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第25話 『恋する相撲でラッパッパ』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第25話

『恋する相撲でラッパッパ』






「お邪魔しまーす」




 青空と緑に包まれた大自然の森。そこにある一軒の家に私達は訪れていた。




「あれ、皆さん、また来たんですか?」




 ジャージを着た金髪の幽霊が私たちを出迎えてくれる。




「久しぶり、夏目さん」




 前に依頼でダンベルの呪いを解除するために、結和村を訪れた時に出会った呪いのダンベルの製作者であり持ち主だ。

 今もこの山奥の家で幽霊ライフを送っている。




「どうしたんですか? 突然」




 夏目さんが不思議そうに尋ねてくる。




 私はそんな夏目さんに家から持ってきた箒を見せる。




「幽霊でも綺麗な家で住みたいでしょ。私達が掃除を手伝いに来たのよ」




「それは嬉しいです。でも、なんで……?」




 疑問を感じている夏目さんだが、それを無視して私とリエと黒猫は家の中へと入っていった。




 夏目さんの家をみんなで協力して掃除をし、床が鏡のように綺麗になった。




「ふぅ〜、掃除おしまい」




「お疲れ様です。皆さん、ありがとうございました。でも、なんで突然お掃除を?」




「…………」




 私と黒猫が顔を合わせて答えないでいると、リエがため息を吐いて答えた。




「実はですね。……楓さんが部活の合宿め宮城に行ったんです。それで羨ましいなぁってことになって……」




 リエの話を聞いて察した夏目さんは青ざめた顔で確認する。




「もしかして掃除してくれたのは。ここにしばらく滞在する気で……ですか?」




 夏目さんの質問に私達は頷いた。




 その時の夏目さんの顔は、口が半開きで目はどこかを向いて、すっごく嫌そうだった。








「レイさん。一階からの景色も結構良いですね〜」




 一階のリビングの大窓からリエは外の景色を見る。緑がいっぱいで事務所では見れない景色だ。




「そうね〜、あそこにある筋トレ道具がなければねぇ」




「勝手に押しかけといて文句言わないでください」




 私達の会話を聞いてリビングで黒猫に足を押さえてもらいながら筋トレをしている夏目さんが怒る。




「ってか、うちはご飯ないので夜ご飯欲しかったら買ってきてくださいね」




「え、ないのぉ」




「幽霊ですもん」






 夏目さんの言う通り、家には食料はなく。私とリエの二人で山を降りた駅前まで買い出しに行くことになった。




「レイさん、早くしないと日が暮れちゃいますよ〜」




「分かってるよー」




 山を降りるのは楽々だったが、荷物を持ちながら山を登るのは辛い。

 私はヘトヘトになりながらも進んでいると、石橋に辿り着く。




 橋の下には川が流れており、上流の方には森に隠れて見えないがダムがあるらしい。




「はぁ、疲れた〜」




 両手にマイバックを持って疲れた私は石橋の手すりに寄りかかる。

 休憩しながらふと、川の下を見てみると緑色の何かが川辺に座っていた。




「レイさーん、早く行きましょうよ〜、日が暮れたら危ないですよ〜」




「ねぇ、リエ。ちょっと来て」




 私はリエを呼びつけて、川の下を見させる。




「あそこに何かいるよね?」




「確かに何かいますね……緑色の…………鳥?……なんでしょうか?」




 私達がよーっく観察していると目線に気づいてか、その生物は顔を上げてこちらをみる。

 緑色の皮膚に鋭い牙を持っていた。その姿を見た私達は思わず声を出す。




「カッパだァー!!!!」




 私たちに見つかったことに気づいた河童は、飛び跳ねて驚くと、急いで川とは反対側の森の方へと逃げていく。




「河童逃げちゃいましたよ。レイさんが大きな声出すから」




「あなたも出してたじゃない。まだ近くにいるかもしれないし、探しに行こ」




