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第57話 『忍者の巻物』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第57話

『忍者の巻物』




 ランランのゲームを終えて数日後、テレビや新聞はランランの事件について連日放送していた。




 被害者は全国で2万人以上。正確な数字は出ていないが、半数以上が意識不明や行方不明、日本国内に留まらず、世界中でも被害の報告があった。




 無事に帰った来た被害者は私たちと同じく、ランランのゲームに付き合わされたと証言しており、被害者の全員が同じ報告をしていた。




 ハッピーランランのいた事務所は事件の影響を受けて、大きな損害を受け倒産。ランランの担当をしていたプロデューサーは被害者と同様に行方不明だ。




「ねぇ、レイさん。今回の事件って前の悪霊騒動と違ってみんな覚えてますよね、なんでなんでしょう?」




 テレビを見ながら歯磨きをしているリエが、ふと疑問に思ったことを口にする。




「そうね……。今回は…………」




 海でのタコのような悪霊、リエが悪霊になった時。両者共に大きな騒動になってもおかしくないものだった。

 しかし、どちらも人の記憶が操作されたかのように変えられ、別の事実がでっち上げられた。だが、今回は違う。

 報道の内容は私達の記憶と一致している。




 今までの騒動で一番大きな事態になったからか。それとも……。




「お前の兄貴が関わってるんじゃないか」




 私が答える前にテレビの前を陣取っていた黒猫が発言を奪った。




「レイさんのお兄さんが……ですか!?」




「アンタ、まだお兄様を疑ってるの!!」




 リエは歯磨き粉を口から垂らし、それに気づいた私は素早くティッシュを下にひいて受け止める。

 黒猫は私達の騒動も知らずに、テレビに目線を向け続ける。尻尾を振り、しばらく考えた後、




「なぁ、レイ……」




 黒猫が何かを言おうと決心し、振り向いた。




「……いない…………」




 だが、私とリエの姿はなかった。




「何か言った?」




 私はリエを洗面台に連れて行き、薄っすら聞こえた声に反応する。

 しかし、黒猫は諦めたようで何も言ってくれなかった。




 日差しが窓から差し込み暖かくなってきた頃。朝練を終えた楓ちゃんが帰ってきた。




「僕が来ましたー!!!!」




 いつも通り元気な声で挨拶をしてくる。




 事件が終わった翌日、楓ちゃんにもこの前のランラン事件を伝えた。

 楓ちゃんも配信を見ずに寝ていたようだが、私達と同じように鬼ごっこに参加させられた友人が学校にいたようだ。




 その友人は無事に帰ってくることができ、その不思議な出来事を楓ちゃんに相談してきたらしい。




 ランランの事件が表立って出ている状況だが、私たちにはこれ以上何もすることはできなかった。

 ランランの事務所は無くなり、加藤さんは行方不明。私達にあの悪霊を操る集団の正体を知る手段はなかった。




「よぉ、楓。来たか」




「師匠、何してるんですか?」




「日向ぼっこだ」




「良いなぁ! 僕もやります!!」




 腹を出して窓の前で寝ていた黒猫。楓ちゃんはバックを投げ捨てると、黒猫の横に寝っ転がった。




「あんた達……床汚いのよ」




 この事務所は土足で上がれるようにしている。例外は私の寝室とトイレ、浴室だけだ。




「俺はいつものことだ。それなら楓だけに言え、あいつ制服だし」




「あーあー、楓ちゃん、ほら立ちなさい」




 私は楓ちゃんの腕を引っ張って立たせる。掃除は毎日しているが、土足で出入りできるために床も汚れている。

 私は楓ちゃんの制服についた砂を素手で払った。




「いや〜、すみません」




「も〜」




 楓ちゃんの服を綺麗にしてスッキリしたところで、黒猫が耳をピンとさせて立ち上がった。

 そして耳を左右に動かし、位置を確認した後、窓の方へと目線を向けた。




「どうしたんですか? 師匠」




「誰か来たみたいだぞ」




 黒猫の向く方向。そこにある窓がコンコンと叩かれる。私は窓を凝視すると窓の下から腕が伸びて窓を叩いていた。




「まさか……」




 私は近づいて窓を開ける。そして顔を出して下を覗いた。




「すまぬ、指がつって落ちそうなのだ。助けてくれぬか……」




 そこには壁に張り付く忍者がいた。









「いや〜、すまぬすまぬ〜。助かったでござる」




 壁にへばり付いていた忍者を引き上げ、事務所に入れて休ませていた。

 忍者はヘラヘラ笑って礼を言う。




「スッゴイ胡散臭い忍者ね」




「ですね、胡散臭いです」




 私とリエは耳打ちをして忍者の感想を言い合う。




「どうしたでござるか? 霊宮寺殿」




「いえ、なんでへばり付いてたのかなぁって考えてて〜」




 忍者にはリエの姿は見えていないようで、私は適当に誤魔化す。

 しかし、ヘラヘラ笑っていたはずの忍者は、突然目線を鋭くして私を睨んできた。




「まさか、拙者のことが胡散臭いと?」




 え!? 聞こえてた!!




