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霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?  作者: ピラフドリア


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第23話 『魔女』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第23話

『魔女』







 都会にある屋敷。そこに住んでいた漫画家が引っ越して一年。







「はぁはぁはぁ、しつこいですね……」




 白い着物を着た女性が屋敷の中を飛ぶ。広い廊下を滑走する。

 目の前に分かれ道。直角の通路だ。幽霊は速度を落とさずに、九十度のカーブを綺麗に曲がり切る。




 だが、彼女の後ろを追っていた存在は、曲がり切ることができずに壁を半分すり抜けた。

 カーブを曲がった幽霊が振り向くと、その存在は壁に埋まった身体を抜く。




 身体の九割が口で出来た幽霊。どういう状況でこんな幽霊になったのか。だが、不気味な見た目と相応に、屋敷に侵入してきた怪物は幽霊の女性に襲いかかってきた。




 怪物はヨダレを垂らしながら、女性の幽霊に近づく。ぽたり……ぽたりと滴る液体は床を濡らす。




「ち、近づかないでください!!」




 逃げ続けていたが、体力も気力も限界。それにこんなに恐ろしい怪物を見るのは初めてで、恐怖のあまり身体が震えて動けなくなってしまった。




 近づく怪物。もしこの怪物に捕まったらどうなってしまうのか。それを彼女は何となく理解できていた。




 女性の幽霊は両手を前に突き出すと、半透明の球体を作り出し、自身の身体を覆った。

 球体を守られている状態だが、怪物はその球体を指で突くだけで消し去ってしまった。




 怪物が触れた途端。風船が割れるように消える球体。自身を守る手段を失った幽霊は絶望し、諦めかけた時。




「よっこらしょ!!」




 口の怪物は窓から飛び込んできた女性の蹴りにより、吹き飛ばされた。

 怪物は廊下を転がり幽霊から離れる。




「よっ、なかなかの美人さんの幽霊だな」




 窓から侵入してきた女性は、黒髪短髪に紺色のフード付きのローブに仮面を腰につけていた。




「うぐっ、ぐっぐむっぐ…………」




 蹴り飛ばされた怪物が動き出す。




「あー、これはめんどくさそーだなー」




 女性は幽霊の女性に手を伸ばす。




「立てるか?」




 幽霊の女性はその手を握ろうと手を伸ばしたが、どうせすり抜けると掴むのをやめて、自力で立ち上がった。




「よ〜し、動けるみたいだしな……」




 女性は腕を回転させたり、足を伸ばしたりとストレッチをする。これからあの怪物と戦うつもりなのか。

 そう期待していた幽霊だったが。女性は幽霊に行動を告げる。




「逃げるぞ」




「え!?」




 女性は全力で怪物から逃げた。








 逃げ切った二人は屋敷のピアノのある部屋で息を切らして壁に寄りかかっていた。




「はぁはぁ、逃げるなら紛らわしい動きしないでくださいよ」




 文句を伝える幽霊、しかし、そんな文句を聞いて女性は笑って返す。




「あの怪物、なかなかやばいぞ。悪霊になりかけてたし……。ありゃー逃げた方が良いんだよ」




「悪霊ですか……?」




 不思議そうな顔をする幽霊。ちょっと驚いた顔をした後、女性は爆笑する。




「お前何年幽霊やってんだよ。悪霊を知らないのか」




 腹を抱えて笑う女性に頬を膨らませる幽霊。




「あーすまんすまん。そうだなー、悪霊について教える前にお前の名前を教えてくれないか?」




「私の名前ですか。私はリエと言います。あなたは?」




「私か? 私は名乗るほどの者じゃないからな」




 女性はピアノの上に腰をかけて、リエは近くにあった木製の椅子に座る。




「あなたここの地縛霊ってところかしら。なら悪霊について知らなくても当然だよな」




 女性はリエに説明を始める。




