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霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?  作者: ピラフドリア


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第19話 『壺に潜む巨大な亡霊』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第19話

『壺に潜む巨大な亡霊』






 スイカ割り大会も終わり、喉が渇いた私は自販機まで飲み物を買いに行った。




「レイさん。この後、京子さん達とビーチバレーやるって話になってましたよね。ワクワクしますね」




 私に取り憑いているリエは、私の後ろを浮遊してついてくる。




「そうね。チームどうするのかしら。楓ちゃんか、京子ちゃんが味方なら心強いんだけど」




「あの二人の運動能力はずば抜けてますしね……」




 自販機でお茶を買い、出てきたお茶を取ろうとしゃがむ。しゃがんだ時にふとビーチとは反対の道路側を見ると、海へと向かう人混みの中に、白髪の男性の後ろ姿を見かける。




「お兄様……?」




 私はお茶も取らずに立ち上がると、お兄様を見かけた方向へと走り出す。




「ちょっと!? レイさん!!」




 リエが私の取り忘れたお茶を持って追いかけてくる。私はお兄様らしき後ろ姿を追いかけたが、その人物を見失ってしまった。




「お兄さんがいたんですか?」




「え、いや、……」




「見間違えたんじゃないですか? 人多いですし、それにお兄さんは仕事で来れないんですよね」




 そうだ。来れないはずなのだ。でも、あの後ろ姿は……。





 モヤモヤが残るが、私とリエはみんなの元へ戻ろうとビーチへ向かう。

 しかし、戻る途中リエが足を止めた。




「リエ、どうしたの?」




「レイさん……何かいます……」




「何がいるって何よ?」




 リエは怯えた様子で尻餅をついて座り込む。私は座り込んだリエの元に急いで駆け寄った。




「どうしたの? リエ、説明して!!」




 かなり怯えている様子のリエ。ここまでリエが怯えている姿を見るのは久しぶりだ。

 そう、それは……。




「悪霊……悪霊がいるの?」




 リエは身体を震わせながら教えてくれる。




「います。それも大きい悪霊です……」




「それはどこにいるの?」




 リエはゆっくりと腕を動かし、海を指で刺した。

 震える手で悪霊の居場所を教えてくれたリエ。私はリエに抱きつくと、




「ありがとう。教えてくれて」




 そしてリエを抱っこしてみんなの元へと急いだ。




「楓ちゃん、タカヒロさん!!」




 すでに暴走族達とボール遊びをしていた二人を呼ぶ。




「レイ。俺のことはミーちゃんと呼べ。俺のことがバレたらどうするんだ!!」




「師匠、声大きいですよ!! ってレイさんもリエちゃん抱えて、他の人から見たら不自然ですよ〜。どうしたんですか?」




 確かに今の状況は不自然だが、それを気にしている暇はない。




「はぁはぁ、よく聞いて二人とも……いや」




 私はスキンヘッドの男を砂に埋めている京子ちゃん達にも伝える。




「海に悪霊がいるの……。危ないから今すぐ避難して」




 私がそう伝えると、暴走族の一部の人間は呆れた顔をする。しかし、




「確かに。嫌な気配を感じる……。隠れるのが得意みたいだけど。うっすらと漏れてる」




 京子ちゃんがそう言うと、暴走族の面々は深刻な顔になった。




「姉さんがいうってことは……マジか」




「兄貴を救ってくれた、霊宮寺さんが言ってたんだ。俺は最初から分かってた……」




 京子ちゃんの言葉で一斉に信じて、暴走族は焦り出す。




「姉さん、どうします?」




「今すぐに逃げるよ。私達がどうにかできるレベルを超えてる」




 京子ちゃんの指示のもと、スキンヘッドの男とその部下達は片付けを始める。

 楓ちゃんと黒猫は私に抱えられているリエを心配そうに見つめる。




「リエちゃんが教えてくれたんですか?」




「ええ、勇気を振り絞って教えてくれた。今は休ませてあげて」




「勿論です。でも、どうするんですか?」




「悪霊ならプールの時と同じか、それ以上に危険ってことよ。私達も逃げるしか……」