 私達は橋を渡りきり、河童のいた川辺に降りて河童を探す。




「河童さーん、出ておいで〜」




「本物なのかもう一度みたいだけなんです。姿を見せてください、食べたりしませんから〜」




 しかし、私達の呼びかけに応えることはなく。河童は出てくる気配はない。




「どうします? 諦めますか?」




「う〜ん、このまま諦めるのもなぁ……あ、そうだ!」




 良い作戦を思いついた私は買い物袋の中からキュウリを取り出した。




「キュウリですか……。あ、河童はキュウリが好きって言いますからね」




「そう! これを使って河童を捕まえるのよ!!」




 キュウリを浜辺の広いところに置き、私達は近くにある岩場に隠れる。




「確かに好きとは言いますが。本当にこれで来るんでしょうか……。明らかに罠じゃないですか」




 心配そうに言うリエ。そう言われると私も自信がなくなってくる。

 しかし、そんな心配は必要なかった。




 川辺のすぐ近くにある林から何者かが歩いてくる足音がする。徐々にその音が近づいてくると、草をかき分けて緑色の生物が姿を現した。




「出た! 出たよリエ!!」




「静かにしてください。また逃げちゃいますよ」




 私達は獲物が餌に食いつくのを待つ。今飛び出してもまた森の中に逃げられてしまう。

 出来るだけ森と川から離れたキュウリの置いてある場所まで近づける。




 匂いを嗅ぎながら警戒する河童。だが、確実にキュウリには近づいている。

 そして……!!




「食らいついた!! 行くよ、リエ!!」




「はい!!」




 河童がキュウリに齧り付くと同時に私達は岩場から飛び出す。

 突如現れた私たちに河童はキュウリを齧りながら驚く。そして逃げようと走り出すが……。




 河童は盛大に転けた。さらに咥えていたキュウリを転けた衝撃で飲み込んでしまい、喉にキュウリが詰まって悶え苦しむ。

 呼吸のできない河童は地面に転がりバタバタと暴れる。




 河童に追いついた私たちはその河童の姿に同情する。

 捕まえようとしていたが、このままだと可哀想だ。




「リエ、手伝って」




「はい」




 リエに河童の体を抑えてもらい、私は河童の口に手を突っ込みキュウリを引っこ抜く。

 スポッとキュウリが抜けると、河童は両手を地面につけて呼吸を整えた。




「けっほけっほ、…………はぁはぁ、助かったァ」




「無事でよかったね」




「いや、あんたらのせいで大変なことになったんだが!!」




 私達のことを睨む河童。しかし、罠に釣られた自分にも落ち度がある自覚があるのか。

 胡座で座り込むと私に手を伸ばしてきた。




「んっ、よこせ」




「なにを?」




「さっきのキュウリだ。食べかけだったろ」




 河童が言っているのはさっき罠に使ったキュウリのことだ。

 私は河童の口から取り出したキュウリを見るが、キュウリは河童の唾液でベトベトだ。それに罠に使った時に砂もついてしまっている。




「このキュウリは流石に汚いし。新しいあげるよ。私達が驚かせちゃったわけだしね」




 私はそう言ってバックの中に手を入れようとするが。そんな私の腕を河童が掴んだ。

 河童のしまった手が私の腕を包む。




「勿体無いだろ。それに俺が悪いんだ。お前達に見つかるような場所にいた俺がな」




「いや、でも罠を張ったのは私達で」




「いやいや、俺が悪いんだ!!」




 遠慮しあって二人の間に火花が散る。そんな私達を見ながらリエが怒った。




「もうそのキュウリともう一つ何かあげれば良いじゃないですか!」








 結局リエの提案通り、キュウリ一本とガム一つで手を打つことになった。




「へぇ〜、お前ら夏目さんのところに泊まってんのか」




「え、あなた知り合いなの?」




「知り合いってわけじゃねーがな。……今の家が建つ前にそこに美人さんが住んでたんだよ。めっちゃ可愛くてな、それにたまぁにお供えものでキュウリを置いてってくれて、めっちゃ良い人だったなぁ」




