
「右は惨烈滝、左は虎落谷ですって」
看板を読み終えたリエは看板の上に座り込んで、私達がどっちに進むのか見守る。
「セイさん、どっちに行くんですか?」
楓ちゃんは別れ道で足を止めたセイに尋ねる。すると、セイは看板のすぐ横を通り、Yの字の真ん中を進み出した。
「そこ、道じゃないですよ」
「ここからは忍者の土地。見えるものだけが全てじゃない」
忍者は草むらの中をサクサクと進んでいく。草は腰の高さまで生い茂っており、虫も大量に居そうな場所だ。
「私やっぱ帰ろうかな……」
「レイさん、せっかくここまで来たんですから行きましょうよ!」
「いや、でも…………」
私が戸惑っていると、楓ちゃんが私の腕を掴んで引っ張って連れて行く。
「ちょ、楓ちゃん!!」
「早くいかないと置いていかれちゃいますよ!!」
結局、楓ちゃんに引っ張られて、草むらの中を進むことになった。事件は起こらなかったから良かったが……。
私は近くを飛んでいるリエを睨む。
「あんたは飛べるから良いよね」
「レイさんも飛べば良いんですよ」
「出来るか!!」
私とリエが話していると、戦闘を進んでいたセイが足を止める。
「ここは忍者の隠れ拠点の一つでござる。ここで装備を整える」
山の中に木材でできた小屋が現れる。
「装備?」
「その服装じゃ動きにくいでござろう。服を貸すでござる」
「これが忍者の服か〜。楓ちゃんも似合ってるよ」
「そうですか? ん〜、セイさん、師匠に見せたいのでこれ明日まで借りて良いですか?」
「なんでそうなる!!」
小屋にあった忍者の服を借りて、私と楓ちゃんは忍者になりきっていた。
「良いですね、二人とも……。私も着たかったです」
私たちの衣装をリエが寂しそうに見つめてくる。
幽霊であるリエに服を貸してもらうわけにもいかないし、リエが着れるような服があるわけでもない。
「二人とも着替えたでござ…………」
着替えを終えた私達を見てセイは言葉を止めた。私と楓ちゃんの身体を撫で回すように見つめ、呼吸を荒げる。
「これは……妖艶な見た目でござる」
「あんた、動きやすいとかそんな理由言いながら、目的はこれだったんじゃ……」
「そ、そんなことはないでござる……よ」
この忍者、変態だ……。
着替えも終えて、忍者装備の一式も貰った私達は再び、クノイチの潜む屋敷を目指して歩み始める。
山を越え谷を超え、そしてついに辿り着いた。
「ここがクノイチの隠れてる屋敷……」
「そうでござる。ここが葉隠屋敷」
木造で出来た和式の屋敷。リエの取り憑いていた屋敷よりも少し小さいが、それでも十分な広さだ。
「もう一度目的を確認するでござる。拙者達の目的は巻き物を取り戻すこと、危険なカラクリが沢山あるから気をつけて進むでござるよ」
セイは先行して私達に薦めるルートを差し示そうとしてくれる。しかし、
「……あ」
屋敷に入るために庭を進み、玄関の目の前でセイが足を止めた。そしてセイは足元を見る。
「慎重に進まないと……」
セイの下にある地面が開くと落とし穴が出現して、セイは穴の中に落ちていった。
「こうやって大変なことになるでござるゥゥゥゥ」
流石は忍者だ。自身を犠牲にして悪い見本を見せてくれた。
「レイさん、リエちゃん。早く行こ!!」
「でも、他にも罠があるかもよ?」
「じゃあ、僕が先に進みますよ」
忍者に変わり、今度は楓ちゃんが先を進んで安全を確認する。すると、同じように地面が抜けて落とし穴に楓ちゃんが落ちそうになる。だが、
「よっと!!」
落ちた楓ちゃんだが、落ちている途中で壁を蹴り上げて、その勢いで地上に戻ってきた。
「ここに落とし穴があるので注意してください」
「あんた、忍者よりも忍者してるよ」
