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君の音を、もう一度  作者: 漆葉響
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淡い春③

 店名を見ていなくても、売っているものでひと目で分かってしまう。

 それは、楽器店だった。国内でも国外でも有名な楽器メーカー。


 楽譜や楽器の使い方の本が置かれる棚、ギターや練習用のドラム、管楽器、打楽器、弦楽器。小さなものだと木管楽器のリードやギターのピック。

 本当に多くの種類があるな、と現実逃避気味に視線を動かす。


 だが、多分彼女が見せたいものはそれらじゃない。分かっている。分かるから、何度も何度も目を逸す。

「律くん、楽器店だよ!ほんと楽器って見てると楽しいよね!」

 彼女は僕と全くの対象的なテンションで、今まで以上に明るくきらきらとした目で話す。

 僕の気持ちを分かった上で言っているのか、それとも心からの言葉なのか。彼女の言葉を聞く度思ってしまうが、その答えが分かる程には共に過ごしていない。

 そして、また裏切るように、僕の返事を待たずに喋り出す。

「何しに来たか分かる?」

「……分からない」

 分かるよ。でも、嫌なんだ。僕は駄目なんだよ。

 また彼女が口を開きかけた時。


「あれ!?舞?」

 急に、後ろの方から男子の大声が聞こえた。

「おー!奏もいんじゃん!」

 続けて同じ声がする。

 ……もしかして弓岡さん達のことを呼んでたりしないよな……、と思うが、二人の人の名前が聞こえて、偶然二人とも一緒に居る人だった、なんてことあるのだろうか。

 関わりたくないな、と思いながら、恐らく僕の知り合いではなさそうなので、振り向かないで商品を見るフリをする。

「唱!?なんでいんの?」

 弓岡さんが駆け寄って行く足音がする。やはり知り合いだったようだ。

「いや、楽器屋なんだから楽器見てんだろ」

「あー、そっか〜。一人?」

「おう。お前らは二人……あれ、あいつも?」

「そーそー!秋音律くん!なんでそっち向いてるの?」

 ……そうだよな……そりゃあバレない訳ないよな。

 極力人と関わりたくないんだよ、と内心毒づきながら振り返る。

「あれ、誰だっけこいつ」

 さっきから弓岡さんと喋っていた男子が、目が合った途端指をさしながら言ってくる。

 失礼なんだよさっきから。あいつとかこいつとか。

「……誰?」

 チャラチャラしたやつだなぁ……と思いながら横に居た美門さんに聞く。

 見た目で判断するのもどうかと思うが、茶髪にピアスなのだ。そう思われても仕方がないのではないか。それより校則には引っ掛かっていないのか……とも思う。

「えーと、私たちの幼なじみで同じクラスの早乙女唱さおとめしょうよ。二人とも、誰って……学校で顔くらいは見たでしょう」

 見たも何も、弓岡さん達のことも気づいていなかったのに覚えているわけないだろう。

「いや、同じクラスなのは分かってるんだけどさ、なんか前から知ってるような気がして……」

 分かっているのか。少し驚く。

 前からと言っているが、僕の記憶には全くないので、多分気のせいか何かだろう、

「あ、早乙女唱です!秋音な?唱でもなんとでも呼んでくれ。よろしく!」

 早乙女が笑顔で喋っている。なんだか性格が弓岡さんと被る。幼なじみというのは似るものなのか。

「で、なんでこのメンバーなんだ?」

 それは僕が聞きたいんだよ、と言い返したいが、もう疲れたので黙る。

「仲良くなるため!」

 またもや急に出てきた弓岡さんが意味不明な説明を始める。

「へぇ〜」

 説明を聞き終えた早乙女が、チラッと僕を見る。そして急に近づいてくると、グイッと首に手をかけて引き寄せ、耳元でこそこそと話す。

「……お前奏の彼氏?」

「…………は?」

 なんなんだよ急に。

「……違うん?」

「……なわけないだろ」

 僕は学校で初めて会ったんだよ。ここにも来たくてきてるんじゃない、と言いたい。

「え、じゃあ舞の彼氏!?」

 今度は声を抑えながらも何故か焦ったように言う。

 何でそうなる。

「……ちげぇよ」

「あっそ〜、じゃあなんで二人といんの?」

 急に肩から手を離し、首を傾げる。

 ……やっぱり弓岡さんと似た種類の人間だ、と、思う。

「……無理やり連れてこられたんだよ」

「あ〜。奏そーゆー性格だもんなぁ」

 ……言えるほどの性格なのだろうかこの人は。

「あっ、じゃあ、俺楽器見に来たからさぁ、舞ちょーだい。舞もどーせ同じとこだろ?」

 この人も弦楽器なのか。

 まずこの状況で弓岡さんと二人行動は辞めて欲しい。と、横にいる美門さんに心から願う。

