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第34話 『事件と悪霊』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第34話

『事件と悪霊』





 夜の繁華街。酔った二人のサラリーマンが肩を組みながらふらふらと進む。




「っけ、なんで妻と娘に逃げられるんだ……」




「そりゃ〜克巳先輩がSMとかいう変態プレイにハマるからですよ、そりゃ〜、僕だって引きますよ……うへっ」




 千鳥足の二人は前方を歩いていたスーツの男にぶつかる。




「うへっ、あぁ? なんだてめ〜、何ぶつかってんだよぉぉ〜」




 自分からぶつかって謝りもせず突っかかるサラリーマン。ぶつかった男が振り返ると、その男はただのスーツではなく、どこかの屋敷の執事が着ているような立派な服を着こなしていた。




 さらに身長はサラリーマン達よりも一回り大きく。身体は太くないが手足の長いヒョロリとした印象を受ける。




「どう致しましたか?」




「ぶつかっといて謝らねぇのかって、言ってんだ……っへけ、よぉぉ」




「それはそれは失礼致しました」




 男性は深く頭を下げる。しかし、酔っ払ったサラリーマンはそんな男性の頭に拳を押し付ける。




「謝って済むかよぉ〜。なぁぁ?」




「そうですか。ではこちらへどうぞ……」




 何も言わずに男性は酔っ払いを連れて繁華街を抜け、人気の少ない公園へと連れ出す。




「なんだぁ、執事さんヨォ、俺たちと喧嘩しようってのかぁ? っうへ」




 男性は手袋を外してポケットにしまうと、男性達に向かい合った。




「いえ、あそこだと人の目がありますので」




「へぇ〜、俺たちとやるってかぁ、面白い……」




 話を聞かない酔っ払いは上着を投げ捨てる。




「かつぅみ先輩、こんな奴、俺一人で十分ですよぉ〜。俺若い頃、アマですがボクシングやってたって言ったっすよねぇ、こんなヒョロヒョロ余裕っすよォォ」











「剛田警部。福田警部が来ました」




 ゴリラみたいな顔をした警部に報告をする。




「福田だぁ〜? あの無能が……」




 文句を言いながらも剛田警部は立ち上がると、福田警部の元へ向かう。




「何の用だ、福田……。ここはお前の管轄じゃねぇだろ」




「俺だって着たくて来たわけじゃない」




 不機嫌な顔で睨みつける剛田警部。そんな態度を取られ、福田警部も不機嫌な顔になる。

 しかし、現場の状況を見て歪みあってる場合じゃないと判断して、ため息を吐き冷静になる。




「こいつはひどいな……」




 福田警部の隣では猫目の刑事が口を押さえた。




 ブルーシート包まれているものは、原型がなく元の形が分からないほど変形していた。

 周りにはその物体から飛び出したものが散らばっている。




「暴力団の仕業か?」




 福田警部は隣にいる剛田警部に尋ねる。




「人間業じゃねぇよ。奴らでもここまでするのは時間がかかる。犯行時間は三十分以内だ。それ以上は状況的に無理だ」




「第一発見者か?」




「ああ、ここに住んでる浮浪者だ。三十分ほどここから離れていたら、この惨状が出来上がってたらしい」




 三十分でこれだけの状況になるのはかなりの人数と道具がなければ不可能だ。

 しかし、そんな人達の目撃者情報はない。




「警部!! 被害者の関係者の方と連絡が取れました!!」














「はぁぁあぁー」




 私は寝っ転がったまま背伸びをする。昼ご飯を食べてうとうとした私は気がついたら、ソファーで寝ていたらしい。




「重たいな……」




 寝た状態で私は身体が重いことに気づいた。まさか、金縛りにでもあったのだろうか。

 しかし、重たいのは腹だけだ。




 私は首を上げてお腹の方を見ると、私の上でリエが寝ていた。




「リ〜エ〜」




 私は寝ているリエの髪の毛をわしゃわしゃやって、イタズラをする。それでもリエは起きる気配がない。




「おう、起きたか。レイ……」




 テーブルの上に新聞を広げて読んでいた黒猫が、私が起きたことに気がつく。




「ねぇ、私潰されてるんだけど」




「知るかよ。二人して飯食ったらさっさと寝やがって……」




「なに? 寂しかったの?」




「そんなわけあるか!」




 私は寝っ転がったまま黒猫を揶揄うと、黒猫は照れた様子で否定する。




「……っと、それより今朝のニュース、新しいこと書いてあったぞ」




