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第16話 『ビーチパーティ』

霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?




著者:ピラフドリア




第16話

『ビーチパーティ』





 廃墟となった病院。そのベッドで横たわる鎧を着た幽霊。




「あーあー、暇だ。タカヒロのやつも最近来てくれんしな。うーむ、よし、一人でUNOでもやるか」



 ベッドの上に座ると、病室に置きっぱなしになっていたボロボロUNOを広げる。




「どうするか。よし、三人でやってる程で行くか。拙者と拙者の家来とそのまた家来という設定だ」




 一人で三役やり、UNOをやるためにカードを分けていると、月光の入っていたはずの窓が暗くなる。




「ん、なんだ。お主…………………ん、ウギャァァァァァアー!!!!」










 バスに揺られて一時間。トンネルを抜けると景色が明るくなる。




「レイさん、見てください!!」




 リエが私の隣で窓の外を見てはしゃいでいる。リエが扉を開けて顔を出す。すると、潮の香りが流れ込んでくる。




「ねぇ、リエ〜。暑いから閉めてよ〜」




「レイさん、暑さに弱すぎですよ」




 私が暑さに耐えながら扇子を仰ぐ中、リエは頬を膨らませて文句ありげに窓を閉める。

 私はバックを少しだけ開き、中に隠れている黒猫に同意を求める。




「ミーちゃんも暑いよねー」




「俺は大丈夫だぞ」




「お前には聞いてない」




「はぁ?」




 バスが目的地に到着して降りる。バス停では楓ちゃんが待っていた。




「お! やっと来ましたか!」




「あなた本当に走ってきたのね……」




 私が呆れている中、楓ちゃんは自慢げに胸を張る。




「当然です」




 流石にバスとは違い日が当たる中、バックの中にいるのは暑いのか黒猫も出てくる。

 黒猫を見つけると、汗だくの身体で黒猫に飛びついた。




「お、おい、楓、やめろーー!!」




「師匠〜!! 僕を褒めてくださいよー、師匠ーー!!」




「凄い、お前は凄いからやめろ!! 俺のミーちゃんが汗臭くなるーー!!」




 逃げる黒猫とそれを追う楓ちゃん。二人がそんなことをしている中、リエはバス停の奥に広がる景色を見つめていた。




「どう、リエ。海の感想は?」




「広いです!! 写真で見てた景色より、ずっと広いです!!」




 リエは笑顔で答える。




「こんなところで見てるだけで良いの? ほら、行くよ」




 私はリエの手を取ると海へと向かう。




「ちょ、レイ、リエ。置いてくなよ!! ミーちゃんを助けてからにして〜」




「二人とも待ってー!!」










 これは三日前のこと。マッチョ達の依頼を解決し、しばらく何もない日が続いていた。




「レイさん。ここに呪いの品置くやめてくださいよー」




「だって置くところないじゃん」




「それはそうですけど……。私、このソファーで寝てるんですよ。寝てる時視界に入って怖いんですけど」




 夏目から預かった呪いのダンベルと呪いのビデオは、リビングにあるソファーの後ろの棚にしまってある。

 お兄様がきた時にすぐに渡せるし、呪いの力でどこかに行ってもすぐに気づいて対処できるように、いつでも見える位置に置いておいた。




「だってしょうがないじゃない。最近忙しいからか、お兄様来ないし……」




 私はキッチンに行き、冷蔵庫から牛乳を取り出すと、コップに入れてそれを飲む。

 台所の隅っこの涼しげなところで丸くなっていた黒猫は、私が牛乳を飲んでいるのを見て、思い出したように立ち上がると水を飲みに行く。




 飲み終わったコップを水で濯いで、食器棚に置くと水を飲み終えた黒猫が話しかけていた。




「というか、お前の兄さん。なんだっけ……あれなんだろ、あれ、FBIなんだろ、こんなところにいないで国に帰れよ」




 私は黒猫に近づくと、髭を引っ張って弄る。




「なんてこというのよー! それで本当に日本からいなくなったらどうするのよー」




「知らねーよ」




 私と黒猫がそうやって喧嘩をしていると、ソファーで寝ていたリエが立ち上がり、




「私眠いので先にお風呂入ってきますね」




 そう言ってフワフワと飛んでいってお風呂へと向かった。




 リエが風呂に入った後も、私と黒猫は喧嘩を続ける。




「寂しいならお前もついてけばいいじゃねーか」