「そうね。まあ店を出る訳では無いからそれぞれ見たいところを見ましょう」

 僕の想いも虚しく、美門さんが同意を示す。

「了解!じゃあ私は律くんと見てるよ〜」

 弓岡さんも勝手に話を進める。

「それで、さっき二人とも何こそこそ喋ってたの?」

 そういえば弓岡さん達には聞こえてなかったのか。

「あ……早乙女が弓岡さんとか美門さんと僕が……」

「違う違う!なんでもねぇから!ただよろしくなー、って!」

 早乙女が僕の声を遮ってまた焦ったように言う。そんな話はしていなかったと思うが、特に言うようなことでもないな、と思い黙る。

「へぇー、言えないこと喋ってたの?後で聞かせてね、唱」

 美門さんは鋭いようで、早乙女にニコッと笑う。それを見て早乙女がビクッと震える。そんなに隠したいことなのだろうか。

「じゃあ私達は弦楽器のところに居るわね」

「分かった〜」

 美門さんが言って、早乙女を連れて行く。

 それを見送ると、弓岡さんがこっちを向いてニコリと笑う。さっきの話から逸らすために、話題を探す。

「……早乙女も何か楽器やってるの?」

 多分、弦楽器か何かだろう。

「そうだよ〜。えーと、チェロかな」

 やっぱり。

「……そう。オーケストラ部入るの?」

「多分ね。二人とも自分の楽器持ってるんだよ!凄いよね!」

「……凄いね。皆持ってるものなの?」

「いや、多分借りることも出来ると思う。まぁ小さい頃からやってる子達は持ってる方が多いのかな〜。あ、舞はお嬢様だからねぇ。唱も!えーと、お坊っちゃま?」

 言いながら一人で笑う。

 だから弓岡さんはしっかりしているのか、と納得する。早乙女はあんなに自由で良いのだろうか。

「……親が?」

「そうそう!舞のお父さんがお医者さんでね、んー、夢ヶ丘駅から少し電車乗って行ったところに皆家あるんだけど、そこの大きい病院の院長が舞のお父さんだから美門病院!あんなに偉い人なのに優しいんだよ!そこの一人娘が舞!」

「それは凄いね」

 そんなところの人だったのか。

「それで、唱は……。なんだっけ?忘れたけど確か結構大きい会社の社長と秘書さんがお父さんとお母さんじゃなかったかなぁ。でも唱はお兄さんがいるから継がないのかな?」

 だから早乙女は比較的自由なのかもしれない。

「……ああ。凄いんだな」

「そうだね。でもそれを周りに自慢したりしないから二人とも好かれるんじゃないかな」

 そうだろうな。

「じゃあ律くん。話逸らしたのはバレてるからね!行こ!」

 ……気づかれていたのか。

 こういうことは気づくのに、僕が嫌だと思うことは気づかない。やっぱり分かって無理やり行動しているのでは、と思う。もしそうだとしたら、何故そんなことをするのだろうか。やはり弓岡さんの行動はよく分からない。








 ●作者から(一応読んで頂けると有難いです)

 作者自身、淡い春編はいつまで続くのだろうか……とは思っています。


 どうも作者です。読んでくださり有り難うございます。

 そうです。本当いつまで続くんでしょう。書いてるやつがこんなことを……不思議ですね!((え

 そしてまた更新が遅い。もうそれは今更感ありますが。申し訳ないのですが、言い訳をすると、ハプニングが多数ありまして……(皆さんキャラ崩壊して消したり、よっしゃ公開だ!てなった時に何故かページが閉じ書きかけのデータが消えてたりですね!)。

 まぁ作者はギリギリ生きています。


 今回は……。新キャラ!ということでテンションが高い。

 唱くん好きなんです。早く出したかったんですこの子。楽しい。そしてまた律振り回し隊に加わります。舞さんはほぼ見守り隊ですが。まぁ良いとこかっさらって行かれると主人公が困る。そんで私も困る。どんな子なのかはこの先を読んでください(切実)


 この話を描き始めの頃はもっと沢山エピソードがあるはずだったんですが……。前回言ってた重いヤツとか……音楽とか……。ほんっっとうに内容薄くて申し訳ありませんっ。薄すぎて本当に……。


 今コロナとかで凄く大変な状況ですが、出来る限り自粛して頑張りましょう。大人の皆さんはそんな風にはいかないかもしれないですが、とりあえず休校になった学生の皆さんは家にこもりましょう!笑

 私もこもっています笑

 これ以上増えないことを祈ります。

 あ、Twitterにはよく出現するので、良かったら見てみてください。

 ではでは、次回も良かったら、宜しくお願い致します。

[2020.4.13]←前回から二ヶ月以上経っていました……。

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