 黒猫は猫の手で新聞の一面を叩いて、その記事をアピールする。しかし、リエに乗られている私は首を動かすことしかできず、テーブルにある新聞が見えない。




「こっち持ってきて」




「ミーちゃんにそんな重労働させるな……。リエを退かせばいいだろ」




 私はリエの頬っぺたを掴み引っ張るが、リエは起きる様子はなく、熟睡している。




「無理ね」




「だから退けろ!」




 私はリエをソファーに寝かしつけて、パイプ椅子に座る。そして黒猫の言う記事に目を通す。




「犯人の見た目は30代前半の男で、長身の執事……。執事って本当にいるの?」




「いや、お前、メイド服着てる女見たことあるだろ」




 黒猫に言われてその人物の見た目を思い出す。




 メイド服を着た…………




「彼女は変態よ。メイドじゃない、変態メイドよ」




「結局メイドに戻ってるぞ。……っと、その続きだ」




 黒猫に指示されて先を読む。




「八神村の事件との関係性?」




「知ってるか? 八神村の事件」




 私は静かに頷く。




 最近よくテレビで放送される大事件だ。山奥にある村で起きた殺人事件。五人の被害者と二人の行方不明者が出ており、今も捜査は続いている。




「確か高校生探偵が捜査に参加したんだっけ」




「ああ、その事件だ。その探偵も今回の件で目をつけてこっちの方に来るらしい」




「それは物騒ね……」




 もしもその事件の犯人がこの街に来ているとしたら怖い。




 ただでさえ近くで起きた事件というだけで怖いのに、そんな大事件と関係あるかもしれないと言われると、さらに恐ろしくなる。




 記事を読み終えると、黒猫が私の顔を見て、




「出かける時は気をつけろよ」




 真剣な顔で言ってきた。そんな黒猫を見て、




「あんた、最近分かったけどツンデレ属性持ちなの?」




「なっ!? そんなわけないだろ!!」




 私は黒猫の鼻をツンツン指で突く。




「あるよ〜。あんた、最初は嫌ぁなおっさん感強かったけど、最近デレの部分も結構出すじゃないの〜」




「出すかよ! このやろー!」




 黒猫は恥ずかしがって私の指に噛みつこうとするが、私は噛み付かれる瞬間だけ指を退いて上手く避ける。




 黒猫の噛みつきをギリギリで躱して遊んでいると、寝ていたリエがむくっと起き上がる。

 そして目元を擦りながら寝ぼけた声を出す。




「レイさ〜ん、お腹空きました〜」




「さっき食ったばっかりでしょ…………ってあぁぁぁぁっ!! 噛まれたー!!!!」




 リエに気を取られている隙に黒猫に指を噛まれる。ドヤ顔をしてくる黒猫を引き剥がし、私は台所の洗面台で指を流す。




「それなりに強く噛んで……血出てるじゃない」




「俺を小馬鹿にするようなこと言うからだ。……と、リエ起きたのか」




 私が血を水で流して、消毒液を拭いてから絆創膏をつけていると、リエも完全に目が覚めたようで腕を伸ばしてソファーに座った。




「どれくらい寝てました?」




「レイと一緒で、一時間くらいだ」




 質問に黒猫が答え、リエは口を開けてぼーっとした顔をした後。




「お腹空きましたね」




「あんた、まだ寝ぼけてる!?」




 私は思わずツッコんでしまった。




「お昼少なかったんですよ〜」




「おかわりしてたじゃない……」




 リエは食べ物を探して冷蔵庫を開けたり、戸棚を探ってみたりする。

 本当にお腹が空いているようだ。




 しかし、お目当てのものは見当たらないみたいで、結局ソファーに戻ってきた。




「何もなかったの?」




「はい……」




 残念そうなリエ。私はめんどくさかったが、重い腰を上げた。




「分かった。夜ご飯買いに行くついでに、気になってたメロンパン屋にでも寄りましょうか」




「やったー!!!!」




 リエは嬉しそうに空中に浮きながらクルクルと回転する。




「出かけるのか?」




 テーブルの上では黒猫が心配そうにしている。




「大丈夫よ。どうせ買い物には行かないといけないんだし。それに今日は楓ちゃん部活だけみたいだから、メロンパン買っといたら食べるでしょ」




 私は支度を進めて出かける準備を始める。支度を終えていざ出ようとした時、




「レイさん?」




 リエの頭がボサボサになっていることに今更気づいた。

 そういえば、寝ている時にリエの髪で遊んでいた。




 所々は跳ねたり、丸まっている。かなり奇抜な髪型だ。




「リエ〜おいで〜」




 ブラシでリエの髪の毛を整えて、いざ出発!!









