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霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?  作者: ピラフドリア


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第36話 『悪夢のカウントダウン』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第36話

『悪夢のカウントダウン』







 コツン……コツン。天井から水滴が落ちる音が響く。




「……私を閉じ込めてなんのつもりですか」




 取り憑く存在がなくなり、残り少ない自身の霊力で身体を維持する幽霊は、檻の外でパイプ椅子に座りこちらを見ている執事に尋ねる。




 執事は幽霊に優しい笑顔を向ける。




「そう怖い顔をしないでくださいよ」




 幽霊を閉じ込める檻の中には、霊力が込められた腕時計と、お盆に乗せられた食事が置かれている。




 しかし、幽霊は腕時計に取り憑かず、食事にも手をつけない。




「なんのつもりなんですか!」




「君と話をしたいだけですよ。君のことを知り、心に刻んでおくためにです」




「私のことを知る?」




 執事の言葉に疑問を持ち、恐怖を感じるリエ。




 執事は立ち上がると、檻とは反対側にある小窓から半月に目をやった。




「…………私には帰る場所がある。そのために君には犠牲になってもらう。だからこれは君に対して私ができることなんだ……」




 月光に照らされて執事は振り返る。その顔は穏やかな顔であり、表情からは悪意を感じることはできなかった。













「リエ!?」




 目が覚めるとそこは見慣れた天井。




「…………ここは私の部屋……」




 私は事務所にある自室のベッドで寝ていた。




 立ち上がろうとするが、酷い頭痛に動けず。どうにか寝返りを打つ。

 すると、枕の横には黒い物体が丸くなって寝ていた。




「タカヒロ……さん?」




 私は手を動かして指先で、黒猫の背中を突く。すると、触ったところから波が動くように毛が逆立ち、黒猫が飛び上がった。




「うわっ!? なんだ!? 敵襲か、敵襲なのかァァァァァ!? ……………って、レイ、お前か……」




 勝手にビビって焦っていた黒猫は、自己解決して冷静になる。




「なんであんた、私の部屋にいんのよ」




 私は寝た状態で睨みつけると、黒猫はそっぽを向く。




「お前には関係ない。…………レイ、動けるか?」




 目を合わせずに黒猫は私に動けるのか聞いてくる。




 気になることもあるが、私はまず黒猫の指示に従い、身体を動かそうとする。

 だが、頭痛がして身体が動かせない。




 私の状況を理解してか、黒猫は動こうとする私の腹の上に乗ると動くのを止めた。




「分かった。無理はするな……」




「そういうなら、降りなさいよ」




 しかし、黒猫は降りることはなく。私の上で陣取る。




「レイ、どこまで覚えてる?」




「買い物に行って、その帰り道で執事と一緒に、悪霊に襲われて……。その執事と人形が…………」




 そこまで口にして私は大事なことを思い出した。




「そう、リエ、リエは無事なの!?」




 私の問いに黒猫は首を振る。それを見て私は起き上がろうとするが、頭痛と黒猫が乗っている二つの理由で動けない。




 黒猫は私がこの話を聞いて、起き上がろうとするのを予想していたのだろう。だからこそ、私の上に乗ったのだ。




「心配なのは分かる。だが、状況が状況だ。冷静にならないと何も解決しない」




 黒猫に説教をされるが、まだ焦る気持ちは落ち着かない。

 頭では分かっていても身体が動こうとする。




 そんな私の顔に黒猫は手を置くように軽く猫パンチをして、手を鼻の上に乗っけた。




 そこまでされて私はやっと落ち着きを取り戻す。




「どうだ、落ち着いたか?」




