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ファントムの召喚  作者: こでまり


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黒い影

 漆黒の森に向かう馬車の中でエルドから渡された対策を見直していた。


「リコ。ネヴィル皇子から賄賂でも貰いましたか?」

「どうしてそう思うの?」


 ハミルトンからの指摘にドキッとした。あのお金は賄賂ではないはず……と思いたい。

 上目遣いでハミルトンを見る。


「この対策はどう考えてもかなり高度な魔法が必要です。ネヴィル皇子は労力に応じた対価を渡す人です。それは地位であったり金銭だったりとその人の希望に合わせたものを渡されると聞いています」


 ……。

 あの金貨はそういう意味があったのか。それならしっかりと成果を出さないといけない。

 でも、どうして私に金貨だったのか気になった。


「先日のお礼と今回の分の金貨は貰ったわ」

「やはり」

「やはりってどういうこと?」

「先日、レイモン皇子からリコの好きな物を聞き出していましたから」


 うん?

 私の好きな物は金貨ってことになっているのか。

 確かに嫌いではない。むしろ好きな方だ。モヤモヤしてきた。どうやら気がつかないうちに買収されていたようだ。


 金貨を貰った分だけの働きはしないといけない。リコはエルドから渡された対策を再度確認する。

 馬車は漆黒の森の入口までたどり着いた。前回はもっと奥まで馬車で行ったが今回はエルドの指示で森の入口から騎士団と魔導士団と一緒に歩いていくことになっている。


 馬車を降りて隊列を作って森の中へ向かう。

 入口からそれほど遠くない場所にネヴィル皇子たちと封印した大きな塊が見えた。


「ここで待っていて」


 騎士団と魔導士団に告げてハミルトンと塊に近づく。

 周囲に異変はない。少し離れたところから見る限り、封印は問題ないように見えた。


 リコは立ち止まって意識を集中した。塊は前回封印したときより大きくなっているようにも見えた。

 成長している?それになんか動いているようにも見える。


「リコ。何か見えますか?」

「裏側」


 王の身体から出ていた黒い影がここまで伸びているのがはっきりわかり、リコとハミルトンは慎重に塊の裏側に回った。


 エルドが言っていた通り塊に亀裂が入っていて、そこから黒いものが動いているのが見えた。


「中で動き出していますね」


 ハミルトンが確認しようと塊に近づく。

 プッシュー。


 塊の隙間から液体が出てきた。

 リコが防御魔法を使わなければハミルトンにかかっていた。


「大丈夫ですか?」

「ありがとうございます。危ないところでした。これはすべてを溶かす液体のようです」

「危険ですね。急ぎましょう」


 リコはエルドに言われた術を唱える。

 亀裂は何かの力が働いてゆっくり閉じていく。それを確認しながらもう一つの魔法を唱えると、亀裂は完全に閉じられ地面を這っていた動きも止まった。

 ほっと一息つく暇もなく、今度はハミルトンが魔法を唱えて始める。リコはその隙に森の入り口側へと回り込んで別の魔法を唱えた。


 リコとハミルトンで挟み込むようにして呪文を唱えていくと塊からは何も感じなくなった。完全に遮断出来たのが分かり、塊の裏側から戻ってきたハミルトンは振り返って塊を見ている。


「まだ何か?」

「いえ、先ほどの液体をだす魔物に心当たりがあるのですが、ここまで大きくなる魔物ではないので不思議に思っていたのです」

「どんな魔物ですか?」

「軟体動物のような魔物です。一個は手のひらサイズですがいくつかが塊になって攻撃してくる時もあります。ただ、それでも人より大きくなることはありません」


 大きくならないことはない。実際に目の前にある塊は私の身長を超えている。

 はじめから大きな魔物だと思っていたがハミルトンは集合体だと思っていた節がある。


「この間、この物体を見た時には集合体には見えませんでした。それに、手足や頭もありました」

「そこなんです。私たちにも知らない魔物が出現したとしか考えられません」

「エルド様はどうしてこの呪文を?」

「おそらく、はっきりとした根拠はなかったと思われます」

「根拠がなかった?」


 エルドはこの呪文なら抑えることが出来ると言っていたはず。もしかして、エルドはここに何度も足を運んでいたということか?