 思い出に浸る河童。しかし、今の夏目さんの家もかなり古い家だ。その家が建つ前となるといつのことなのだろうか。

 思い出話を終えた河童は立ち上がると、川の方を見る。




「っと、そろそろ行かないとな」




「家に帰るんですか?」




 リエの質問に河童は首を振った。




「その前に仲間に会いに行くんだ。ちょっと厄介なことになっててな。この辺の名前を集めて集会をしてるんだ」




 河童はガムを口に入れて膨らませながら、川辺を進み上流へと歩いていった。

 そんな様子を見て私とリエ。




「集会ですってどうします?」




「なんか楽しそうだし。ついて行ってみましょ!」




 ひっそりとついて行くことにした。







 河童の後ろをついて行き、川の上流へと向かうと、遠くの方にダムが見えてきた。




 ダムが見えてきた頃、川辺の先から声が聞こえてくる。何人かの話し声。





「おう、やっと来たか。カワノスケ」




 河童は先にいる人物達に話しかけられて手を挙げて挨拶した。




「遅れてすまん。問題があってな」




 先にいた集団に合流した河童。私達は草むらに隠れて河童と合流した集団を見てみた。




 河童合流したのは、大量の河童達。全部で十五匹はいるだろう。

 そこには河童の集落が広がっていた。




「問題……か。それってあそこにいる人間達のことか?」




 一匹の河童が私達のことを指差す。気付かれたことに驚いた私達が立ち上がると、私達が尾行していた河童も驚いてむせた。




「ゴッゲホゲホ…………お前ら。なんでここに!?」




「いや〜、もしかしたら珍しいもの見れるかなぁって……」




 尾行されていた河童は溜息を吐く。




「はぁ、そうやって興味本位で……。自業自得だよな…………」




 いつの間にか河童達が私とリエのことを包囲していた。




「見られたからにはただで返すわけにはいかない…………」








 陽が傾き、辺りが暗くなる。私はさらに盛り付けられた焼き魚を箸で掴んで口に運ぶ。




「プッハー!! 上手い!! こんな美味しい魚食べたの初めてだよ」




「このお酒も美味しいですよ〜」




「そういえば、あんた。見た目は子供だけど、100歳超えてるのよね……」




 私達は河童達と火を囲み、提供された料理を食べていた。

 私達が喜んで食べていると、白い皮膚の河童が嬉しそうに微笑みながら新しい料理を持ってきた。




「はい。これも良かったら食べてね」




「頂きます!」




 私とリエは新しく運ばれてきたきゅうりの漬物をがっつく。




「そんなに急がなくても……いっぱいありますから」




 河童達は私達を見つけると、宴を始めた。




 最初は捕まって食われるのかと思ったが、河童達はそんなことはしないらしい。

 人に見つかったら歓迎して盛り上げる。そして美味しいご飯で口止め的な役割をするらしい。




 無精髭を生やしたおっさん河童が私達に近づくと話しかけてくる。




「お前ら都会の方から来たって言ってたよな。なら、ヒョウスベって知ってるか? 前にここにスコーピオンって怪人がやってきてな。ヒョウスベをスカウトしてったんだよ」




 どこかで聞いたことある名前が来た。しかし、私は思い出せずに困っていると、ほろ酔いのリエが答える。




「ヒョウスベさんは知りませんが、スコーピオンさんなら前に会いましたよ」




「おおぉっ! そうか。ヒョウスベも良い怪人ライフを送れてると良いんだがなッ!!」




 おっさん河童が大笑いする中。私達が最初に出会った河童のカワノスケが戻ってきた。




「夏目さん家の前に荷物と手紙を置いてたぞ」




「ご苦労さま〜」




 河童達に夕飯を食べさせてもらうことになったため、カワノスケには買い物の荷物とタカヒロさん達に遅れることを伝える手紙を持ってってもらっていた。




「はぁ、疲れた……。水もらうぞ」




 山を登って疲れたのか。カワノスケは近くにあるコップを手に取り水を飲む。

 しかし、水を飲むカワノスケの様子を見た白い河童が




「それ……私の飲みかけよ……」




 恥ずかしそうに伝えた。カワノスケはそれを聞くと、しばらく固まり、水を勢いよく噴き出した。




