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第21話 『悪を絶つ者』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第21話

『悪を絶つ者』






「はぁ〜、結局見つからずかー」




 浜辺での騒ぎから数日。逃げた悪霊の行方を追って、何度か浜辺に通って捜索を続けたが見つかることはなかった。




 あのまま消滅したか。それともどこかに逃げてしまったのか。

 だが、手がかりがないため、これ以上追うことができない。




 今朝、相談して捜索をうち止めることにした。




 私は台所でお湯を入れて三分経過したカップ麺を手に取る。




「消滅したことを願うしかないですね。…………っと、レイさん、それ私にもちょっとください」




 台所までリエがやってきたが、どうやら私と昼ごはんを狙ってきたらしい。




「あんた、自分で作りなさいよ」




「え〜、そんなにお腹空いてないんですもん」




 そんな会話していると、テレビを見ていた黒猫が私達を呼ぶ。




「レイ!! おいテレビ見ろ!! この前のやつやってるぞ!!」




 私はカップ麺を持ってリビングに戻ると、ソファーに座って黒猫がテレビを見ている。

 テレビを見ると、そこにはこの前の浜辺が映っていた。




『ビーチで起きた船転覆による被害、その影響でビーチにまで被害が出ましたが、死傷者は出ませんでした』




 私は椅子に座るとテレビの報道での疑問を黒猫に投げかける。




「船転覆? 悪霊の仕業でしょ、どうしてそんな報道に?」




「さぁな。だが、あの悪霊は普通の人にも見えてた筈だ。なのに当事者までそのことを忘れてるんだ。まるで記憶を改竄されたかのようにな」




「記憶を……?」




 報道に疑問を感じる中、私の反対の席に座ったリエが、目を輝かせてカップ麺を見ている。

 私はホークで麺を掬うと息を吹きかけて冷ましてからリエに食べさせた。




「でも、私達は覚えてるよ。それに京子ちゃん達も覚えてた」




 あの事件の翌日、近くのコンビニに立ち寄った時に京子ちゃんとばったり会った。

 その時は京子ちゃんは悪霊のことを覚えている様子だった。




「そこが分からないんだ。なぜ、俺たちは悪霊のことを覚えてて、他の奴らは覚えてない……。悪霊の仕業か知らないが、気持ちが悪い」




「そうね。記憶がおかしいのも気になるけど、騒ぎになってないのも不思議よ……」




 黒猫と話しながらリエに食べさせていると、気づいたら麺が掬えないことに気づく。

 嫌な予感がしてカップ麺の中を見ると、もうほとんど麺が残っていなかった。




「リエ〜!! 全部食ったでしょ!!」




「意外と食べられるものなんですね」




 満足そうに口を動かすリエ。私は空っぽのカップ麺に肩を落とす。




「もう一回沸かし直さないと……」














 そんな平和な時間を過ごすレイ達と変わり、北方にある軍事基地。そこでは騒ぎが起きていた。




「侵入者……? 何者だ」




 基地の最新部にいる男性が部下に尋ねると、部下は下を向いて答える。




「……それが、まだ…………」




 部下の報告を聞いて男性は部下に近づく。上司に近づかれ、部下は身体を震わせる。そんな部下の肩を軽く叩く。




「情報が掴めないということはそれだけ敵は上手ということだ。我々の力が通じないのなら、こちらも奥の手を出すとしよう」




「奥の手と言いますと……。彼をですか?」




 男性はソファーで刀を磨いている和服の男に目線を向けた。




「契約期間は残っていたよな。暴れてもらうぞ」




 刀を磨いていた男は立ち上がると、刀を鞘にしまって無言で部屋を出た。




 男は傭兵。本名を忘れ、戦うことだけが自身の存在の証明であった。




 全ての始まりはあの戦争だ。血の雨の降るジャングルでの争い。

 何百人もの死屍を乗り越え、最後まで立っていたのは一人だけだ。




 その時交わした約束。友であり敵であった彼の目的を達するため。




 軍の施設には真っ黒なオーラを放つ鉄屑が保管されている。保管庫を通り、先に進むと軍用ヘリを収納する倉庫へとたどり着く。




 雇い主が侵入者の報告を受けていた一度は反対側の場所。しかし、そこに現れる。その確認があった傭兵は、一直線にここへとやってきた。




 傭兵の向かい側にあるヘリを出し入れするための入り口が少しだけ開く。

 外からの灯りが中に入り込み、覆面の男が中に入ってきた。




 覆面の男は中に入ると、すぐに傭兵の存在に気づく。




「お前……。ここの兵じゃないな」




 傭兵は刀を抜いて鞘を投げ捨てる。そして覆面の男に刃を向けた。




「俺は傭兵。お前は悪か? それとも正義か?」




 刃を向けられた覆面は胸元から拳銃を取り出した。