「嫌よ。あっちで住んでた時の記憶ほとんどないんですよ。それに私変化苦手ですし」




「言い訳じゃねーか」




「言い訳ですよ。でも、私がいなくなったらあなただって困るじゃないですか」




「それはそうだけど……だけどーー!!」




 くだらない言い争うを続けていると、しばらく経ち、リエがお風呂から出てきた。

 頭にタオルを巻き、身体から湯気が出ている。




「まだやってたんですかー。もう寝たいので静かにしてくださいよー」




 そう言って廊下からこちらに戻ってこようとしたが、玄関のポストに紙が入っているのを見つけ、リエは玄関の方へと向かう。




「なんか来てますよ…………あ、レイさん、これ、あなたのお兄さんからですよ」




「え!? お兄様から!!」




 リエに手紙を持ってきてもらい、封を開けて中を見ると、そこには近くの海のホテルのチケットと交通費が入っていた。

 そして手紙には休暇で行く予定だったが、行けなくなったから、使ってくれと書かれていた。







 ビーチに着き、服の中に水着を着てきていた私とリエは、服を脱いで早速水着になる。




「あれ、楓ちゃんは?」




 更衣室の外で待っていた黒猫に私が聞くと、




「ん、まだ戻ってきてないぞ。そろそろ来るんじゃねーか」




「そういえば、あんたまた、楓ちゃんに変なのきさせようとしてないよね?」




「変なの?」




 黒猫は首を傾げてとぼける。だが、私は忘れていない。楓ちゃんの高校のプールで除霊をした時、この変態は楓ちゃんに女性用の水着を着させていた。




 そんな会話をしてすぐに




「師匠ー、お待たせしましたー」




 楓ちゃんが更衣室から出てくる。




「か、楓ちゃん!? そのかっこいは……」




 楓ちゃんの全身を覆う黒い布。ラッシュカバーを着用していた。




「あ、これですか。海に来たらこれ使ってるんです」






 ビーチでパラソルを立てて、海を見つめる。




「おい、レイ。楓はサーフィンやるって、ボード借りにいったぞ。お前はここにいて良いのか?」




「私も行きたいけど。荷物を見張る係は必要でしょ」




「……俺がやっとくよ」




「猫に任せられるわけないじゃない」




「それはそうだが……あれ見ろよ」




 黒猫はパラソルの中で砂を集めて、お山を作っているリエの姿を見る。私と黒猫の視線に気づくと、リエは笑顔を向ける。




「海って楽しいですね!!」




 無邪気な笑顔を向けるリエ。そんなリエに私と黒猫は笑顔を作る。




「こ、これからもっと楽しくなるぞ」




「そ、そうよ」




 リエが砂遊びに戻ると、私と黒猫は顔を近づけて相談し合う。




「おい、あれで良いのか。あれで良いのかよ!!」




「だって、あの子私に取り憑いてるからあれ以上離れられないのよ。でも、私はここを離れるわけにはいかないし」




 なんで楓ちゃんは勝手に遊びに行っちゃうんだ。




「あれ、レイちゃんじゃない!!」




 リエが砂遊びをしている様子を黒猫と共に見守っていると、聞き覚えのある声が背後から聞こえていた。

 嫌な予感がした私は恐る恐る振り返る。




「ヤッホー!! レイちゃん。おひさね!」




 そこにはうさ耳をつけた水着の女性が立っていた。




「なんであんたがここに……」




「あんたじゃない。モエちゃんでしょ」




 黒淵さんは私の頬っぺたを人差し指でツンツンする。すっごいウザい。




「も、モエちゃん。なんで……ここにいるの?」




「今ここの海の家でバイトしてるよ。それで今休憩中だから休んでるってわけ」




 黒淵さんは当たり前のように私達のパラソルの中に入ってくる。

 そして何も言わずにクーラー置いてあった缶ジュースを開けて勝手に飲み始める。




「おい、レイ。ちょっと」




 私は黒猫に呼ばれて、黒猫に耳を近づける。




「アイツに荷物任せて、俺達は逃げないか?」




「そんなことして良いの?」




「ジュース代だ。……それともあのままで良いのか?」




 黒猫は尻尾を動かしてリエの方を指す。リエはお山にトンネルを開通させている。




「……分かった」




 私は黒淵さんに近づくと、首の後ろに手を通して肩を組む。




「レイちゃん……ど、どうしたの?」




 黒淵さんは顔を真っ赤にしながら私の顔を見る。




「ねぇ、モエちゃん。お願いがあるんだけど」




「な、なーに? レイちゃん」




「荷物。見ててもらえないかな?」




 どんどん黒淵さんの息が荒くなっていく。怖い、ちょー怖い!!




