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第24話 『夏祭りに行こう!』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第24話

『夏祭りに行こう!』





「あ、リエ。そこにある煎餅とって」




「えー、自分で取ってくださいよ〜」




「だってあんたのほうが近いじゃん」




 椅子に座ってテレビを見ている私はリエに頼む。リエはソファーから近くのテーブルに置いてある煎餅の袋を私に向かって投げつけた。




 私はキャッチしようとするが、キャッチし損ねて顔面にストライクしてしまった。




「あ、ごめんなさい」




「いや、私も取ってもらったんだし……。ありがとね」




 私はリエが取ってくれた煎餅の袋を顔から剥がして手に持つ。そして、




「とでもいうと思ったか!! 仕返しだ!!」




 私は全力で煎餅の袋をリエに向かって投げつけた。投げ返されると思ってなかったリエは反応する事ができずに、顔面にぶつかる。




「…………よくもやりましたね!!」




 リエが投げ返してくる。私はキャッチして投げ返し、それを繰り返していると、黒猫が怒鳴った。




「食べ物で遊ぶんじゃない!!」




「「ごめんなさい」」




 黒猫に怒られた私達はシュンとなり、私は煎餅を持ってソファーに行ってリエの隣に座った。

 そして一緒に煎餅を食べながらテレビを静かにテレビを見る。




「チャンネル変えて良いですか?」




「うん」




 リエにリモコンを渡そうとするが、リエはリモコンを使わずに手をテレビにかざしてチャンネルを変更する。




「あんた便利ね〜」




「幽霊っぽいですよね。最近できるの知りました」




 と、そうやってチャンネルを変更していると、ある場ものが映る。




「あ、リエ、戻して戻して!」




「え、ここですか?」




「そうそう、そこよ」




 そこに映っていたのはこの事務所から少し離れた場所に新しく建設されている建物の映像。高く聳え立つビル。映像ではまだCGの段階だが、しかし、ビルの窓からも建物は見える。




