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第20話 『海岸大決戦!?』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第20話

『海岸大決戦!?』





 楓ちゃんがタコの足から守ってくれている間に、ビーチから出て側の道路まで逃げた。

 ガードレール沿いに野次馬やビーチにいる逃げ遅れた人を心配そうに見ている人達が集まっていた。




「それでタカヒロさん。さっき言ってた。話はどういうことなの?」




 まだ息は整っていないが、私は肩を上下させながら黒猫に聞いた。

 黒猫は海にいる悪霊の頭に視線を向ける。




「あれを見ろ」




 悪霊の頭には掴まった人々が捕らえられている。その中に一際目立つ赤い衣装の人物を見つける。




「あれって……まさか…………」




「あの悪霊があそこまで大きくなった原因。そしてそれを可能にするほど強力な霊力を持つ人物……」




 真っ赤な鎧を見に纏った武士の姿。




「武本さん!?」




 そこにいたのは前に廃墟の病院で出会った武本という幽霊の姿。




「なんで武本さんが!?」




「さぁな。だが、あいつの霊力は半端ない。全く霊感のない人間にもはっきりと見えるほどだ。そんなあいつの霊力を吸い上げてあそこまでデカくなったんだ」




 頭に乗っている黒猫の説明を受けていると、突然背後から話しかけられる。




「じゃあ、あの幽霊を引き剥がせばいいってことだな」




「そうだ。…………あ」




 私達が振り向くと、そこには京子ちゃんがいた。

 突然、会話に京子ちゃんが入ってきて、私達の動きは止まる。



 汗が滴る。おでこを通り、鼻を抜けて顎の先に露が溜まる。




「あ、こ、これは私が腹話術をしてたの!! そう、猫が喋るわけないでしょ、だって猫だもの」




 私は必死で言い訳をして、タカヒロさんはおっさんの声で猫の前をする。焦る私達をリエはやれやれと呆れる様子で見ていた。




「大丈夫。最初から気づいてたよ」




 京子ちゃんから衝撃の事実が伝えられる。

 最初から気づいていた……。



 私と黒猫がショックで固まっていると、リエは京子ちゃんに近づく。




「じゃあ、私も見えてるんですか?」




「ええ。見えてるぞ」




 京子ちゃんはリエの頭に手を置くと、優しく撫でた。




「気づかないフリしててすまないな。コトミ達を怖がらせるわけにはいかなかったからよ。まぁ、あいつらもなんとなく察してるんだろうけどな」




 リエを撫で終えた京子ちゃんは悪霊の方を見る。




「黒猫の中の人。さっき言ってたことは本当か?」




「タカヒロで良いよ。……本当だ。アイツを引き剥がすだけで、かなり力を弱められるはずだ」




 タコ足は逃げ遅れた人たちを、次々と捕まえて頭の上に拘束していく。

 その様子を見ながら京子ちゃんは腕を組んで悩む。




「引き剥がすって言っても。どうやってあそこまで行くかが問題だな」




 京子ちゃんの言う通りだ。悪霊を弱体化させる方法はわかったが、そのためには悪霊に近づかなければならない。

 人をあんなに簡単に捕まえてしまう悪霊だ。そう簡単に近づけるわけがない。




「近づく方法……何かないのかな」




 私達は悪霊にどうにかして近づく方法はないか考える。









 レイを逃した楓はタコ足に追われていた。




「師匠達は無事に逃げられたみたいだから。僕も行きたいんだけど」




 二本の足が左右から同時に楓を狙う。楓は車のような高さのある蛸足をジャンプして躱した。




「全然逃してくれない」




 一本の足で十人もの人間を一斉に海へと引き摺り込む悪霊。しかし、たった一人の人間に反撃されたのが、よっぽど嫌だったようで楓を執拗に追い回す。




 着地のタイミングを狙い、タコ足が振り下ろされる。楓は拳を握りしめると、足に向かって拳を振り上げた。




「僕は早く師匠のところに行きたいんだァ!!」




 巨大なタコの足は殴られた衝撃で、高く浮かび上がる。そして土煙を立てながらビーチに叩きつけられた。




 しかし、楓の攻撃でも大きなダメージになっていないようで、すぐにウネウネと動き出して復活した。




