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幻影魔女のマジックワールド!  作者: 黒鐘ニブ
1/1

序章 魔女との出会い

 ―――コツ、コツ、コツ、コツ


 「…あの、誰かいませんか…?」


 ――――――コツ


 輪楽(りんらく)()()()()()に迷い込んでいた

 電気はなく、その代わり蝋燭(ろうそく)が壁に等間隔に並んでいる

 景色は変わらず、外部と連絡を取ろうとしても、スマホが圏外になってしまうのだ


 底冷えするような不安を抱き、屋敷をさまよっていると


 ――――微かに、前方に光がみえた


 「……………!」


 輪楽は出口を見つけたという興奮のままに、光の方へ走っていった 

 この希望を手放してはなるまいと、懸命に走った

 

 「…はぁ、……っ…はぁ……っ……」

 

 走るに連れて、光は強くなっていく

  

 そして


 「――――――」

 

 

 ―――――体が光に包まれた


 

 しかし、輪楽が目にしたのは出口でも何でもなく――――






 


 

 「――――――ようこそ、魔法世界(マジックワールド)へ!」




 一人の、赤髪をたなびかせた少女だった――――――





         ◇


 



 俺の名前は、天音輪楽(あまねりんらく)桜鹿(さくらじか)学園に通う高校2年生だ。紫髪で身長は172cmある


 「おい輪楽、早く学食行こうぜ」


 いつものように、学食に俺を誘ってくるのは、伊吹(いぶき)(はじめ)、幼稚園からの幼馴染だ。

 昔はよくしょうもないことで喧嘩ばかりしていたが、今では唯一無二と呼べる親友である


 「今日の学食に桜ちゃんジャンボパフェがでるんだよ!一年に一度出るか出ないかと言われている伝説のメニューだぜ、だから絶対ゲットしないとな!」


 「ははっ、相変わらず甘党だな」

 

 だがまあ、俺も甘党だし、伝説級メニューともなれば興味があるのだ

 そういうとこも、結構好みが合って、今でも仲良くやれているんだと思う


 

 ということで学食に向かう訳だが………


 

 「きゃーーっ!天音先輩と伊吹先輩だわ!」「今日も神々しい………」


 などと、廊下を歩けば女子の注目の的なのだ


 「まったく、(はじめ)は今日も凄い人気だな」


 (はじめ)も身長は170cm後半あり、ルックスも申し分ないのだが……


 「まったくだ」


 ほんとに人気なのは、輪楽の方であった

 

 (まあ、こいつが鈍感なのは今に始まったことじゃないが……)


 輪楽は鈍感なのである

 そのため、悪びれもなく微笑んで手を振ると――――



 「「きゃーーーーーーーーっ!!!」」


 と、女子から絶叫があがるのだ



 今日もいつも通りの日常である





         ◇

 




 しかし、そんな日常も当然と終わりを告げてしまうものだ

 今日も学校が終わり、輪楽は(はじめ)と一緒に帰っていた


 「はぁ、やっと今週も終わったなー」


 「ん、だな」


 二人は同じバスケ部に入っているため、帰りも一緒なのだ


 「それにしても、ジャンボパフェ無事ゲットできてよかったな!」


 (はじめ)が嬉しげに頬を緩める


 「ああ、美味しかった。そういえば、俺らの他にもゲットしてる奴がいたが、3年生に食われてたぜ……?」


 輪楽も頬を緩めたが、何処か引き()ったような顔になっていた


 「……まじかよ、俺食べるのに夢中で全然わからなかった………」


 「だろうな、口にいっぱいクリームつけてたぜ。写真撮っても気が付かなかったし」


 輪楽が茶化すように言う

 するとすかさず、


 「……っ?!聞いてねぇよ、今すぐ消せ!」


 頬を赤らめて(はじめ)が言う

 

 「嫌だね、お前だって俺の変な写真持ってるだろ?」


 輪楽が悪戯っぽく言う

 その姿は何処か憎めず、お茶目な一面も持っているのだ


 「ったく、ちゃんと消しとけよな」


 (はじめ)は諦めたように言った


 それからも暫く話し込んでいた


 「土日は久しぶりに部活ないし、ゲームのレベル上げかな」


 (はじめ)は超がつくほどのゲームオタクで、部活のない休日には、いつもオールしているのだ


 「あー、もうすぐ新シーズン来るしな。でも考査近いし、俺は勉強しないとなやばそう……」


 「ふ、お前勉強は駄目だもんな」


 輪楽はあまり勉強が得意ではなかった。しかし、(はじめ)がいつも教えてくれたため、赤点を難無く回避することができたのだ


 「ちぇー、運動は得意なのに……」

 