 すでに遥か上空まで伸びて雲の高さを超えている。なんのために開発されているビルなのかは分からない。

 テレビ内でもビルの安全性や機能については報道されていたが、その詳しい用途にまでは報道されていなかった。




「これって窓から見えるアレですよね」




 リエもビルの存在には気づいていたみたいで興味ありげに聞いてくる。




「屋敷に住んでた時から建設は始まったみたいですけど。アレなんなんでしょうね?」




「んー、私も気になったから見たんだけど。テレビでも何も言ってなかったからね。本当にあれ、なんなんだろう……」




 結局テレビでは詳しいことを知ることはできず、そのままチャンネルを変えて別の番組を見る。

 そうして夕方ごろ。




「ただいま帰還いたしまくりましたーー!!!!」




 勢いよく扉を開けて楓ちゃんがやってきた。




「あれ、楓ちゃん。今日部活は?」




 私はソファーに座ったまま、首を後ろに倒す。楓ちゃんの姿が逆さだ。




「今日部活お休みって言ってなかったでしたっけ?」




「レイさん、昨日楓さん言ってましたよー、忘れちゃったんですか?」




 私は忘れているが、リエは覚えてる様子だ。いや、まだ一人いる。




「タカヒロさん!」




「言ってたぞ」




 本当に私が忘れていた様だ。




 楓ちゃんも帰ってきて、これからが仕事の本番。かと思ったが、いつも通り依頼人がくることはなく。

 長閑な時間が流れていく。そんな中、外から太鼓の音が聞こえてきた。




「何か聞こえますね……」




「そうね。何かやってるのかな?」




 私とリエが音を気にしていると、楓ちゃんが思い出した。




「あ、そうだった。今日は夏祭りの日ですよ!」




「あー、そんなことが掲示板に書いてあったような、なかったような……」




 私が思い出せずにいると、黒猫が追い打ちをかける。




「俺は書いてあったの見たぞ」




 夏祭りと聞き、リエは興味津々になりどんなものだが、楓ちゃんに教えてもらう。

 楓ちゃんがリエに説明してる間、私は事務所の窓から公園の方を見てみると、公園に人が集まり始めていた。




「いつものことだけど。ショボいよね」




 地域で開かれているお祭りで、小さな公園に盆踊り用のセットと屋台がちょろっと出る程度。

 大きなお祭りでもなく、地域の小さなお祭りだ。




 窓の近くにいると黒猫と窓際にジャンプしてやって来る。




「ここの祭りなんてそんなもんだろ」




「あんたもあそこの祭り行ったことあるの?」




「まぁな。たまにだけどな」




「あんた『ミーちゃんが寂しがるから』とか言って、祭りとか行かないと思ってた」




「そういう時はお見上げ話を持って帰ってやるんだよ」




 私と黒猫が窓から外の様子を見ていると、楓ちゃんから説明を受け終えたリエが私の元に駆け寄って来る。




「レイさん、レイさん!! 私お祭り行きたいです!!」




「なんとなくそういう流れになる気はしてたよ……。ま、依頼もないし、みんなで行きましょうか!!」







 依頼もなく暇なため、みんなでお祭りに行くことになったのだが。制服で出歩いていると先生に怒られるからと、楓ちゃんは洗面所で着替える。




「部活ないのに着替え持ってきてたのね」




 私は扉の前に立ち、楓ちゃんに話しかけると扉の向こう側から返ってくる。




「なんとなくお祭りに行く流れになりそうな気がしたので」




「用意周到ね……」




 準備が良すぎる楓ちゃんにちょっと退く。




 楓ちゃんとの話が終わると窓閉めや火の消し忘れを確認し終えたリエと黒猫が玄関にやってきた。




「レイ大佐、安全確認終わりました!!」




「ご苦労リエ中尉!!」




 二人で敬礼をしてふざけ合う。そのあとリエが私の服装を見て、




「レイさんは着替えなくて良いんですか?」




「私はこの服装が涼しいから良いや。お気に入りの服着て汚れたら嫌だし。リエは良いの? いつもの格好だけど」




 リエは普段通りの白い着物だ。




「私はこの服しか持ってないですから」




 そういえば、いつもそうだった。




「今度私の実家にお古探してみるね……」




 そんな話をしていると、楓ちゃんが着替え終えて洗面所の扉が開く。




「お待たせしましたーー!!!!」




 出てきた楓ちゃんは紅色に牡丹模様の浴衣を着こなしていた。

 その美しさは絶世の美であり、そこに天女が舞い降りたかの輝きを放っていた。




 楓ちゃんは浴衣を広げて全体を見せるために身体を回転させる。




「どうですか、師匠〜、似合ってますか〜!!」




 タカヒロさんは目を逸らして答える。




「あ、ああ、似合ってるんじゃ……ないか」




 タカヒロさんの言葉を聞き、楓ちゃんは嬉しそうにジャンプする。




「リエちゃんはどう思う? 似合ってるかな?」




「似合ってますよ。……あ、でも、うまく着れてないじゃないですか。ここ間違ってますよ、言ってくれたら直したのに、ほら、こっちに来てください」




「え、ここ?」




 リエに着付けをしてもらっている間に、私は黒猫に顔を近づけ、ヒソヒソと話す。




「どういうことよ、またあんたが着させたの?」




「俺じゃねーよ。というか、なんで毎回俺のせいにするんだよ」




「あんた、前歴あるからよ」




「…………」




 私達が会話をしていると、




「終わりましたよ!」




 リエが楓ちゃんの服を直し終えた。




「まぁ、準備できたんなら行きましょうか」








 事務所にしっかりと鍵をかけて出発する。目指すはお祭りの行われている公園だ。




「リエちゃん、見ててねこれ、これをこうやってこうやって、こうやると…………あれ、おかしいな」




「……それってもしかしてですけど。……こうやってこうですか?」




「あ、それよそれ!」




 私の後ろでリエと楓ちゃんが夕焼け影を使って、指でキツネを作ったりして遊んでいる。




 そして黒猫は




「なんでまた私の上なのよ……」




「意外と落ち着くんだよな。それに見晴らしいいし」




「意外とって何よ、意外とって……」




 私の頭の上で座っていた。黒猫はお辞儀をする様に身体を曲げて、私の視界の中に顔を入れる。




「それに黒猫が懐いてるって、魔女みたいでカッコいいだろ」




「私は魔女じゃないし、頭に乗ってる時点でカッコ良くないのよ」




 とそんな話をしながら歩いていると、少しずつ道を歩く人の人数が増えて来る。そして例のお祭りを行なっている公園に着いた。




 公園にはちょっとした屋台が並び、中央には櫓が設置されている。公園には櫓を囲み踊る人々や、屋台で買い物をする人、遊具をテーブルや椅子代わりにして屋台で買ったものを食べている人達がいた。