「やっぱり足の一本や二本じゃ効果はないか。海の中にいる本体をどうにかしないと……」




 再び足が楓を襲う。楓がタコ足を避け続けていると、




「待たせたな!!」




 四人のヒーローが登場する。




「ゴーゴーレンジャーの皆さん!!」




 それは浜辺の避難誘導を続けていたレッド達だった。




「避難は終わったんですか?」




「大体のところはな。だから……」




 海から突き出ている悪霊の頭が、波を立てながらゆっくりと近づいてきている。




「次狙われるとしたら浜辺から避難した人たち。だが」




 逃げ遅れた人々を全て頭に捕らえ終え、八本ある全ての足が楓達に向く。




「まずは君を捕まえてからってことだ。だから、君を守りにきた!!」




 ゴーゴーレンジャーは腰につけているベルトのマークをなぞるように擦る。すると、四人のベルトが変形して、上空へと飛び出した。




「ゴーゴー変形!!!!」




 四人が叫ぶと、上空を飛んでいたベルトが形を変える。金属音を出しながら、それぞれが剣や銃などの武器に変形した。




「まだだ。早速だが、合体行くぞ!!」




「おう!!」




 レッドの合図に合わせて、ヒーロー達はポーズを決める。




「ゴーゴー変形合体!!!!」




 四つの武器はさらに変形して合体する。そして巨大なキャノン砲になった。

 四人のヒーローが協力して、出来上がったキャノン砲を持つ。




「すげーー!!!! カッケーー!!」




 楓が目を輝かせる中、キャノン砲の照準が向かってくるタコ足に向けられた。




「八本同時に吹っ飛ばすぞ!! ゴーゴーキャノン!!!!」




 ヒーローの大技が放たれる。しかし、




 キャノンから出たのは、生暖かい空気が発射され、周囲にバナナの腐ったような匂いが充満した。




「くっさぁ!?」




「しまった!? ブルーがいないからエネルギーが足りない……ッ、ぐぁー!!」




 四人のヒーローはタコの足に弾かれた。




「レッドさん、大丈夫ですか!!」




 タコ足に飛ばされた四人をキャッチして、楓は浜辺に下ろす。




「ああ、問題ない。しかし、ゴーゴーキャノンが使えないとなると、どうする……」




 必殺技が使えないことで、焦るヒーロー達。そんなヒーローを嘲笑い、ある人物が颯爽と登場した。




「フハハハ〜!! 情けないなゴーゴーレンジャーよ!!」




「お前は!! スコーピオン!!」




 それはレッドと共に避難誘導を進めていたはずの、怪人スコーピオン。




「スコーピオン! あのタコはお前達の怪獣ってことにしてるんだから。来るなよ!!」




 助けにいた怪人に対して文句を言い放つヒーロー。




「この騒ぎを全部俺達のせいにされてたまるか!! 封印が解かれた怪獣をヒーローと怪人が共闘して倒す。そんな映画風味のシナリオに変えてやる!!」




「あ、それも悪くないな」




 スコーピオンとレッドがそんなくだらない会話をしている隙に、スコーピオンに向かってタコの足が振り下ろされてきた。




「スコーピオンさん!!」




「問題ない。やれ、我が眷属達よ!!」




 スコーピオンの合図に従い、浜辺の地面から大量の蝉が這い出てきた。その蝉は一斉にタコの足に向かって飛んでいく。




「食いちぎれ!!」



 大量の蝉に噛みちぎられて、車よりも太かったタコの足が切断された。




「強い……。本当にあれにレッドさん、勝ったんですか?」




「疑うな。勝った」




 威張るレッドの背後にタコの足が砂埃を立てながら落下する。




「この調子で攻撃していけば、あの悪霊にも勝てるんじゃ!!」




 悪霊に勝つ希望が見え、楓達は喜ぶ。しかし、そう簡単にはいかない。

 先端が切られたタコの足だが、黒いオーラが本体の方から流れてくる。そしてそのオーラが先端のない足に吸収されたと思ったら、急に先端が生えて足が復活した。




「再生能力だと!! 俺達怪人でもあんな能力持ってる奴は珍しいぞ!!」




 復活したタコ足がスコーピオンに振り下ろされる。楓はスコーピオンまで駆けて行き、スコーピオンを抱き抱えてタコ足を避けた。




「危なっ! 怪人が助けられるとは……情けない」




「今は怪人はとか関係ないです。とにかくあの悪霊をどうにかしないと!! またさっきの技で攻撃を!!」