「ご、ごごごごっ!? ごめん!! 今入れ直すから!!」




 カワノスケは顔を赤くして水を注ぎ直す。そして手を震わせながら元あった場所にコップを置いた。しかし、置いてすぐに、




「あっあぁぁぁあっ!! 今、俺が飲んだコップじゃ嫌だよな。今取り替えるから!!」




 そう言って注ぎ直した水を一気飲みする。しかし、勢いよく飲んだせいか、咽せてしまった。




「ゲホケホケホッ!」




「相変わらず。ダメダメだなぁ。カワノスケ……」




 カワノスケが咽せていると、そんなカワノスケを嘲笑うように筋肉モリモリの河童が現れた。




「カワマルか……」




 カワマルと呼ばれた河童は、カワノスケの三倍近い体格をしていて、身長も二メートル近い。




 カワマルはカワノスケのことを見下ろすと、




「スイコは俺が貰う。忘れてないよな。カワノスケ」




 カワノスケは拳を強く握りしめると、カワマルを睨み返した。




「渡すもんか……」




 睨み返されたカワマルは大きく口を開けて笑うと、




「まぁせいぜい頑張れよ……」




 そう言ってカワノスケから離れて別の河童達の元へと行った。

 カワマルが離れると白い河童が心配そうにカワノスケに寄り添う。




「ごめんね……私のせいで…………」




「良いんだ。それに……俺が勝たないとスイコ……君が……」




 見つめ合う二人。そんな二人を不思議そうにリエが首を傾けた。




「何かあったんですか? 貰うとか、勝つとかって……」




 カワノスケはゆっくりと口を開く。




「つい先日、この周辺の河童をまとめ上げている族長が亡くなったんだ。それで次の族長を決めることになった」




 カワノスケが語る中。何人かの河童が川辺に丸い円を描く。そして円の外側に油を引き始める。




 私とリエの目線はそっちに行くが、耳を傾けてカワノスケの話を聞く。




「族長になれるのは最も強いオス。そして族長は族長の娘と結婚することになる」




 スイコが下を向く中、カワノスケは立ち上がると、河童達の用意した円の方を向く。




「今日が最終決戦……。そこで待っててくれ、スイコ……」




 カワノスケは円に向かって歩き出した。その背中はキュウリを喉に詰まらせていた間抜けな河童の背中ではない。守るもののある背中だ。




「カワマル!! 勝負だ!!」




 カワノスケが円の前に着くと、円の反対側にカワマルも立つ。




「今までお前が勝てたのは偶然。だから今回負けるのは必然だ。ねじ伏せてやる」




 カワマルは肩をコキコキ鳴らしながら円の中に入った。カワノスケもカワマルの真似をして肩を鳴らして入ろうとするが、




「……あっ、いったッ!!」




 勢い余って肩が外れてしまった。そんなカワノスケを見るに堪えないのか、スイコは手で顔を覆って見ないようにする。




「ちょ、ちょっと待って。肩外れたんだけど。このままやるの、ねぇ、嘘だよね、嘘って言ってくれよ!」




 しかし、円を囲んでいる審判の河童達はカワノスケの事態に気づいていないのか。円の外側に巻いた油に火を付けた。

 火は一気に燃え上がり、二匹の河童を囲む。




「待って、待てって!! 俺の肩を見ろ!!」




 抗議をするカワノスケ。しかし、そんなカワノスケの声は聞こえず、試合が開始される。

 カワマルはカワノスケの負傷に気付かずに張り手を仕掛けてきた。




 カワノスケは外れた肩を庇いながら逃げる。背を向けて逃げるカワノスケの姿を見て、観客の河童達は嘲笑う。




「おーい、真面目に戦えよ〜」




「お前の兄貴は都会で立派に戦ってるんだぞ。お前も立派に戦え〜」




 カワノスケはそんな観客の声を聞きながらも、背を向けて逃げ続ける。




 私達も逃げるカワノスケの姿を見て、さっきまでの有志のない姿に呆れる。

 しかし、スイコは手を隠すのをやめると、カワノスケの姿を見届けていた。

 そしてゆっくりと語り始める。




「カワノスケは強い子です。誰も気づいてないですがヒョウスベよりも立派な戦士ですよ」




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