「なんで?」




「えっと、その、ランニングしてくるから!!」




 私は黒猫とリエを両手に掴むと、ダッシュで黒淵さんから逃げた。




「はぁはぁ、ここまで来れば。大丈夫でしょ」




「そうだな。アイツ、お前が離れた後、興奮しすぎて腕立てし始めてたぞ」




「……倒れなければ良いけど」




 リエと黒猫を連れて、ビーチを歩く。しかし、人が多くなかなか前に進めない。

 気がついたら、人の波に流されて海から遠ざかっていく。




「レイ。どうにかしろ」




「無理よ。というか、なんでこんなに多いのよ。いつもこんなに多くないじゃない」




 人混みを抜け出そうとしてもどうにもならない。それに下手に動けば、みんなバラバラになってしまうかもしれない。




 そんな人混みの中、リエが奥に何かを発見する。




「あれ見てください。人が多いのはあれが原因ですよ!!」




 リエに言われてその先を見ると、ステージが用意されており、その看板に「ゴーゴーレンジャー、ヒーローショー」と書かれていた。




「ゴーゴーレンジャーって……なんでモノホンのヒーローがショーやってんのよ」




 結局人の波に飲まれて、ステージの方へと流される。ついには舞台が見える場所まで辿り着いてしまった。




「なんで海に来てまで。あのアホなヒーローを見ないといけないのよ」




「あ、出てきましたよ!」




 音楽が流れると、舞台裏からレッドと三人のヒーローが現れる。赤、緑、オレンジ、小豆の配色のヒーローが並んだ。




「赤系の色の主張強いな!! 緑以外、ほとんど見分けつかないじゃん!!」




「小豆なんて汚れた赤みたいですよ。お古着せられてるみたいに見えますよ」




 私とリエが色について文句を言っていると、黒猫は目を輝かせて、




「ヒーローぽいな」




「どこが!?」




「やっぱり赤だろ。リーダーぽい色って言ったら赤だろ!!」




「そしたら全員リーダー志望ってことになるんだよ!!」




 レッドがスタッフからマイクを受け取ると、




「やーみんな。俺がゴーゴーレンジャーリーダーのレッドだ!!」




 そう言って挨拶を始めた。しかし、横からオレンジと小豆がレッドのマイクを奪い取ろうとする。




「俺がリーダーだ!!」




「私がリーダーよ!!」




 本当にみんなリーダー志望だった。




 と、そんな醜い争いが続いていると、音楽が切り替わり、邪悪な声がステージ中に響き渡った。




「フハハハー!! よく来たな。ゴーゴーレンジャー!!」




 そして舞台裏から現れたのはサソリの怪人だった。




「本物の怪人ーーー!!!!」




 観客達は作り物だと思って、凄い出来だと褒めているが、あれはどう見たって本物の怪人、スコーピオンだ。




 確かにレッドとは仲良かったけど、ショーまで手伝ってくれるの!?




「出たな。怪人スコーピオン!!」




「ふふふ、ゴーゴーレンジャー。今日こそ覚悟しろ」



 っと、スコーピオンがかっこいい登場をしたが、すぐにゴーゴーレンジャーはスコーピオンを囲む。




「お、おい。なぜ囲む。こういうのは一対一だろ。卑怯だぞ」




「何言ってる。聖者でも相手にしてるつもりか? 俺達はヒーローだ」




「いや、ヒーローは聖者…………あ、ちょ、やめ、蹴るな、痛い痛い!! ちょっと、小豆の人、小豆を投げないで!!」




 なんという光景。これをヒーローショーと言って良いものだろうか。

 これ以上ショーを見る気もなくなった私とリエは、黒猫を無理矢理連れて行き、舞台から離れた。




「あんなに人来てたけど。みんなあれ見に来てたの?」




「違うんじゃないですか。あれから客も離れてましたし。てか、あれが終わった後にアイドルが来るらしいのでそっちが本命じゃないですか」




「なんでアイドルの前にあんなショーを見せるのか」




 泳ぐ前から疲れてしまった。




 私達はそろそろ楓ちゃんも戻った頃だろうと、パラソルの方へと戻る。




「あ、師匠〜! レイさん、リエちゃん!!」




 パラソルでは楓ちゃんが戻ってきていた。




「モエ……黒淵さんは?」




「黒淵さんならバイトの時間だって、海の家に帰りましたよ」




「まぁ、荷物見張ってくれてたわけだし、後で海の家に寄ってなんか買ってあげるか……」




 私はパラソルの日陰に入り、水筒に入れてきたスポーツドリンクを飲む。




「レイさん、レイさん! 私にもください!」




 私の隣でリエが手を伸ばして欲しがる。




「あんた、自分の分持ってきたじゃない」




「私のつぶつぶの入ったオレンジジュースなんですもん! つぶつぶのせいで飲んだ気がしないんですもん!!」




「もー、全部飲まないでよ」




 私は水筒をリエに渡す。




 水筒をグビグビと飲むリエ。私がリエを見守る中、楓ちゃんは黒猫に水をあげる。




「はい。師匠もどうぞ」




「ああ」




 低い皿に入れられた水を黒猫は飲む。




「師匠達はどこに行ってたんですか?」




 楓ちゃんが黒猫に聞くが黒猫は水を飲んでいるため、私が答える。




「海に行こうとしたんだけど、歩いてみたら人混みに飲まれて。なんかステージの方に行っちゃってたんだよね」




「ステージですか。何やってたんですか?」




「何もやってなかったよ」







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