 楓はスコーピオンを連れて攻撃を避けながら、さっきの足を破壊した攻撃をもう一度お願いする。しかし、




「すまない。何度も連発できる技じゃないんだ。再生されて意味がないとわかってて出せる技じゃない」




「そんな……。このままじゃ…………。何か手はないんですか」




 楓は何か方法はないか、方法はないか悪霊を見渡す。ゲームの様な弱点はないのか、しかし、そんなものがあるはずが……。




 そうやって見渡していると、ある伸びてきている一本の足。その上を走る姿を見つけた。




「あれは……まさか!!」








 スキンヘッドの男がバイクのエンジンをかける。エンジンは地面が揺れる様な低い音を鳴らして、自身の存在を主張する。




「巻き込んでごめんなさい」




 私がスキンヘッドの男にそう伝えると、スキンヘッドの男は私にヘルメットを投げ渡してきた。




「気にすんな。どうせなら俺も誰かのために最後を迎えたい」




 ニヤリと笑うスキンヘッドの男。そんなスキンヘッドの男に、前方でバイクに跨っている京子ちゃんが怒鳴った。




「最後なんて言うんじゃないよ!! お前にそんなかっこいいもんは似合わない!!」




「姉さーん。こういう時くらいカッコつけさせてくださいよ〜」




 そんなスキンヘッドと京子ちゃんの会話を聞いて、暴走族の仲間達は笑う。定番のノリなのだろう。緊張感が砕けていく感じだ。




 京子ちゃんは頭に真っ白なハチマキを巻く。そして小さな声で呟いた。




「……お前はこの古臭い族の次期総長なんだしな」




 京子ちゃんの声は、笑い声で掻き消えた。だが、伝える気はなかったのだろう、言い直すことはない。




「姉さん。これを……」




 コトミちゃんが木刀を持ってきて、京子ちゃんに渡す。京子ちゃんは木刀を受け取ると、バイクに乗ったままその木刀を振った。




 風を切る良い音が出る。使い慣れているのだろうか、京子ちゃんは木刀を手慣れた手付きで振り回す。

 木刀の具合を確認し終えた京子ちゃんは、ベルトに木刀を挟んむ。そして私の方を向くと、




「霊宮寺さん。その子は置いていくと行きなさい。少しの間ならコトミに持たせたお守り。それになら取り憑けるはずだから」




 京子ちゃんの目線には私の背後にいる幽霊の姿があった。

 私はリエに顔を向ける。そして京子ちゃんに言われた通りにするか、リエに聞いた。




「だってさ。リエ、そうしたら?」




 しかし、リエは首を振る。




「私も一緒に行きます。私はレイさんに取り付くことにしたんです。なら、取り憑いてる人がどこに行こうとついて行くのが幽霊です」




 リエの回答を聞いた京子ちゃんは頷くと、何も言わずに悪霊の方を向いた。




「ならさっさと行くよ」




 京子ちゃんはエンジンは蒸す。私はスキンヘッドのバイクの後ろに乗り込んだ。




 いつでも行ける準備ができ、私は最後の確認をする。




「タカヒロさん。本当に武本さんを救い出せば、弱体化するんだね?」




「ああ、俺を信じろ」




 暴走族の最もゴツい男に抱っこされて黒猫が言い張る。

 暴走族と黒猫に見守られる中、二代のバイクが走り出した。




 海のすぐそばの道路を走ると、ガードレールを突き破って、浜辺の隣にある船着場に入っていく。

 この船着場は海に向かって直線に伸びており、浜辺よりも悪霊に近づける。




 そして浜辺よりも近づいたということは。




「予想通りね」




 タコ足の一本が浜辺から離れてこちらに向かってきた。

 タコ足が鞭の様に揺れて襲ってくる。スキンヘッドの男はハンドルを強く握りしめて、




「しっかり掴まれよ!!」




 バイクを引っ張る。するとバイクの前輪は浮かび上がりウィリーの状態になる。

 そして横なぎで襲いかかるタコの足に、バイクの正面からぶつかり、タコの足をジャンプ代替わりに飛び上がった。




「ギャィャァァァァァァ!!」




 私とリエは涙目になりながら必死にスキンヘッドの背中に抱きつく。

 バイクが着地すると、そこはタコ足の上だった。




「無事にいけたみたいね」




 私たちのバイクと並走して京子ちゃんもタコ足の上をバイクで走る。




「このままこいつの頭まで一直線だ!!」




 スキンヘッドの男はバイクを操りながら、不安定な足場を走行していく。