 私は首を少しだけ動かして頷く。これくらいの動きなら、頭の痛みも感じない。




「喋れよ」




 黒猫は頷くだけでは嫌なのか、返事をするように強要してくる。しかし、喋れない理由がある。




「おい、レイ……」




 私は大きく口を開ける。そして、




「ハックション!!」




 猫の毛にやられて大きくくしゃみをした。くしゃみをすると、その衝撃が頭に響いて私は頭を抑えながら苦しみ悶えた。




「あ、すまん。ミーちゃんの毛か」




「くしゃみが出そうだったから喋れなかったのよ……」




 私は鼻水を垂らし、楽な姿勢になる。そして黒猫に質問した。




「……それでなんで私はここにいるの?」




 私の質問に黒猫が答えようと口を開く。しかし、黒猫が答えるよりも早く、扉が開くと、




「暴走族の青年が運んでくれたんだ」




 お兄様が自室に入ってきた。




「え、お兄様……!?」




「お前に会いに来て待ってたら。青年がボロボロになりながら、お前をここまで運んでくれたんだ」




「スキンヘッドは?」




「ソファーで寝かしてる。お前よりも重症だ、命に問題はないがな」




 人形に襲われた時、スキンヘッドが守って、やられながらもここまで連れ帰ってくれていたようだ。

 私は心の中でスキンヘッドに感謝をする。




 お兄様は部屋に入ると、私の上で座っている黒猫を睨みつける。




「っと、それよりもだ。ネコ、俺の妹に何手を出そうとしてるんだ!」




「してないわ!! というか、するか!!」




「あぁ? なんだと!?」




 お兄様が黒猫に突っかかって喧嘩を始めた。




 怪我人の目の前で騒がないでほしい。




 っと、私は扉の前でこちらの様子を見ている赤毛の青年を見つける。

 私は手招きをして青年を呼んだ。




「赤崎君、君も来てたんだ」




「先輩に連れられて、体調はどうですか?」




「ちょっと痛いけどだいぶ治ってきた」




「それは良かった。頭の包帯少しきつそうですね、少し緩めますか」




 赤崎君は私の包帯を緩めながら、私に尋ねる。




「状況は聞きましたか?」




「タカヒロさんとお兄様からちょっと……。あの人形はなんなの?」




 包帯を緩め終えた赤崎君は私の隣で座ると、喧嘩する黒猫とお兄様を眺めながら答えた。




「スキンヘッドが眠る前に状況を話してくれました。おそらくそれは術師です」




「術師?」




「僕も詳しくはありません。術師はBBDの長官ミラーが提案した人間兵器の一つです。特殊な能力を持った人間で、魔法のような不思議な力だと聞いています」




 話を聞いた私は大きく口を開けて驚く。本来なら目を輝かせて興味を持つところだが、私はテンションは上がるようで上がらない。




「そんな不思議なものがあるの?」




「あるのが事実です。一般的に知られてないのは、BBDやそれらの組織が情報をもみ消しているからですね」




 赤崎君は立ち上がると、




「では、僕はスキンヘッドの様子を見てきます」




 そう言ってお兄様の方へと近づき、喧嘩をしているお兄様の耳を掴んだ。




「ほら、先輩も行きますよ」




「あか、赤崎ぃぃ、何すんだぁー!」




 お兄様は赤崎君に連れられて部屋を出て行った。部屋に残った黒猫はホッと疲れた様子で、その場に座った。




「レイ、お前にもう一つ伝えないといけないことがある」




 黒猫はその場に座ったまま、顔を向けずに真剣な声で告げる。




「楓も消えた」




「え!? 楓ちゃんが、なんで!?」




 私はベッドから身を乗り出して驚く。そんな私を黒猫は睨みつける。




「動くな響くぞ」




「え、あわぁぁぁぁっ!!!!」




 動いたことで頭が揺れてジーンと頭痛が襲う。




「ほらな」




 私は痛みが治ると黒猫に詳しく説明するように要求する。すると、黒猫は近づいてきて、ベッドの上に乗った。




「お前達が出て行ってから、楓が事務所にやってきた。それからしばらくして楓の携帯に電話がかかってきたんだ。その相手は分からないが、電話を切ると楓は走って出て行ったんだ」