 「運動神経と顔だけよくても駄目だろうよ」


 「ふん」

 

 そして、家へ帰る途中で別れた


 輪楽は、親が田舎の叔母の家に世話をしに行っているため、一人暮らしであった

 いつも通り、少し外れた道に入っていくと、何やら()()()()()()()があった

 

 「………………?」


 輪楽がいつも通ってる道なので、あきらかに不自然であった

 家のようにも見えるが、玄関までには15段ほどある階段が架かっており、黒をベースとした3階ほどの建物である

 それは何処となく屋敷のようにみえた


 「……なんだろな」


 しばらく見入っていると、突然、家の扉まで導かれるように、白い光のようなものが伸びた


 「!!……よしっ!」

 

 人一倍好奇心があった輪楽は、不安ながらも、覚悟を決めて導かれるままに扉へと歩いていった




         ◇





 というのがここまでの下りである


 

 「――――――ようこそ、魔法世界(マジックワールド)へ!」


 優雅に椅子に腰掛けた少女は元気よく告げる

 屋敷に迷い込んでしまった輪楽にとって、誰かと接触できたのはひとまず安心できる状況であった

 しかし、普通ではないことが起こっているのは、輪楽にも容易に理解ができたのだ

 輪楽が今居るのは、明らかに異質な空間であった。先程彷徨っていた道中と同じく、壁には蝋燭(ろうそく)がかかっている。照明はなく、蝋燭のシャンデリアと、窓から差し込む月の光で部屋が不気味に照らされているのだ

 少女は椅子に腰掛け、優雅にティーカップを(すす)っている

 壁にはめ込まれた奇妙な水槽と、その中を泳いでいる魚、現実離れしたものばかりがそこにはあった

 輪楽が戸惑っていると、少女は言葉を続けた


 「はじめまして、妾はリヴェール。暗黒城《幻影(げんえい)》を統べるものじゃ」


 「――――――」


 年は16、17といったところだろうか。嬉しげに細められた双眸(そうぼう)は、髪と同じ、赤で染まっていて、黒をベースとしたドレスに身を包み、魔女(ウィッチ)を象徴するような帽子を被っていた。髪は腰にかかるほどあり、余計に魔女(ウィッチ)を思わせたのだ

 輪楽の過ごしていた()()では、到底見ることのできない、超美形の少女だった

 

 「………なにを黙っておる。お主も名乗らぬか」


 そして、ようやく自分が問われていることに気がついた


 「あ、えと、天音輪楽だ」


 「ふむ、聞かぬ名じゃな。だか良い名だ。―――――リンラク、改めてようこそ、()()のひとりとして主を歓迎するぞ」


 リヴェールは満足気に頷いてみせた

 しかし輪楽は、混乱するほかなかったのだ


 「あのっ、俺此処に迷い込んで、何がなんだかさっぱりなんだ……」


 (まあ、此処に来たのは俺の意志なんだが)


 何処か隠すように輪楽が言う


 その言葉にリヴェールは頷いた


 「ふむ、それもそうじゃろうな。ならば実際に、外を見てみるのがいいだろう。生憎(あいにく)、この城の中じゃいまいちわからんじゃろうからな。まあ詳しい話は後じゃ」


 そういって、リヴェールは立ち上がり、輪楽の前まで歩み寄った

 すると瞬間、地面に3mほどの魔法陣が出現し、紫色に光出した

 それに答えるようにして、先程同様、体が光に包まれたのだ

 輪楽は眩しさのあまり目を瞑る

 


 

 「――――――――――――」


 


 

 「―――――ぃ、、おい!そろそろ目を開けぬか」


 「―――――――はっ」

 

 目を開けたときには、もといた不気味な部屋ではなく―――――


 「ここは―――」


 「この城の最上階、《幻影のテラス》じゃ。どうだ、素晴らしい眺めであろう?」


 最上階から見えるのは、輪楽がさっきまでいたであろう広大な城と――――

 反射した月が浮かび、辺り一面を覆うような水であった

 空が暗いため、月がきらきらと水を飾り、なんとも幻想的な風景であった


 リヴェールは悪戯っぽく不敵に微笑んだ

 月に照らされたその顔は、何処となく女神を思わたのだ


 「この世界は魔法世界(マジックワールド)、お主の世界の意思が反映された、もう一つの世界じゃ!」









 ―――――――この出会いが、(のち)の輪楽の人生を大きく変えることになる


 

 


 

 

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