 数十分前。悪霊に近づく方法を思いついた私は、京子ちゃんにその方法を伝えてみた。

 隣ではリエと黒猫が無茶だと否定する。だが、京子ちゃんは自信満々に洗う。




「無茶ではある。でも、私とアイツならできる。でも、絶対って保証はない。それでも良い?」




「できるならお願いする。可能性があるならやるだけの価値がある」









 バイクでタコの足を走行していくと、他の足が私達を止めるために、ビーチからこちらへと方向を変える。




 次々と襲いくる悪霊の攻撃を、バイクの走行テクニックで回避していく。だが、




「今度は二本同時です!!」




「本当だァァァァァ!! どうするのよ!?」




 二本の足が上から同時に降ってくる。これでは逃げ場がない。




 私とリエは怯えるが、京子ちゃんとスキンヘッドは無言でバイクを走らせる。





「潰されるーー!!」




 落ちて来るタコ足。だが、私たちにぶつかる直前で動きが止まった。




「パイセン、流石に重たい」




「そうだが、これでこそ筋肉が成長する!!」




 二人のマッチョがタコ足を持ち上げて潰されるのを防いでいた。




「あなた達!! なんでここに!?」




「レイさんが走ってる姿を見て、タコ足に飛び乗ってきた。俺たちのことはいい、先に行け!!」




 マッチョのトンネルを通過してタコ足を通過する。だが、今度は横からタコ足が向かって来る。




「また来たァァァァァ!!」




 しかし、今度はここに辿り着く前に、タコ足が蹴り飛ばされて明後日の方へと飛んでいった。




「楓ちゃん!!」




「方法があるんですよね! 行ってください!!」




 楓ちゃんは浜辺からジャンプして、タコ足を蹴り飛ばしてくれた様だ。

 楓ちゃんは海へと落ちていく。




 私達はみんなの協力でついに悪霊の目の前まで近づくことができた。




「あと少し……っ!!」




 だが、次々と攻撃を防がれた悪霊は、方法を変える。

 私達の足場にしている足をウネウネと上下させて、私達を空中に投げ飛ばした。




 バイクと共に私達は宙を舞う。空中で無防備な私達を狙い、捕まえようと足を伸ばして来る。




「もうダメだーーー!!!!」




 私達が叫ぶ中、スキンヘッドの男も流石に限界の様で、




「ここまでか……」



 と呟く。だが、




「まだよ!!」




 バイクを足場にして京子ちゃんがタコ足に向かって飛んだ。




「姉さん!!」




「ここは任せな!!」




 ベルトに差していた木刀を抜くと、両手でそれを握りしめて、タコ足を殴り飛ばした。

 巨大な足が大きく弾かれる。




 京子ちゃんの力は楓ちゃん並みだ。




 しかし、タコ足を弾いたことで京子ちゃんは、悪霊から遠ざかってしまう。

 悪霊に近づけるのは、私達三人だけだ。




「もう少しですよ、レイさん!!」




 あと少し。あと少しだというのに、二本のタコ足が一斉に私達へと向かって来る。

 空中では逃げることもできず、何もできない。

 だが、ここで捕まってしまったら、みんなの協力が無駄になる。




 タコ足が向かって来る中。スキンヘッドの男が私の首を掴む。

 猫をつかむ様な掴み方。そんな掴まれ方をされた私はシュンとしてしまう。




「え……?」




 シュンとしながらも動揺していると、スキンヘッドの男は辺りを見渡しながら叫ぶ。




「幽霊!! その辺にいるんだろ!! 良いか、よく聞け!! 今からこいつを投げる。しっかり掴まれ!!!!」




「え? 投げる? え、え!? 私を!?」




 やっと通常の状態に戻ってきた私の背中にリエがしがみつく。スキンヘッドにはその姿は見えていないのだが、適当にタイミングを見計らい。




 大きく振りかぶると、悪霊の頭に向かって私を投げ飛ばした。




「キャァァァァァァァァァァッ!!!!」




 私の顔は空気にぶつかり、フルフルと皮膚が揺れる。




 スキンヘッドの男は私達を投げ飛ばしたあと、タコの足に捕まってしまった。




「レイさん、もう着きます!!」




 叫んでいた私だが、リエに言われて正気を取り戻す。スキンヘッドの男の投げた位置は、丁度武本さんが捕われている場所であり、武本さんの捕われている球体に私達は衝突した。