 それにしてもあれだけ封印を厳重にしても黒い影はいくつかの方向へ向かっている。


「ハミルトン様。戻ってエルド様に確認してみましょう」

「そうですね。これをいつまでもこのままにしておくことも出来ませんし、何か方法があるのなら早めに処分したほうがいいでしょうから」

「そうね」


 ネヴィル皇子とエルドが気にしていたのはハミルトンの疑問と同じだろう。

 念のため、エルドに教わった結界を塊に施し、森の入口には別の結界を作っておいた。これで、この森に入った者や塊に手を加えようとするものが分かるらしい。


 馬車の傍で待機していた騎士団と魔導士団たちに事情を説明して岐路につこうとしたとき、一人の騎士が空を飛ぶ鳥を呼び寄せた。


 第三騎士団の団長、ケネスの腕にとまったのは白い鳩だった。

 ケネスは鳩の足についている紙を取りハミルトンに見せた。


「リコ。ネヴィル皇子がこの近くで苦戦を強いられているようです」

「ネヴィル皇子が向かった先はこの近くなの?」


 騎士団と魔導士団に動揺が走った。


「リコ様。予定ではネヴィル皇子が向かった先はこの近くではありません。きっと何か事情があるのでは」


 ハイノバとしか聞いていなかったので王都の近くだと思っていたが、漆黒の森もその半分はハイノバ地方に位置する。だが、ケネスの話だと予定では王都に一番近い場所だったらしい。

 そしてリコたちが現在いるのはハイノバの北側にある、マルカ地方の付近で馬車では半日以上かかるところにいる。それがこの近くまで来ているのは何かあったとしか考えられないと言っていた。


「あの鳩は王宮に向けられたもののようですが何らかの理由で王宮にたどり着けなかったのでしょう」

「どういうこと?」


 ケネスの話だと王宮まで行く途中で何らかの障害があっていけなかったので引き返してきたようだ。


「行けますか?」


 騎士団と魔導士団に確認をしてみるとみんな頷いてくれた。

 急いで馬車に乗り込み、移動する。


 馬車の中でハミルトンから小さな紙を渡された。


(至急援軍を)


 それだけ書かれていた。

 王宮ということはレイモン宛だろうか。


「先程は言えなかったのですが、鳩に魔術が使われていました」

「どんな?」

「方向感覚を狂わせるものですね」

「私たちが見つけたのは運がよかったと思いたいわ」


 リコたちがいた漆黒の森から半時ほど馬車を走らせたところで騎士団と魔導士団が入り乱れて戦っていた。魔物はざっと見る限り五十はいるだろうか。

 騎士団も魔導士団も次々と魔物を殺しているが、それ以上に魔物があふれ出てきていた。ここから見えるだけでも押され気味だ。


 馬車から降りてネヴィル皇子を探すが見当たらない。


「どうしたらいい?」


 リコの隣に立っていたケネスに聞く。討伐に関しては素人なので経験者に任せるのが一番だ


「二つの隊に分かれて応戦しましょう。リコ様とハミルトン殿は私と一緒にネヴィル皇子を探すのはどうですか」

「分かりました。では編成はお任せします」


 ケネスは急いで二班の部隊を作り、それぞれどこに応戦するのか指示を出していた。

 ハミルトンは持ってきたポーションをみんなに渡している。その間、リコはネヴィル皇子の気配を探った。


「いた!」

「どこです?」


 ハミルトンとケネスが戻ってきた。


「ネヴィル皇子は一番奥、先頭で戦っています」

「行きましょう」


 三人は戦闘中の騎士や魔導士の合間を抜けて奥へと走った。

 どうか無事でいてほしいと願いながら。

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