 駅前のスーパーに買い物に向かう。途中の公園通りは警察官が多く、通路を封鎖しているため、あまり道になるが別のルートから駅へ向かった。




 スーパーに着き、買い物かごを手に取ると私はリエに聞く。




「何食べたい?」




「んー、メロンパン」




「いや、それは後でのおやつだから…………。夜ご飯よ、夜ご飯!!」




 私が尋ね直すと、リエは少し考えた後答えた。




「生姜焼きが良いです」




「生姜焼きね……。じゃあ、サラダも欲しいね……後は……」




 メインメニューをリエに決めてもらってから、私はそれに合うサブメニューを考える。

 最近はこうやることで何を作るか考えるのが楽だ。




「確か玉ねぎは残ってたから。キャベツと……」




 事務所に何が残っていたのかを思い出しながら、必要な材料をかごの中に入れていく。




「レイさん、お肉ここで買うんですか?」




「本当は商店街で買いたいんだけど。土曜日は休みなのよね……」




 私は諦めてお肉コーナーになるお肉を手に取ってカゴに入れる。




 スーパーで買い物をしている時も、店内では事件のことは話題になっているようで、行く先々で店員や主婦達が噂をしている。




 みんな怯えた様子だが、普段の生活を変えることはなく。気にしてはいるが、いつものような日常が進んでいる。




 買い物を終えた私達はスーパーを出ると、駅近にあるメロンパン屋さんに寄って、メロンパンを買う。




「早く食べたいですね〜」




「事務所に帰ってからよ。あんたがメロンパン食べたら、空中で消えるメロンパンの誕生よ」




「分かってますよ」




 事務所に向かって私達は歩き出す。住宅街を進み、薬局を過ぎると、路地の奥から男性の悲鳴が聞こえてきた。




「リエ、今の声……」




「悲鳴みたいでしたね」




 私とリエは顔を合わせて、お互いの表情を見合う。そしてお互いに頷いて同意のもと。




 事務所に向かって走り出した。何があったのかは分からない。だが、悲鳴が聞こえてくるなんて、ただ事じゃない。




 私達はその場から逃げようと必死に走る。すると、角から飛び出してきた男性とぶつかり、私は大きく弾かれた。



「レイさん、大丈夫ですか?」




 リエが心配そうに私の周りをくるくる回る。




「痛ぁ〜」




 私はお尻を地面に打つ。地べたに座り込んでしまっていると、私の目線の先に手が差し伸べられた。




「すみません、急いでいたので……」




 私はその手を取って立ち上がると、そこには長身に執事服を着た男性がいた。

 男性も走っていたようで額を汗が流れる。




「いえ、私も周り見れてなくて……ごめんなさい」




 私はその男性の服装に既視感を感じながらも、思い出すことができず、誰だったのか謝りながら思い出そうとする。




 しかし、思い出す前に、




「ん、気づかれましたか……」




 執事はそう言うと焦った表情で、周囲を警戒する。それと同時にリエも怯えたように私にしがみついた。




 執事は一礼すると、




「では、急いでいるのでこれで。それと幽霊の方と一緒に早く逃げた方がいいですよ」




 執事は背筋を伸ばし、綺麗な姿勢のまま走り出す。




「今の人、リエに気づいてた……? ねぇ、リエ」




 私はさっきの執事についてリエに尋ねようとするが、リエは震えたまま私に張り付く。




「どうしたのよ……」




 リエは震える手で執事が飛び出してきた角の先を指差した。




「悪霊……です」




「え……?」




 指された先を見ると、そこには顔だけで建物に匹敵する巨大な骸骨が、家と家の隙間から覗き見ていた。




「ぎゃぁぁぁぁっ!!!!」




 私はリエを連れて、骸骨とは反対側へと走り出す。それは自然と執事の向かっていった方向と同じだった。




 骸骨は家と家の間を縫いながら、私達を追ってくる。




 必死に逃げ続けて、やがて前方に執事が見えて追いつく。




「なんなんですか!! あれは!!」




 追いついた私は執事に叫ぶ。追いつかれたことに驚きながらも、執事は返す。




「見ての通りあれはがしゃどくろ。悪霊です!!」




「なんで悪霊に追われてるんですか!!」




「それは色々と事情がありまして……。とにかく今は逃げましょう!」




 私達は執事と一緒になって悪霊から逃げる。気がつくと悪霊は姿を消し、どうにか逃げ切ることに成功したようだ。




 逃げ切れたことに気がついた私達は、自販機の横にあるベンチに座り、息を整えた。




「はぁ〜やっと逃げ切った……」




 呼吸の荒くなった私の背中をリエが摩る。




「あの悪霊。特定の人以外からは姿を見えなくしてましたね、見えない相手には悪霊も干渉することはできてなかったですが、それで騒ぎにはなってないんですね」




「住宅街であんな化け物が出たのに、騒ぎにならないのはそれが原因なのね……」




 悪霊からは逃げ切ることができたが、私は隣にいる執事に尋ねる。




「なんで、悪霊に追われてるんですか?」




 執事はすでに呼吸を整え終えたようで、立ち上がると答え始めた。




「悪霊は性質上、力を持った人間、または多い場所に寄せ付けられます。なぜか、悪霊が存在を保つために必要なエネルギーだからです」




 それを聞いたリエは確認するように聞く。




「じゃあ、あなたは力を持った人間ってことですか?」





「ま、そんなところです。役に立たない貧弱な力ですけどね」









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