 私達が触れると透明な球体はシャボン玉の様に割れる。そして中から武本さんが出てきた。

 私達は武本さんと一緒に、悪霊の頭に落ちる。悪霊の頭はトランプリンみたいに柔らかくて、その上でバウンドしながら倒れた。




「お、お主は……タカヒロの友人か…………」




 バウンドが止まると、武本さんはすぐに意識を取り戻した。




「武本さん、無事で良かった」




 武本さんの無事を確認すると、悪霊の様子がおかしくなる。タコ足が暴れ出して、身体から黒いオーラが漏れていく。




「タカヒロさんの言っていた通り。武本さんがいなくなったから?」




「その通り! 拙者これでも強力な幽霊であるからな。拙者の力が無くなれば、ここまで巨大化した身体を維持することはできんのだ!!」




 武本さんは威張りながら笑う。

 悪霊の身体が揺れると少しずつ小さくなっていく。そして他の人が捕まっていた球体も割れて次々と人が出ていく。




 小さくなっていく悪霊が暴れて、私達は頭の上から振り落とされた。そして海に放り出される。




「ぶはっ!? みんな大丈夫?」




 海から顔を出して二人を探す。




「私は大丈夫です」




「拙者も無事…………って、また来たーー!!」




 海に投げ飛ばされた私達に、最後の足掻きで悪霊が足の伸ばしてきた。




「また武本さんを捕まえる気です!!」




「それは分かってるけど、どうしたら良いのよ!!」




 今は海面。空中よりは自由だが、それでも動きは鈍る。

 悪霊は小さくなっている。あと少し、ほんの少し。ほんの少しだけ時間を稼げれば、武本さんを捕まえることもできないはず。




 でも、どうしようもないィィィ!!!!




 私達は三人固まって、助けを求める。その時、突然向かってきていたタコ足が弾け飛んだ。




 何かに撃ち抜かれたように、穴が空いてそこから裂ける。それにより悪霊の足は私達に届くことはなかった。




 タコ足と共に金色に光る何かが海に落ちる。




「た、助かった……」




 何が起こったのかは分からなかったが、とりあえず助かった。悪霊も武本さんの力が無くなったことで、人間を捕まえることができなくなり、人間が解放されていく。




 人間を全員解放した悪霊は針を刺された風船のように、霊力を噴き出しながら空中を飛行したあと、ビー玉程度の大きさになった。




 力を失った悪霊に私は人差し指を向ける。すると、悪霊はビビって空を飛んでどこかに飛んで逃げていった。




「逃げられちゃったか……」




「でも、追いかけることできませんしね」




 悪霊が居なくなって、浜辺から避難用のボートがやってきて私達を救出した。

 悪霊に捕まっていた人たちも助けられて、悪霊の騒ぎは一応収束した。














 ビーチを見下ろせるホテルの屋上。二人の部下を連れて、男はコインを弾く。




 男はコインを弾き、キャッチしてという動きを繰り返す。

 屋上にエレベーターが到着して、エレベーターの中から白髪の男と赤髪の青年が降りてきた。




「……お前達もこの件を追っていたとはな……。公安」




 白髪の男に話しかけられて、男はコインをキャッチして弾くのを止めた。




「それはこちらの台詞。FBI………………いや、それは表面上の顔か。何の用だ?」




 コインを弾いていた男が振り返ると、白髪の男が何かを投げて来る。投げられたものをキャッチすると、それは小瓶に入った悪霊だった。




「月兎に繋がる情報がないなら、そいつは必要ない。くれてやる」




 そして瓶を渡すと、エレベーターに戻り帰ろうとする。そんな白髪を止める。




「待て。カルロス……」




「……ん?」




「お前達に話がある……」







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