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空色の魔女見習い  作者: アル
第一章 転生の魔女見習い
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千載一遇

 改めて私はソファの方へと戻る。今度はお父様も私の向かいソファに座っていた。最初にお父様の方から私に話しかけてきた時点で仕事の方はとっくに終わっていたのだろう。


「本題に入るとしよう」

「今日私が呼ばれた理由を教えて貰えるということですよね」


 先の話の所為で少しだけ有耶無耶になっていたけどそうだ、本当は別の用件を聞きに来たんだった。なんの話だろう?


「先に言って置くが、これは命令では無い」

「はい?」

「私から頼みという前提で話を聞いて欲しいのだ。話を聞いてよく考え、請けるかどうか決めてくれ」

「はあ」


 何か私に頼み事があるのだろうけど、それ以外にはあまり要領を得ない前置きになんとも間の抜けた返事をしてしまった。


「端的に言えば頼み事があるのだ。必ずしも請ける必要はない。もし、頼みを請けまいが今後のお前に対する評価を下げたり扱いを袖にしたりなどはせん。それを踏まえてよく考えてくれ」

「了解しました」


 随分と長い前置きだなあ、とは思いつつも流石にここまで言うのだからきっとそれが重要なのだろうとその言葉を噛み締めるように意識する。

「その頼みではあるのだが」とお父様、そしてその次言葉を聞いた瞬間……。


「ウィアラクタ魔――」

「やりましょう!」

「まだ何も言っていないが」


 私の理性など全てを吹き飛ばしてしまったのでした。


「言ったじゃないですか! ウィアラクタ魔導都市! 魔導士たちの夢の都、魔法研究の最先端! 行っていいんですよね? いつからですか?」

「ええい! 落ち着かぬか莫迦娘が!」

「あいたぁ、頭叩くなんて酷いじゃないですか!」

「前言撤回もいいところだ、だからよく考えろと言っただろうに」


 なんとなくそんな予感はしていたんだ。なんとなくというかなんというか……何かありそうな予感ってやつ?

 とはいえ流石に言った側からの暴走は不味かったかな。もう遅いけど改めてお父様に怒られない内に冷静になろう。

 興奮の余り気がつけば立ち上がっていた様で、やはり周りが見えなくなるというのは自分自身でも恐ろしいと思いつつ、冷静になる為に再びソファに座ってから居住まいを正した。


「あー……ごめんなさい落ち着きました」

「まあ良い、では改めて説明する。お前には彼の都に行ってもらいたい」

「随分と突然ですよね。それで一体私は何をすればいいんですか?」

「有り体に言えば視察だ」


 視察とはこれまた。それはいいとしてお父様はなぜ私を選んだのだろう。


「私に視察なんて到底できない様な気がするのですけど」

「本当に視察してこいとは言わん」

「えー……」

「あの地にてただ過ごし、感じたことを報告してほしいのだ。何も特別にする必要はない。ただ好きなように過ごせ」


 それはあまりにも投げやりではないのかと……そうは思いつつも私にとってはとても魅力のあるそれも千載一遇のような話だ。


「期間はどのように?」

「一年だ。その間はお前の好きなように過ごすといい。報告はしっかりしてもらうがな」

「おいしい話には裏があると言いますが」

「嫌ではないのだろう? 元より先の答えを聞いた以上断るとは思わないが」


 魔法の研究をするには魔都はうってつけの土地なんだ。王族である以上王都をずっと離れることはできないと思っていたしそれが片道で数日もかかる場所なら猶更だろう。


「それは……そうですね。わかりました、やりましょう確かに断る理由などありません。ほかにも仔細があれば聞かせてください」


 そうして改めてウィアラクタ魔導都市へと視察とは名ばかりの比較的短期間の上京、いや都落ちを決めたのであった。

 それからはさらに細かい部分の話を聞き、忘れぬようにとメモ取っていたところで不意にお父様が脈略のない言葉をこぼした。


「やはりこうしてると優秀なのだがな。少しばかり年相応でもない気もするが」


 一瞬失礼しちゃうなと思ったけれどそれは当然っちゃ当然なんだよね。私しか知らないことだけど私の精神年齢なんて前世の記憶と混じってとっくに成人なんて超えてしまっている。魔法が絡まなければ基本的には立派な女性の立ち振る舞いなのですよ!


「本音を言ってしまえば今回の事を通してもっと政に意識を向けてくれれば良かったのだがな」

「それはないでしょう」


 そんなものはもちろん即答でお断りである。ただの苦手意識かもしれないけれど私自身が政治に関わるなんて全く想像がつかない。それに政治に巻き込まれるのもごめんだ。


「ふと思い出した事がある」


 先ほどまでずっとメモを確認していた私はお父様がそんなことを言うのと同時に俯かせていた顔を上げる。そこに何を思い出したのだろうか、苦々しそうな表情のお父様の顔があった。


「何時の話だったか……昔も今と同じようにここで話したことがあっただろう」

「何度かあったかと思いますよ」

「詳しくは覚えてないがいつの日か私に妙なことを宣言したときがあったと思い出してな」


 宣言……そういえばそれに近いようなことを一度だけ言った覚えがある。それは確か、何だったかな……。


『私、男性とは結婚したくありません』


 古い記憶から取り出したその台詞が私の声とお父様の声とで重なって聞こえた。

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