「これがお祭りですかー!!」




 リエは幽霊であるため見えないのを良いことに、空に飛び上がると上から祭りの様子を見下ろす。




「せっかく来たんだし、なんかやっていきましょうか」




 私はみんなを引き連れて屋台の方へと向かう。




「どうする?」




 私がみんなに聞くとリエは赤い屋根の屋台を指差す。




「さっき飛んだ時にボールを取ってました! あれやりたいです!!」




「ボール? あ、スーパーボールね!」




 私達はスーパーボール救いのある屋台へと向かう。




「でも、リエ。あなたはできないけど良いの?」




 リエは幽霊だ。リエと関係のあるもの以外には触れることはできない。私や霊力を持つ人を通せば、触れることもできる様になるが、屋台でスーパーボールが浮いていたら騒ぎになる。




 しかし、リエは自信満々に答える。




「大丈夫です。私もできますよ」




「……?」




 どこからそんな自信が湧いてきているのか、不思議に思いながらも屋台に着くと、




「ん、お前らは……」




 そこにはスキンヘッドの男と京子ちゃんが働いていた。




「なんであなた達が……」




「俺たちはバイトだよ。…………本当はコトミちゃんに頼むつもりだったけど、風邪ひいちゃって、そしたらゴリラが来た」




 スキンヘッドの男が文句を言うと、京子ちゃんがスキンヘッドの男の首に腕を通して、ヘッドロックを喰らわせる。




「コトミに頼まれたから来てやったんのに、その言い方はなんだ。あんた一人でも良いんだぞ」




「あねざん……ぐるじぃ〜…………」




 京子ちゃんは首を絞めながら




「っんで、霊宮寺さん達はやってくのか?」




「やりたいです!!」




 すぐに答えるリエ。まぁ、人が密集してるからリエの声もそこまで目立つことはなく、問題はなかった。




「幽霊の嬢ちゃんか……。そうだな、そこの端なら目立たないから、そこでやりな」




 京子ちゃんに屋台の端を勧められて、端に移動する。

 水槽の前でしゃがむと、スキンヘッドを倒し終えた京子ちゃんがポイを四つ渡して来る。




「四人で1200円ね」




「高いな〜」




「こっちも商売だから」




 仕方なく財布からお金を出して京子ちゃんと交換する。それぞれポイを手にした。




「てか、タカヒロさん、あんたもやるの!?」




「咥えれば問題ない」




「咥えれば問題ないって……。あんた猫なのよ」




「俺を誰だと思ってる。スーパーボール掬いのタカちゃんだぞ。俺の技術にミーちゃんの身体能力が加われば、例え咥えてであっても、余裕で二十個以上取ってやるさ!!」




 童心に帰ったからか、タカヒロさんのテンションがいつもよりも高い。

 猫のこと以外は興味なさそうなタカヒロさんがここまで盛り上がっているのはヒーロー関係の時以来だ。




 私と楓ちゃんでリエと黒猫を隠しながらスーパーボール救いを始める。




 中を流れるスーパーボールは三種類。

 親指程度の大きさで取りやすそうな小スーパーボール。そのスーパーボールよりもひと回り大きめの中スーパーボール。そして手のひらサイズの特大スーパーボールだ。




「リエ、まずは私がやってるところを見せるから。それからやるのよ」




「はい!」




 私はリエに見本を見せるために小スーパーボールを救ってみせる。一つ目は問題なく救うことができた。




「そうやって掬うんですね! やってみます!!」




 リエは私のやった姿を見てそれを参考に掬ってみることにする。しかし、




「あ、リエ。それは大きすぎる」




 リエは特大スーパーボールを狙ってしまい、すぐに紙が破けてしまった。




「あ〜〜〜〜」




「大きいのを狙うからよ。こういうのは小さいのを狙ってね」




 私はもう一度小スーパーボールを狙う。しかし、一回目で弱ってしまっていた紙は、スーパーボールを持ち上げると破れてしまった。