こんな調子でカラクリ屋敷に私達は突入した。屋敷の中では巨大鉄球が転がってきたり、横から槍が飛んできたりしたが、楓ちゃんの力技で全て問題なく突破して、ついに……。
「よくここまで来たな。侵入者」
屋敷の最上階、そこにクノイチが待ち受けていた。
黒髪にスレンダーな身体。クナイを手にクノイチは睨みつけてくる。
「あなたがクノイチね」
「いかにも私は城戸 紫月。城戸家の忍者だ」
「あなたが巻き物を盗んだことで服部さんが困ってるの」
「セイ君が……いや、服部が来てるのか。ふふふ、それは面白い、それでその服部はどこに行った!!」
「落とし穴に落ちた」
「え?」
「屋敷に入る前に穴に落ちた」
「ええええええっ!?」
セイが落ちたと聞いて動揺する城戸。両手で頬を覆い腰をクネクネさせて困っている。
「ど、どうして!? セイ君!?」
なにやらセイと知り合いの様子の城戸。しばらく一人でボソボソ呟いた後、城戸は深呼吸して落ち着くと、
「そうね、セイ君はいつか来るとは思ってた。どちらにしろ、巻き物を守らないといけないのだから……」
城戸はクナイを握りしめて構える。そして、
「侵入者は始末する!!」
クナイを私に向けて六つ投げてきた。
「きゃっ!?」
私とリエは頭を抱えて怯える。リエは怖がる必要はないが、私に釣られる形でそのような体勢になったのだろう。
その場に固まるが、逆に身を固めてしまえば逃げることはできない。クナイは真っ直ぐ私を狙う。
「任せてください!!」
私の前に楓ちゃんが割り込むと、クナイから私を守るように立つ。
「楓ちゃん!?」
身を盾にして私をクナイから守ってくれるのか!? そう思ったが違かった。
楓ちゃんは超スピードで手を動かすと、飛んでくるクナイを全てキャッチしてしまった。
「なにその、超人技……」
私とリエが呆れる中、楓ちゃんはクナイの一つを城戸の動きを参考にして持つ。
そして城戸が投げた投げ方と同じ形で、
「返しますよ!」
クナイを城戸に返した。
「え……!?」
投げたクナイがキャッチされて投げ返されると思ってもいなかった城戸は、口を開けてポカーンとしてその場で動かなくなる。
そんな城戸の耳を掠り、楓ちゃんの投げたクナイは城戸の後ろにある襖に刺さった。
「なかなか投げるの大変ですね」
楓ちゃんは肩を回してストレッチを始める。そんな楓ちゃんを見て、城戸は「ハハハ〜」と乾いた笑いを漏らした。
「まぐれだなまぐれ、私の忍術がこんな小娘に止められるはずがない」
「僕は小娘じゃないですよ」
「黙らっしゃい!! もう手は抜かんぞ、この忍術で貴様らを始末してやる……」
城戸は懐から赤い巻き物を取り出すと、それを私達との間の地面に投げ捨てる。
「忍法、影分身の術!!」
城戸がそう叫ぶと、巻き物が光だして変形し始める。そして人形に変身すると、それは……。
「ふ、二人に増えた!?」
城戸は二人に分身した。しかし、
「偽物ちっさいんですけど!?」
巻き物が変身した城戸は、手のひらサイズの大きさで、偽物だとすぐに判別が付く。
これを影分身と言っていいものなのか。
「「さぁ、これで本物がどれが分かるかな?」」
「簡単に分かるけど!!」
私のツッコミを無視して、二人の城戸は左右から楓ちゃんを狙う。
左手にクナイを持ち、ナイフのように突き刺そうとする。だが、
「なに!! 見破っただと!!」
楓ちゃんは大きい方の城戸のみを見て、クナイを持つ腕を掴んで攻撃を止めた。
「これが忍術ですか。では、僕も!!」
楓ちゃんは城戸の腕をがっしりと掴むと、腕の力だけで城戸を持ち上げる。そしてその勢いで投げ飛ばして城戸を天井に叩きつけた。
城戸は大の字になって天井に張り付き、そのままの姿勢で落下する。
「レイさん、クノイチ倒しましたよ」