 まさか聞こえていたのか。忍者恐ろしやと思ったのだが、またもや忍者はヘラヘラすると、




「まぁ、現代では忍者は珍しいでござる。胡散臭いと思てしまうのも無理はないでござるな」




「そ、そうなんですよ〜、初めて見たからびっくりしてしまって〜、オホホホホ〜」




 聞こえていたのかは分からないが、起こっている様子はない。




 私と忍者が話していると、台所でお茶の用意をしていた楓ちゃんが戻ってくる。

 お盆に人数分のコップを乗せてテーブルに置いた。




「忍者さん、なんで壁に張り付いてたんですか?」




 楓ちゃんはお盆を置くと忍者に尋ねてみる。




 私から見ると、壁に張り付いているのは2人目だ。一号楓ちゃん、そして二号はこの忍者。

 ある意味、似たものコンビに見える。




「拙者、服部(はっとり) 青河(せいが)と申す。里ではセイと呼ばれていた。それでも構わぬ。んで、壁にいた理由であったな……」




 セイはお茶を手に取って一口飛んでから話し始める。




「先日、拙者達の住む伊賀里で事件が起きた」




「事件ですか……」




「不思議な力を持った巻物。古来より封じられていた巻物だ、それが城戸のクノイチに盗まれてしまったのだ」






 セイの話では、他の里の者の協力もあり、その女忍者の潜伏先までは突き止められたらしい。

 しかし、その潜伏先の屋敷には恐ろしい仕掛けが仕込まれており、巻物を取り返しに行った忍者は全て返り討ちにされた。




 無傷で生還できたセイは、助っ人となる人物を探して、ここまでやってきたらしい。




「この街には有名な妖術使いが住んでいると聞き、拙者はその者に助っ人を頼みにきたのだ。それで強い力に反応してここに来たということでござる」




「強い力?」




 この忍者にはリエも見えていない。霊感があるとは思ないが……。

 忍者は背中の筒から巻物を取り出すと、テーブルの上に置く。

 そして忍者っぽいポーズをとって「ニン」と叫ぶと、巻物から時計のようなものだ出てきた。




「これは妖力レーダーでござる。これで力の持ち主の方向が分かるのでござる」




 巻物から出てきたものは忍者らしくない機械だが、そのレーダーを頼りに助っ人を探しているようだ。




「ねぇリエ。あの巻物からポンって出したやつ、どういうやつなの? もしかして魔法少女の時みたいに幽霊が手伝ってるみたいな?」




 私はひっそり、リエに忍者の不思議な技について聞く。




「霊力は感じましたけど、幽霊がいる気配はないですね。どちらかっていうと、霊力で作った道具ってところでしょう」




「道具?」




「前に京子さんが持っていた木刀。あれ覚えてますか?」




「あーあれね。リエが取り憑けるっていう」




「はい。あれに近いものです。霊力で特殊な効果のある巻物やレーダーを作ったんですね。…………私は無理ですからね、専念された技術と霊力のコントロールが必要ですから」




 できたら楽しそうだと思ったが、無理だと言われちょっと残念な気分。

 しかし、忍者の道具の正体は分かった。




 霊力と妖力は同じもの? そうなるとセイの探しているという人物は……




「セイ、あなたが探してるっていうのはもしかして私のこと……」




「それはないでござるな。レーダーが反応してないでござる」




「あ、そう……」




 私じゃないのなら、さっさとそれっぽい人を紹介して帰ってもらおう。

 しかし、妖力の強そうな人物……。この周辺に住んでいる人だ。