「あ……」




「レイさんもダメじゃないですか〜!」




「一個も取れてないあんたに比べればマシよ」




「私は大物を狙いましたからね。レイさんは小物を狙ったのに失敗したんですよ」




 私とリエが睨み合う中。楓ちゃんは目を瞑り、集中をしていた。




「……………………」




 呼吸を整えて全神経を網に注ぐ。目で追うのではなく、感覚でスーパーボールを追跡する。




「ここだァ!」




 楓ちゃんが勢いよく腕を振る。水が波を起こし、水しぶきが正面にいたスキンヘッドの男に降り注がれる。




「……っく、無念……」




 しかし、楓ちゃんはスーパーボールを一個も救うことはできず。水をかき上げただけで終わった。




「ドンマイだな」




「……あ、すみません」




「いや、良いってことよ……」




 ビショビショになったスキンヘッドの男は楓ちゃんをガン見しながら答えた。

 なぜ、接客しているはずなのに楓ちゃんの前にいたのかは謎だ。




「すぐに乾かさないと……」




 楓ちゃんはハンカチを取り出してスキンヘッドの男を拭こうとする。

 しかし、スキンヘッドの男は頬を少し拭いてもらうと顔を赤らめてそっぽを向く。




「そんなことしなくて良い」




「いえ、僕のせいなので」




 照れるスキンヘッドを無理やり拭く楓ちゃん。二人のそんなやりとりを見守り、




「残るはタカヒロさんだけか……」




 最後に残ったタカヒロさんを見るために、私とリエは黒猫のいたところを見る。

 しかし、黒猫はポイを水槽の中に捨てて、地面で丸くなって寝ていた。




「あ、ミーちゃんになっちゃってますね」




 やる気満々だったのに、ドンマイタカヒロさん。




 私は黒猫を抱き抱える。リエは私に抱えられた黒猫の頭を撫でながら、




「レイさん。今度タカヒロさんにもこれやらせてあげましょ。ちょっと可哀想です」




「そうね、あれだけ張り切って。寝ちゃって終わりは可哀想ね……」




 リエの言う通り、今度私が取ったスーパーボールを鍋に浮かべて事務所でタカヒロさんにやらせてあげよ。




 私とリエは立ち上がると、




「楓ちゃん、私達は他の所行くけどあなたはどうする?」




「師匠は寝ちゃったんですね。じゃあ、僕がミーちゃんを預かりますよ」




 しばらく京子ちゃん達の屋台の近くにいることにした楓ちゃんに黒猫を預けて、私達は他の屋台を探す。




「次はどうしましょうか……」




 リエがどこに行こうか迷っている中、私はある屋台を発見する。




「リエ、あそこに行かない?」




「えっと……射的ですか? どういうやつなんですか?」




「銃で撃って欲しい景品を落としたらそれを貰えるってゲームよ」




「おおーー!! 面白そうです! 行きましょう!!」




 リエと共に私は射的屋に行く。屋台のおっちゃんに500円玉を渡して、六発の弾と射的用の銃を渡された。




「なんだか武本さんとかうまそうですね」




「どうだろう、でも、武本さんが火縄銃を使ったことがあったとしても、絶対に私は負けない自信があるのよ。見てなさい」




 私は銃を構えて景品に狙いを定める。火薬の音と共にコルクが飛んでいき、景品を直撃する。

 景品はバランスを崩すと、地面に落ちた。




 店員のおっちゃんは無言で落ちた景品を拾い、私にクマの人形を渡した。




「どーもー」




 笑顔で返す私におっちゃんは苦笑いで返す。




「レイちゃん。今年は程々で頼むよ……」




「えぇ、程々にね……」




 私の笑顔におっちゃんは「はははは〜」と感情のない笑いをしながら後ろへ下がる。




 私はそこの浅い箱に入れられたコルクを全て取ると、それを自身の真上に投げ上げる。

 空中を舞う五つのコルク。全てのコルクの高さバラバラで落下してくる位置も違う。