伸びている城戸を前に、楓ちゃんは笑顔でピースをしてくる。城戸が倒れると分身は消滅して、元の赤い巻き物に戻る。
私は城戸が指で城戸の頬を突き、完全に気絶しているのを確認してから、懐に手を入れてセイの探していた巻物を探す。
「どうです? 見つかりそうですか?」
「そうね、あ、これかしら」
私が巻き物を掴み、手を引っこ抜くと出てきたのは紫色の巻き物。それは先程分身で使った巻き物とは違い、私から見ても分かるような凶々しいオーラを放っていた。
オーラを見たリエが私に気づいたことを報告する。
「この霊力……悪霊ですね」
「悪霊? この巻物がってこと?」
「いえ、この感じは巻き物に封じ込まれている感じですね」
私達が巻き物を手に入れて、その正体について話し合っていると、
「どうやら、巻き物を取り戻せたようでござるな」
「セイさん、無事だったんですね」
「拙者とて忍者よ。あの程度の穴ではやられん」
落とし穴に落ちていたセイが、やっとよじ登り、屋敷に入って合流した。
「さてと巻き物を拙者に渡して欲しいでござる」
セイは手を伸ばして巻き物を渡すようにせがんでくる。私は巻き物をセイに渡そうとしたが、途中で思い留まり渡すのをやめて手元に戻す。
「どうしたでござる?」
「待ってください。この巻き物はなんなんですか? 封じられてた巻き物って言ってましたけど、あなたはこれについて知ってるんですか?」
セイは手を引っ込め少し考え込む。そして数秒後決断すると、
「…………悪霊でござる」
「ご存知だったんですね」
「其方達が悪霊を知ってるでござるか!?」
「まぁ一応……」
「なら、隠す必要もないでござるな。巻物に封じられているのはヤマタノオロチという強力な悪霊でござる。500年前、拙者達の里にこの悪霊が姿を現し、多くのものを苦しめた。里の者は協力して悪霊をその巻き物に封じ込めたでござる」
「そういうことだったのね」
「城戸は悪霊を復活させるため、巻き物を盗み出したでござる。拙者が里で保管する、渡すでござる」
セイは再び渡すようにせがみ出す。今度は渡そうと巻き物を前に突き出した時。
「待つでござる!!」
聞き覚えのある声。そして部屋のもう一つある入り口から、二人目のセイが現れた。
「セイが二人!?」
私達は驚いて口を大きく開けて叫ぶ。首を振り二人を交互に見るが、見た目も声も同じだ。
遅れて現れたセイは私に向けてあることを叫んだ。
「その巻き物を渡してはいけないでござる!!」
「え!?」
私は言われた通りに巻き物を持つ手を引っ込めようとするが、もうすでに遅かった。
「無駄だ!!」
最初からいたセイは私から巻き物を奪い取ると、巻き物を手に大きく後ろへ飛び跳ねる。そして取り返されないように距離を取ると、頭から足までを皮を剥ぐように表面に貼られた何かを剥がす。
そしてセイの皮を被った男性が姿を現した。
「甘かったなぁ、セイ……」
それは髭を生やした中年の忍者。ぽっちゃりにも見えなくないが、身のこなしからして太ってはいるが筋肉はあるのだろう。
「松尾!!!!」
セイは巻き物を手に入れた忍者の名前を叫びながら、私達の前に立ち守るような体勢になる。
「本物はあなただったのね……」
「落とし穴から抜け出すのに苦戦したでござる。……城戸から巻き物は取り戻してくれたようでござるが…………」
セイは倒れている城戸に一度視線を移し、心配しているような顔をするが、すぐに目の前の敵に視線を戻した。
「拙者がもう少し早くつければよかったでござる。松尾に巻き物を取られるとは……」
「どういうことなの? 城戸が巻き物を盗んだから取り返せって話じゃ……」
「あの巻き物に封じ込まれている悪霊。あれを狙うのは城戸だけではないってことでござる」




