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空色の魔女見習い  作者: アル
第一章 転生の魔女見習い
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飴と鞭

「討伐した事自体はいいだろう。それが勝手に行ったもので無かったのであればさらに良かった話なのだがな。お前がその情報を得たのは何処なんだ?」

「群れの発生の情報は市場の商人からでした。各村を仕入れに周っていた商人が王都に戻る途中に発見してその情報を売っていたのです」

「そうか、それをお前は入手して行動したと言うことか」


 それを聞いた当時は商魂逞しい人だなと思いつつ、結果はどうであれ私もそれを利用して自分の利益の為に行動してしまった訳だ。


「ならば冒険者ギルドの依頼に関しては知らなかったという訳だな」

「はい、その時は其方には行っていませんでした」

「知っていれば多少結果は変わったかもしれぬな。先にも言った通りにギルドの方で依頼が出ていたのだが、運良くすぐに対応できるパーティが見つかったらしくその者たちもお前よりも後にではあるが討伐へと向かっていたのだ」


 つまりはその人達とバッティングしてしまったのだろう。そしてそれから考えられる結果は予想に難しくは無い。


「結果としてはお前のお陰で無事に討伐は出来たのだが、パーティが村につく頃には全てが終わってしまっていて何も得られず無駄骨だったということだな。魔獣どもはどこの誰かもわからぬ者によって討伐されてしまっていた上に目撃者が村人に居た為にパーティの手柄にできぬしな。お前が見事に冒険者の手柄と報酬を奪てしまったというところか」

「う……それは申し訳ないことをしまして」

「これに懲りたら考えなしに行動を起こさぬことだ。今回はというよりは今までは大事にはの下手をすれば依頼した村やパーティ、ギルド間でより酷いトラブルになってしまったかもしれぬ」


 大事なのはその行動の善悪ではなく、行動を起こすことでどうなるか。どういう影響が出るのかよく考えて行動しろ、とお父様はそう言いたいのだろう。それは魔法の事になると周りの目が見えなくなってしまう私にとってすごく身に覚えのあることだった。

 私が今まで見ようとしていなかった部分をまじまじと見せつけられていたたまれなくなっていると不意にお父様が優しい声色になって話しかけてくれた。


「とは言え、だ。こちらに来なさい」

「え? ……あ、はい」


 手招きするように片手をあげるお父様に軽い疑問を浮かべながらも、待たせない内に立ち上がって椅子に座るお父様と執務机を挟む様に立ってみるとこの位置ではなかったらしく、改めて「こちらだ」と言ってお父様は顔をこちらへ向けたまま横向きに身体だけを向けた。


「こっちですか?」

「ああ」


 もっと傍ということだったらしい。私はお父様の正面へと机を迂回し、そしてその傍に行った。


「先にも言ったことではあるが、討伐したこと自体は良いことなのだ。その迅速な行動のお陰で起こり得た被害を未然に防いだのだからな。それは褒めてやらなければなるまい」

「そうなのでしょうか……」


 自分の行動を反省しているところだった為かその様に褒めると言われても素直に喜べない私がそこにいる。そんな私を気にも留めず、お父様は不意を突いたように私の頭へと手を乗せてはそのまま優しく撫でてくれのだ。まだまだ子供である私の手よりも一回り以上も大きいその掌、撫でられたことに驚きはしたものの何のつもりかと身構える私。


「咎めなければいけない部分はある、だがな」

「ん……なにを――」

「お前はよくやってくれた」


 身構え、ほどなくしてその手を止めようと頭上に持ち上げた私の腕が止まる。たったそれだけで、その一言だけで頭の中にあったモヤモヤが吹き飛んだようだ。それでも、そんな私を翻弄する見事なまでのアメとムチに反感を覚えて撫でる腕に抵抗を試みても結局無駄に終わっただけだった。


「咎めたいのか褒めたいのかどっちなんですか」

「どちらもだ」

「むう」


 そうしてそんな苦し紛れの憎まれ口を言ったとしてもお父様は気にせずどこ吹く風とといった様子で傍から見ればむすっとしている表情の私の頭をしばらく撫でていたのであった。

 どれだけ撫でられていたのかは分からないけれど私が抵抗を諦めてなすが儘にされて居た頃、お父様は満足したのかその手を下ろし、居住まいを正して改めて私に向き合う。


「お前はやはり素直ではないな」

「はあ……」

「同年代の子に対して聡明ではあろう。だがどこか子供らしさに欠ける気はするな」

「ただの偏見じゃないですか」

「そうは言ってくれるな。私は一国の王であるが同時お前達の父でもあるのだ、こういった時は子供らしく素直に甘えてほしい時だってある」

「甘えるにはそれ以前の会話が不適当過ぎます」

「それも然り」


 尚も抵抗を続ける私の口撃にもお父様はそう言いつつ「がはは」と豪快に笑って躱してしまいそこまで来てやっと私はこの抵抗を無駄と悟ったのだった。

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