 私は今まで会った人たちの中から、考えていく。




 まずは力の持ち主と言えば、お兄様だ。しかし、最近は出張でどこかの海に行っているらしいし、違うだろう。

 それにたまに帰ってくるだけで、基本は住所はアメリカだ。




 次は魔法少女の達を思い浮かべたが、忍者とは世界観が違うし、ヒーローである彼女達がこの件に手を出すとは思ない。




 そして世界観もあっていて、強力な力の持ち主といえば、武本さんもいる。しかし、武本さんは土地に取り憑いている地縛霊であるため、外に出ることは簡単ではないだろう。




 結局当てはまるような人物は思いつかず、私は諦めた。




「確かにここで強い力を感じたでござるがね」




 セイはレーダーを覗き込んでもう一度確認してみる。




 やはりレーダーに強い力の持ち主がいる。だが、そのような人物は誰なのか。

 セイはもう一度、レーダーを動かしてレーダーの示す位置を確認する。




 セイの身体から右斜前方、そこから三メートルの位置。そこをレーダーは示している。

 セイは確かめるように目線を動かし、その方向を見てみる。




「どうしたんですか? 僕に何かついてますか?」




「……………。いやいや、流石にないでござろう……」




 セイは楓ちゃんを見た後、少し考えて首を振る。そしてもう一度、レーダーを見直した。




「…………」




 レーダーの表示と、楓ちゃんを交互に視界に入れる。首を上下させているセイに私は思ったことをそのまま伝える。




「そのレーダー。楓ちゃんを示してるんじゃ?」




「そんなことはあるわけないでござる。こんな子供が…………」




 セイは何度も確認するが、やっぱりレーダーの示す先には楓ちゃんがいた。

 楓ちゃんを少し移動させてみたりしたが、結局レーダーが示している位置には楓ちゃんがいた。




 認めようとしないセイに、私は呆れて教える。




「楓ちゃんはかなり力が強いのよ。私よりもずっとね」




「本当でござるか?」




 私が説明しても納得する様子のないセイ。そんなセイを説得するため、黒猫は台所からあるものを引っ張ってきた。




「面倒だ、レイ。こいつを持って」




 黒猫が持ってきたのはまな板。私にまな板を持たせると、黒猫は楓ちゃんに指示を出した。




「チョップで割れ、楓」




「はい!!」




 楓ちゃんは私の持つまな板にチョップをしようとする。




「え!? 待って!!」




 私が止めようとするが、間に合うことはなく。一枚しかないまな板が割られてしまった。




「まな板が〜」




 私は割れたまな板に涙して膝をつく。しかし、まな板の犠牲もあり、やっと忍者は楓ちゃんの力を認めた。




「今の力、確かにレーダーが反応していた!!」




 セイは立ち上がると、楓ちゃんの手を掴む。そして




「あなたが妖術使いでしたか!! お願いします!! お力をお貸しください!!」




「ぼ、僕ですか……」




 楓ちゃんは動揺しているふうに答えるが、実際には口を緩ませて期待に胸を膨らませている。

 忍者の屋敷に侵入する。ゲームか何かと勘違いしているのだろう。




「レイさん、どうしましょっか〜」




 楓ちゃんは自分で決断をせず、私に決定権を投げてくる。

 だが、そんなことされたら、




「手伝ってあげましょっか〜。楽しそうだし」




 私もゲーム気分で参加したくなる。








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