 楓ちゃんは辺りを見渡す。ビーチには私達の他にも多くの観光客がいる。今まで潜んでいた悪霊が姿を出したのか、それともどこからがやってきたのかは分からない、

 だが、悪霊がここにいる人々を標的にすれば、大きな被害になる。




「……そうね。分かった」




 私は片付けをしている京子ちゃん達に声をかける。




「あなた達。お願いがあるの。ビーチにいる人達を避難させて」




 今できる最善はビーチにいる人々を避難させること。




 前に悪霊を祓った紙。あれがあれば悪霊にも対抗できたかもしれない。しかし、あの紙は消滅してしまい、あれ以降お兄様には会っていない。




「俺達がか!? だが、俺達は兄貴の件があったし、それに…………まぁ、色々あってお前達を信じてる。だが、他の奴らは信じないぞ」




 そうだ。突然、悪霊がいるからビーチから離れてくれと言われて、信じる人間がいるだろうか。




 だが、悪霊が出てきたら、私達ちは倒すことはできない。人々を逃すことしか……。




「話は聞かせてもらったぞ!!」




 私達が悩んでいると、空の上から声が聞こえる。




「トォウっ!!」




 空から飛び降りてビーチに、五つの影が着地する。




「人々の避難誘導。このゴーゴーレンジャーと」




「怪人スコーピオンに任せてもらおう」




 現れたのはレッドが率いるゴーゴーレンジャーの面々と、怪人のスコーピオン。




「俺達がヒーローと、怪人の戦闘が起これば、観光客は避難するだろう」




「それに俺達が怪人が暴れているといえば、避難誘導もスムーズに行くはずだ」




 どうだろう。幽霊が出たと怪人が出た。そこに違いがあるのだろうか。

 ほとんどの人は同じ反応をする気がするが……。




 しかし、ここまで自信満々に言っているんだ。頼れるものは頼った方がいいだろう。




「レッドさん達、スコーピオンさんお願いがします」




「おう!!」




 レッドさん達に観光客の避難は任せて、私達も逃げるための準備を始める。

 いつ悪霊が動き出すかは分からない。だが、早くここから離れて、お兄様に連絡をするしかない。




 悪霊を倒せる可能性があるとすれば、お兄様くらいしかいない。




「霊宮寺さん、私たちは準備終わりました。姉さんの指揮のもと、私たちは避難します」




 スキンヘッド達に大量の荷物を持たせて、コトミちゃんは逃げる前に私達に一声かけてくれた。




「私達もすぐに逃げるから先に行ってて」




 私達も荷物を纏めると急いで浜辺から離れるために走り出した。

 予想以上にヒーロー達の避難誘導はうまく行っているらしく、客達は浜辺からは離れていた。




 実際にレッドとスコーピオンが戦うことで、観光客に危機感を持たせて逃しているようだ。




 しかし、ビーチの上にある道路や近くのビルの屋上には、ヒーロー達の戦闘を見に来た野次馬が集まってしまっている。レッド以外の緑、オレンジ、小豆はそんな野次馬を少しでもビーチから離そうと尽力している。




「レイさん!! あれ!!」




 砂浜を走っていると、前を走っていた楓ちゃんが海の方を見て足を止めた。

 私も楓ちゃんにつられて、海を見た。




 海には何隻か、漁船や観光船が浮かんでいる。そんな船のすぐの横の海面から、巨大な赤いタコの脚が現れる。




 船が小さく見えてしまうほどの大きなタコの脚。それは船の船体を掴むと、船を掴んで水面へと引き摺り込んでいく。

 浜辺からは離れていてよく見えないが、船の乗員が海へ飛び込んでいく様子も見える。




 あっという間に海に浮かんでいた船が、全て姿を消した。




「これはヤバそうだな……」




 楓ちゃんの肩に掴まっている黒猫は、そのタコの様子を見て焦る。




 ヤバイってレベルじゃない。前の悪霊を遥かに超えている。あんな怪物みたいな悪霊がこの世にいていいのか。




「早く逃げるよ」




 私はみんなを急かして急いで浜辺から出ようとする。しかし、




 私達の遥か上空を何かが通過する。太陽の光が遮られ、大きな影ができたと思ったら、前方に巨大な壁が現れて進路を塞いだ。




「なんなの!?」




 壁が降ってきたことでビーチの砂が舞い、視界が眩む。




「ゴホゴホ……レイさん、リエちゃん危ない!!」




 砂埃が飛び散る中、壁が私とリエに向かって迫ってきた。

 私は倒れ込むようにジャンプして楓ちゃんと黒猫のいる場所まで逃げる。どうにか壁を避けることができたが、私達の前や後ろにいた他の観光客の何人かは壁に巻き込まれて、海の方へと引き摺られていってしまった。