 私は銃口を上に向け、落下してくるコルクを銃口に嵌めると即座に景品を撃ち抜き、そしてまた銃口を上に上げてコルクを銃口に嵌める。




 落下してくるコルクよりも早く。的確に景品を撃ち抜き、欲しい全ての景品を撃ち落とした。

 そして最後の弾丸はまずラムネの入ったお菓子の箱を落とし、箱に当たり跳ね返ったコルクをお菓子の隣にあった味違いのお菓子に当て、一つの弾で二つの景品を落とした。




「よっしゃぁー!!!!」




 ガッツポーズをする私におっちゃんは渋々景品を全て渡した。




「リエ、見た? すごいでしょ!」




 私は手に入れた景品を抱きしめてリエに見せようと振り向くが、




「あ、見てませんでした」




 中央にある櫓の太鼓に気を取られて見ていなかった。








 大量の景品を抱えて、私とリエは楓ちゃん達のいるスーパーボール掬いの屋台に戻る。

 すると、屋台の裏で楓ちゃんと黒猫がたこ焼きを食べていた。




「ふーふーふー、はい、師匠〜」




「冷ましたから良いってわけじゃない。ミーちゃんに変なもの食わせようとするなよ」




「変なものじゃないですよ。たこ焼きですよ」




 私達は二人の元へと向かう。




「タカヒロさん、楓さん。戻りましたよ」




「あ、リエちゃんと、レイ……さん? レイさんなんでそんなに景品持って落ち込んでるんですか?」




 大量の景品を手にしながらも下を向いて落ち込んでいる渡しに楓ちゃんは気づく。




「いやね、リエが……。これ取ったの見てなくて…………」




 私が何があったのかを淡々と話し始めると、楓ちゃんはたこ焼きを黒猫の頭の上に置き、私の元へと駆け寄ってくる。

 そして私の言葉を聞いてか、聞かずか私の景品を受け取って大喜びする。




「レイさん、凄いですね!! こんなにいっぱいの景品取れるなんて! 僕じゃできませんよ!」




 凄い喜んでいる楓ちゃん。そんな楓ちゃんの笑顔を見ていたら、なんだか寂しかった気持ちも晴れてきた。




「そうよね! リエに見てもらえなかったからって落ち込んでたけど、普通はこうなるよね!」




 楓ちゃんのおかげで元気を取り戻した私。

 二人が食べていたことを思い出して、何か食べようと考える。




「ねぇ、リエ。私達は焼きそばでも食べる?」




 私がリエの方を向くと、黒猫は頭に乗ったたこ焼きを落とさないように頑張ってバランスを取り、オットセイのようになっており、それを見てリエが拍手していた。




「おーーっ!」




「おい、リエもレイも拍手してないで早く助けろ!」









 その後も小さなお祭りを満喫して私達は帰路についた。




「……いや〜、面白かったです。ありがとうございました!」




「感謝するのは良いことよ。でも、私の肩の上ではやめてね」




 私の肩の上でかき氷を食べながらリエは座っている。




「そうだぞ。リエ、礼を言うときはしっかり目を見て言わないとな」




「タカヒロさん。あなたも頭から降りて真っ当なことを言ってください」




 黒猫は私のの頭の上で寛いでいる。大人しくされるがままでいたが、人通りも少なくなったので2人を降ろそうと私は暴れる。

 しかし、二人は私が掴もうとすると、うまく躱して逃げてしまう。




「ちょっと二人とも!?」




「待ってください、後ちょっとで食べ終わりますから…………あっ」




 私の頭の上に冷たいものが落ちてくる。




「りぃ〜〜えぇ〜〜っ!!」




「わざとじゃないんですよ……でも謝っておりますね。ごめんなさい」




「降りろ!! コラァ!!」




 私とリエが鬼ごっこをし始めると、もう事務所の前だった。先頭を歩いていた楓ちゃんが私達を止めに入る。




「二人ともやめてください。もうエレベーター来ますよ。事務所に帰ったらお風呂沸かしますからね。落ち着いてください。レイさん」







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