 覆面は答えることなく、無言で銃に弾を込める。




 傭兵は一歩ずつ歩き出し、徐々に進む速さを上げていく。そして何も答えない覆面に刀を振り上げて走り出した。




「答えないのなら、俺がこの目で判断する」




 あっという間に二人の距離は縮まり、傭兵の刀が覆面に向かって振り下ろされる。覆面は弾を入れ終わると、静かに銃口を上げた。




「ああ、それで結構。こだわる気はない」




 目の前にいる傭兵に向けて、二発同時に発砲する。撃たれた傭兵は刀を振り下ろすのをやめて、自身に向かってくる弾丸を刀で切断する。




 一発でも人間技ではないが、二発を同時に切るという人間離れした技を見せた傭兵だが、刀の振り終わりを狙われて、覆面に蹴りを喰らわされる。




 傭兵は覆面の蹴りに後ろに倒れそうになるが、刀を離すことなくバックで回転して三回転ほどして着地した。




 着地した傭兵に覆面は銃口を向ける。傭兵のすかさず刀を構えると、二人はその姿勢で動きを止めた。




 睨み合う二人。そんな二人に声がかけられる。




「そこまでです」




 その声は傭兵の出てきた倉庫の扉の方からだった。

 扉の前にもう一人、覆面の男が立っていた。




「先輩ここには奴はいません」




 新しく現れた覆面は保管庫で管理されていた鉄屑を持ち出し、それを手に持って見せた。




「力の正体はこれです。公安の情報は確かだったようです」




 鉄屑を見て銃を下げる。




「……これで俺はお前と戦う理由がなくなった」




 刀を向けられているのに、銃を懐にしまう。




「戦う理由がない? なぜだ」




 望む回答でなければ、すぐにでも覆面に斬りかかるつもりだった。しかし、予想外の答えに男の身体は硬直した。




「お前にその力を与えたのは誰だ?」




 刀を向けた状態で時間が止まる。しばらくの沈黙の後、傭兵は口を開く。




「なぜ、そのことを知っている……?」




「俺には見えるぞ。お前の目を包む黒い力が……」




 傭兵は刀を鞘にしまう。そして地べたに尻をつけて堂々と座った。




「どうやら侵入者でも、その破片の価値を知る侵入者らしいな……」




 覆面の二人組は合流すると、鉄屑を持って傭兵の前に行く。傭兵に鉄屑を渡すと傭兵は懐から袋を取り出して丁寧にしまう。




「お前もただの傭兵ってわけじゃなさそうだな」




 さっきまで戦闘をしていた覆面が傭兵に向けて言うと、傭兵は頷いて答えた。




「俺はある人に頼まれてこの基地に来た。目的はこの欠片の回収だ」




 傭兵の持つ鉄屑。それは真っ黒な力を放っていた。それは悪霊に似た力。




「ある人に頼まれた? 誰でしょうね、先輩」




「聞けば分かることだ。話してもらえるか?」




 傭兵は袋を懐にしまった。そして質問に答えようとした時。倉庫の扉が勢いよく開かれる。




「何をしている!! なぜ、侵入者と談笑などしているのだ!!」




 武装した兵隊の集団。その指揮をしていたのは、傭兵に仕事を依頼した人物であり、この施設の責任者だ。




 傭兵は刀をしまった鞘を杖代わりにして、重心を少しだけ刀に掛けて立ち上がる。

 そして覆面の二人組と並んで、兵隊達と向かい合う。




「つまりお前も侵入者ってことだな」




「そういうことだ」




 傭兵は刀を抜いて、覆面の一人は銃を抜く。




「先輩、……どうしますか?」




「お前は下がってろ。ここは俺達で十分だ」




 武器を向けられた兵隊達はすぐさま銃口を向けた。




「裏切るか……。だが、想定はできたこと。その欠片を返してもらうぞ!!!!」




 銃声が鳴り響く。悲鳴と共に一人また一人と声が消え、5分と待たずに銃声は鳴り止んだ。




 倉庫に保管されていたヘリに真っ赤な模様がこびりつく。




「俺にこの欠片の回収を頼んだ人物。奴は月兎と呼ばれている」




 戦闘を終え、傭兵の告げた言葉に覆面の二人組は驚き言葉を失う。




「それは本当か?」




「信じるか、信じないか。それはお前の目で判断しろ」




 傭兵は刀を鞘にしまうと、倉庫の出口へと歩き出す。




「俺はその人にこの力について教わった。それまでこの力について理解できた。俺はその借りを返してるだけだ」




 倉庫を出て行こうとする傭兵を覆面の一人が引き止める。




「待て。月兎の居場所を知っているのか?」




「知らない。だが、近くにいる。ふとした時に奴は現れる。お前達は月兎を追っているのか?」




「俺は真実を知りたいだけだ。真実に一番近いのが月兎だ。なら、探し出すしかない」




「そうか。なら、いつか会えるだろうな。あいつはいつでも見えいる。俺はあいつが神に一番近い存在だと思ってるよ……」






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