「悪霊は目的を無くした幽霊の姿。もしも目的を無くせば、意思をなくして霊力の塊となり、霊力を持つ存在を襲う。それが悪霊だ」




「幽霊が目的を無くすと……もしかして私も」




 リエは透ける自分の両手を見る。幽霊になって何百年。未だに彼女には目的がない。

 なぜ、自分が幽霊になったのか、何がしたくてここに残っているのか、それを理解することはできなかった。




「確かに幽霊の未来の姿が悪霊。リエ、あなたもいつなってもおかしくない。でも、それは目的を見失った時、あなたの夢が終わった時だ」




 話を聞き終えたリエの心は少し落ち込む。今は大丈夫でもいつかはあんな怪物になる。そう考えると怖くなってしまう。




「夢が終わった時ですか……。あ、えっとあなたは何をしにここに来たんですか?」




 女性はピアノの上で足を組む。顎に手を当てて少し考えると




「そうだな。……旅人。私は旅人だ」




「旅人…………じゃあ、色んなところに行ったことがあるんですか!!」




 女性の言葉に目を輝かせるリエ。女性は頷くと




「ええ、世界中をな。話を聞くか?」




「はい!!」




 それから時計の長い針が半分回る時間、リエは女性の話に夢中になった。

 聞いたことのない場所、見たことのない景色、会ったことのない人。話を聞いてそれらを想像する。




「まぁ、今話したのは私が体験した一割にも満たないがな……」




「面白かったです」




 話を聞き終えたリエはワクワクで身体が震えていた。




「私もいつか……」




 リエが何かを言おうとした時。女性は険しい表情になり立ち上がった。

 そしてリエに静かにするように伝えると、扉の方へと向かう。




「諦めて帰ったと思ったんだがな〜。しつこいやつだ」




 扉に耳を当てると呟いた。




「悪霊……ですか」




「ああ、まだ居たみたいだ」




 女性は手でリエに部屋の奥に行くように指示をする。リエはそれに従い、ピアノの反対側に身を潜めた。




 歯を噛み合わせる音がゆっくりと近づいてくる。部屋の目の前まで音がやってくると、




「止まった……」




 部屋の前で音が止んだ。静かな時間が流れる。


 もういなくなったのかと、リエがピアノの奥から出てこようとした時。




「まだ隠れてて!!」




 女性がローブの中に手を突っ込むと、胸の辺りから銃を取り出した。

 そして木製の扉に向けて発砲する。




 銃声が響く中、リエは頭を抱えて姿勢を低く隠れる。




 扉の向こう側にいる怪物は銃弾を喰らいながらも扉に突進して破壊して侵入してくる。

 しかし、部屋の中に入るが怪物の前には銃を撃った人物の姿はない。




 怪物が左右を向き、その人物を探していると頭上から声がする。




「こっちだよ。ノロマ」




 天井の照明に張り付いていた女性は降りながら怪物に踏みつける様に蹴る。

 怪物は押し潰されて地面に叩きつけられた。




 女性は踏みつけたまま、怪物に銃口を向け怪物の急所を二発で的確に撃ち抜いた。

 怪物は掠れた声を叫びながら黒い湯気となり姿を消した。




「消滅したか。この程度じゃまだ成り立てってところか」




 怪物が消滅してリエは女性の元へと駆け寄っていく。




「凄いあの悪霊を倒すなんて」




「このくらいの奴なら私でもどうにかできる。まぁ、あれを作れるんならもっと楽だったんだが、ここじゃ狭いしな」




 喜ぶリエだが、女性は当然のことの様に振る舞う。そして銃をローブの中にしまった。




「悪霊も退治したし、私はそろそろ行こうかな」




「え、もう行っちゃうんですか……?」




「あなたが追われてるを見かけて、ちょっときただけだしな。それに私にはやる事がある」




「そうですか……」




 立ち去ろうとする女性を寂しそうに見つめるリエ。そんなリエに女性は微笑みかける。




「寂しがるな。お前もいつか会えるさ…………」




 女性はリエに見送られながら、屋敷から出ていった。







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