「……何よあれ」




 なぜ壁が突然降ってきたのか。それを確認するために振り返る。すると、その壁の正体は悪霊であるタコ足の一本であり、海から伸びて襲ってきていた。




 私達の場所だけではなく、ビーチの至る所に足が飛ばされて観光客を海へと引き摺り込む。




「レイ、本体の登場だ」




 黒猫がそう言うと、海面が盛り上がる。そして島のようにでかい、悪霊の頭が飛び出してきた。




 真っ赤な頭。タコのような見た目をした悪霊。頭の上には髪の毛とは違うが、森のように無数の針が刺さっている。




 針の先端には、透明なガラスのような球体が付いている。

 そして海に引き摺り込まれた人間の末路がそこにあった。




「人が閉じ込められてる……?」




 船に乗っていた船員や観光客。それらが全て頭にある針の球体の中に閉じ込められていた。

 閉じ込められている人々は力を失ったように、全身の力が抜けて座り込んでいる。




「力を取り込んでいるようですね……」




 私に抱えられているリエが、小さく声を出した。




「リエ。大丈夫なの!? 無理はしないで」




「……今、動けないでどうするんですか……。私は皆さんの足手纏いにはなりたくないです」




 リエは私の身体から離れて立とうとする。しかし、身体に力が入らないのか、ふらっと倒れそうになった。

 私は急いでリエを支える。




「無理しないで。ほら、私に掴まって」



 私はリエに肩を貸す。




 しかし、リエは何かしたわけでもないのに、だいぶ弱っている様子だ。悪霊を見て怯えて力が出ないのだろうか。

 プールの時もそうだった。リエは怯えてしまって動けなくなっていた。だが、今回はそれ以上だ。




 海の悪霊を見て楓ちゃんが話しかけてくる。




「レイさん。ここまで逃げててもいつかは追いつかれます。何か対策をしないと。被害も広がって大変なことになりますよ」




 楓ちゃんの言う通りだ。あれだけ巨大な怪物。逃げていてもいつかは追いつかれる。




「そうね。いつかは追いつかれて捕まる。なら……」




 少しでも時間を稼ぐ。さっき見かけたのが本当にお兄様だったなら。まだ近くにいるはずだ。

 その可能性を信じるしかない。




 ビーチにいる人達が悪霊の頭に捕まると、悪霊のサイズがさらに大きくなる。




「大きくなった……」




「へぇ〜。あの悪霊、人を取り込むことでデカくなるみたいだな。これは尚更、対策しないといけない」




 黒猫は楓ちゃんの肩でそう言いながら、悪霊に掴まった人たちを見ていたが、その中にある人物を発見する。




「……ん、おい……嘘だろ」




「タカヒロさん? どうしたの?」




 私は黒猫に何があったのか聞くが。黒猫が答える前に楓ちゃんが叫んだ。




「また触手が来ますよ!!」




「え? 本当だァーーー!!!!」




 再び、タコの足が伸びてきて浜辺の人々を捕まえようとしてくる。

 タコの足が私達の上空を通過する。




 これが落ちてくれば、そのまま海まで引きずられる。




「こんな危険な役はやらせたくはなかったが……」




 黒猫は楓ちゃんの肩から飛んで、私の頭に着地した。




「ちょっと!! こんな時に何してるのよ!!」




 頭に着地した黒猫は楓ちゃんに顔を向けることはなく、背を向けて伝える。




「楓。やってくれるか?」




 楓ちゃんはガッツポーズをして自信満々に笑った。




「任せてくださいよ。師匠。あんなタコ、タコ殴りにしてやりますよ」




 そして楓ちゃんは近くに浜辺と道路の間にある壁に向かって走り出した。

 楓ちゃんが走り出すと、黒猫が私に向かって叫ぶ。




「走れーーッ!!」




「え、え!?」




 私は動揺しながらも黒猫に言われたまま走り出す。楓ちゃんはほぼ垂直の壁を走って登ると、そこから高くジャンプする。

 そして私達の上空にあるタコ足をキックで弾き飛ばした。




「えええぇぇぇ!? マジか!!!!」




「あいつならあれくらい余裕だ。とにかく足の届かない場所まで逃げろ。道路に出れば足は来ない。その間に作戦を考えるぞ」




 楓ちゃんの活躍で一時的にだが、タコ足から逃げ切ることに成功する。




「楓ちゃんならあの悪霊に勝てるんじゃ?」




「無理だ。あいつは力を吸い取ってる。そうだろ、リエ」




 黒猫は私の方に掴まっているリエに同意を求める。




「はい……。力を吸い取ってダメージは回復します。でも。あれだけの人間を集めたとはいえ。あんなにデカくなれるわけ」




「ああ。船の乗員にビーチの人。あんなに捕まえたが、最初のデカさに比べれば、ちょっと膨らんだ程度だ」




 リエと黒猫の会話を聞いていた私は走りながら反論する。




「ちょっとってかなり膨らんでたよ。さっき!!」




「確かにそうだが。最初から島みたいにデカかった。だが、そんなデカいやつが今までどこに隠れてたって言うんだ。海底とはいえ、何ヶ月も見つからないはずがない」




 黒猫は自信を持って宣言する。




「ある一人を引き離せば。あの悪霊は力を失って、弱体化する!!」






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