「学校に忘れ物でもしたのかな?」




 私は黒猫の説明から、素直に思ったことを口にして見る。しかし、黒猫は否定した。




「いや、違う。楓はリエの元に向かったんだ」













 暗い牢獄の中、リエは壁を背に三角座りで、鉄格子の先にある窓から外の様子を見ていた。




 執事はリエに幾つかの質問をしたのち、牢屋のある部屋から出て行った。




 眠らされて連れられたから、ここがどこなのか分からない。しかし、外が見えることから地下ではないのは確かだ。




 壁を通り抜けて脱出を試みたが、壁には霊力のバリアが貼られており、リエの力ではそのバリアを超えることができなかった。




「レイさん、無事かな〜」




 ふと独り言を呟く。




 眠らされる直前に聞いたレイの声。返事を返せなかったことを少し後悔していた。




 コツン……コツン。扉の向こうにある廊下を歩く音がする。またあの男が帰ってきたのだろうか。




 リエは寂しさで弱った心に気合を入れて、執事が帰ってきても弱音を吐かないように、気持ちを切り替える。




 しかし、足音が近づくと、その足音が一人ではないことに気がついた。

 さらにはカメラのシャッター音のような音も外からは聞こえる。




 耳を澄ますと二人の声が聞こえてきた。




「本当にここにいるの?」




「なんだい、疑うのかい? 俺の情報収集能力は、君なら知っているはずだろ」




 その声の主は扉の前で止まると、勢いよく扉を蹴り飛ばして牢屋のある部屋に入ってきた。




「楓さん!?」




「リエちゃん、無事で良かった」




 部屋に入ってきたのは楓と石上。




 石上は楽しそうにカメラを構えて、部屋中の写真を撮影する。




「ここが戦中に外国人を収容していた部屋か」




 写真を撮り続ける石上を無視して、楓はリエのいる檻の前に立つ。




「リエちゃん、今助けるからね」




 楓は鉄格子を両手で掴むと、広げるように引っ張って檻をこじ開けようとする。

 しかし、そんなことで牢屋が壊れるはずもない。




「どんな方法でこじ開けようとしてるんですか…………」




 リエが呆れている中、楓にリングに嵌められた鍵が投げつけられた。

 楓はそれをキャッチすると、飛んできた方向を見る。




「鍵?」




「君は馬鹿なのか。そこの壁に鍵がかけてあったろう」




 小馬鹿にするように石上が楓に言う。イラっとした楓が言い返そうとするが、その前に石上が、




「そこに君の友達がいるんだろ。早く出してあげなよ」




 そう言われ、怒ることもできず、楓は鍵を開けてリエを牢屋から出した。




「楓さん、ありがとうございます。でも、なんで……」




「そこのパシャパシャお化けが教えてくれたんだ。レイさんが襲われて、何かを持っていかれたって」




 石上は辺なあだ名をつけられて、少し不機嫌そうな顔をするが、部屋の写真を撮り終えたからか。




「ここでの用事は済んだんだったら、早く出よう。俺のジャーナリストとしての感が言ってる。ここはヤバいってな」




「それは同感だ。僕も嫌な予感がする」




「君のは野生の感だろ」




「同じようなものだろ!」




「俺は君みたいな野蛮人じゃない。立派な現代人だ」




 いつも通り喧嘩を始めた二人。いつまでもここにいたくないリエは、楓の服の裾を引っ張って催促する。




「ごめん、リエちゃん。……あ、そうだ」




 脱出しようとしていたところ、楓が何か思いつく。




「リエちゃん。僕に取り憑きなよ。そうすれば霊力の補完ができる。霊力を使いすぎて疲れたでしょ」




 少し戸惑ったリエだが、ここは甘えることにして、




「お願いします」




 楓に取り憑くことにした。




 リエの身体は少し成長し、以前のような成長した姿になる。さらに霊力が増えたことで、




「お、俺にも見える!?」




 石上にもリエの姿が目視できるようになった。




 リエの見えるようになった石上は、リエにレンズを向けるとお願いをしてみる。




「一枚撮っていいかな?」




「ダメです。呪いますよ」




「ごめんなさい」




 前の嫌な思い出が蘇ったのか。リエの言葉に石上は肩を抑えて震える。

 楓はそんな石上の尻を叩き、




「ほら、早くここから脱出するよ」




 建物から出るように促した。







 ここは戦中に捕らえた外国人や反対勢力を収容していた施設であり、牢屋や拷問部屋が数多く存在する。




 建物自体は老朽化の影響で立ち入り禁止になっており、近々取り壊しも予定されていた。




 執事はその建物を利用してリエを監禁していたようだ。





 廊下を進みながらリエは質問する。




「あの執事さんは何者なんですか?」




 質問された楓は隣を歩く石上を見ると、石上はメモ帳を取り出して説明を始めた。




国木田(くにきだ) (おさむ)。八神村の神楽坂家で執事をしていたが、八神村の事件以降行方不明となり、消息不明となっていた」




 石上の説明を聞いた楓は首を傾げる。




「八神村の事件?」




「君はそんなことも知らないのか。五人の被害者と二人の行方不明者が出た。最悪な事件さ、僕も記事を作りたくて村に向かったが、村の荒れ具合も酷かったよ」




「そんな事件が……」




 石上は説明を続ける。




「それに国木田の容姿は公園で起きた事件の目撃証言とも一致してる。早く出て、警察に連絡するのが良いだろう」




 三人が建物の出口のあるロビーに辿り着くと、ロビーの中央にあるソファーに例の人物が座っていた。

 ソファーの向きは出口の方を向いており、こちらには背を向けている。




 しかし、執事はまるで見えているように喋りかけてきた。




「そこで止まってください」




 バレたことに驚いた三人は一度足を止める。立ち止まると、石上はカメラを持ち上げて執事に向ける。




「あなたは何者ですか。この廃墟で何をしてるんですか?」




 シャッターに手をかけて質問する石上。答えてこちらに顔を向けた瞬間に顔を撮影するつもりなのだろう。




 しかし、国木田はソファーに座ったまま、右手を挙げた。




「質問に答えてください」




 石上が少し強めに言う。だが、国木田は答えない。




 後ろ姿でもカメラに撮っておこうと石上が、シャッターを押そうとした時。後ろから何かが石上のカメラを叩いた。








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