第15話
その夜、拓郎くんを家に呼び出した。
拓郎くんとセックスしたかった。志野さんの前ではできない。母の仏壇の前ではできるが。
拓郎くんは喜んでウチに遊びに来た。志野さんと一緒に作ったお弁当を手土産に。
拓郎くんが母の仏壇に手を合わせた後、拓郎くんが持ってきた弁当を食べる。エビフライがからっと揚がっていてとても美味しかった。
「それ、りんちゃんもつまみ食いしたんだよ」
毛足は長くないのに柔らかい被毛のりんちゃんが目に浮かぶ。
りんちゃんに触れたいと思う。その思いを拓郎くんにぶつける。
そっと後ろから抱きつくと、拓郎くんはすぐにその気になる。待ってましたとばかりに。
私たちは母の仏壇がある部屋を後にし、私の自室へと移動した。
拓郎くんが覆いかぶさってくる。
私はその体をすこしだけ押し返す。
「俺たちって家族なの?」
問いかけてみる。
「恋人でしょ?」
「志野さんは?」
「僕にとっては妻であり、友達であり、家族。勇輔さんにとっては、友達?」
「友達で、家族」
「そっか。じゃあ、みんな家族だね」
みんな家族だね。その言葉にほっとする。脱力して、それを悟られないように、拓郎くんに抱き着いた。
「そうだね」
拓郎くんがくすくすと笑い始める。その最中に小さくかわいらしく笑うのがクセらしい。
同じようにくすくすと笑い返す。真似してるのか、自然に出ているのか、自分でもわからなくなる。
拓郎くんの体は大きい。
熱を持った厚い体にすっぽりと包まれながら、この温もりを手放したくないという思いが急にこみあげてくる。
拓郎くんの若い動きに合わせる。
必死になって彼の広く凹凸の激しい意外に筋肉質な胸を、若い頃に比べると少し薄くなった自分の胸に引き寄せた。