表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の音を、もう一度  作者: 漆葉響
5/7

淡い春②

 ダラダラと居座り続けていたファミリーレストランから出て、同じショッピングモール内にある(らしい)書店に向かう。


 階をエスカレーターで登ってすぐのところに、書店名が見える。

 僕は知らなかったのだが、夢ヶ丘の駅に一番近いこの書店は、市内でも大きい方で、今いる階──つまり、かなり広い二階の全てが書店だという。文芸書や文庫、コミックから、専門書なども売られている。

 専門書には用がないので、三人で単行本と文庫本のコーナーを見て回る。


 休日だからか思ったよりも人がいたが、皆それぞれ静かに本をみていた。

 店内には最近流行りの音楽がかかっている。今流れているのは一昨年くらいからずっと人気が衰える事のないJPOPの音楽だ。男性アーティストが作詞作曲から歌まで歌い、確か亡くなった人への思いを綴った曲だったと思う。ダンスや、CDジャケットの絵も描いていた気がする。そういう人の話を聞くと、やっぱり才能ってのはあるんだな、と思う。


 何故こんなに曲に意識を向けているのかというと。


 「ねぇねぇ律くん、舞〜。凄いよ、ここ久しぶりに来たけど、この前映画化されてめっちゃヒットしちゃった単行本の初版盤があるよ!これピアノすコンクールの話なんだ〜。二人とも音楽関わりあるからさ〜、読んだら?演奏シーンの表現力、ほんっとに凄いから!」


 というようにずっと喋り続けているのだ。うるさい、と注意しようにも、周囲の迷惑に ならないよう、小声なのだから言いづらい。

 それに、弓岡さんがさっきから指差して勧めているコンクールの話はもうとっくに読んだし、表現力は僕も凄いと思っている。


 でもそれを言うとまた面倒な反応が返ってきそうなので、弓岡さんには悪いが無視して本を物色する事に集中する。幸い、美門さんが反応して二人で盛り上がり始めたので、こちらとしては有り難い。


 美門さんの返答からみて、僕がピアノに関わりがある事や両親の事は知られているのだろう。弓岡さんが言ったかは知らないが、どうせ時間が経てばばれる。美門さんのように音楽への関わりがあれば尚更だ。しょうがない、と思う事にする。



 書店へは最近、受験、一人暮らし、入学の準備などで暇な時間がなく、しばらく来れていなかったので、正直嬉しい。食費や生活用品の事を考えると、三、四冊は買っても問題ない、と思ったものの、何を買うか迷いすぎて決まらないのが毎度の落ちなので、自分の中で今日はやめてまた来よう、という結論になった。



 「律くーん、あとどれくらい本屋にいる?」


 僕が一人悶々としているうちに、弓岡さん達はもう欲しい本を買ってきたらしい。さっき盛り上がっていたものかなんなのか。二人ともそれぞれ本屋の袋を抱えている。


 「…もういいよ」

 弓岡さんはこの後もどこかに行くと言っていたから、そろそろ移動しないと遅くなってしまう。

 「え、何も買わないの?」

 「ああ、今回は遠慮しておく」

 「分かった。…そういえば律くんってどんな本が好きなの?」

 急だな、と思いながらも、話が長くなりそうなので本屋から出る為歩き出す。

 「…小説ならだいたい読むよ」

 文庫でも単行本でも、物語とあらばほぼ。

 物語に入り込めば、どんな所にも行ける。現実がそうではないと分かっていても、現実リアルを忘れて楽しめる。

 「へぇー。有名どころだと…、宮沢賢治とかは?昔すぎ?」

 「いや、ある程度は読むよ」

 まさか宮沢賢治をもってくるとは思わなかったが、やはり本の話となると無視できない。それに宮沢賢治はずっと好きだ。

 喋りながら本屋を出て、エスカレーター近くの邪魔にならない辺りで止まる。

 「舞も読む?」

 「えぇ。私は[よだかの星]とかよく読んだし持ってるわ。短いんだけど、やっぱり切ないものには惹かれるよね」

 美門さんものってくる。

 「へぇ、知らないな。今度貸して」

 「分かった。お父さんに言ってみればだいたいは借りられる」

 「ありがと。律くんはどの話が好き?私全然読んでないから有名なやつで!」

 「…[注文の多い料理店]は面白いよな。あと[オツベルと象]は学校で習ったんじゃないか?」

 確か中学生くらいで習って、そこから宮沢賢治に魅了された。

 「律くんそんな男の子っぽい口調も出来たんだね〜。オツベルは習ったね!中学かな?オツベルが悪い人だ、って分かってても死んじゃった時は悲しかったな。料理店のは短めだし面白いから好きだな」

 「…余計なお世話だ」

 …口調なんて知るか。

 「…奏が中学の授業を覚えているのが驚きね…」

 苦笑いを浮かべながら美門さんが言う。

 「舞ひど…、これでも学年で頭いい方だからね!?」

 弓岡さんが笑いながらつっこむと、そう?と美門さんも同じく笑いながら言う。

 こういう光景をみると、幼馴染っていうのは特別な絆だかなんだかがあるのかな、とか思ってしまう。まぁ女子の友情なんて分からないが。

 あと、こんな和やかな輪の中に僕が入っていていいのか、と。



 しばらく宮沢賢治や小説家の話で盛り上がり、そろそろ行くか、ということになる。

 「じゃあ次!さて、これからどこに行くでしょう?」

 またにやにやと笑いながら、弓岡さんが言う。この顔は何か企んでいる顔だ、と理解する。

 「…知らないしどこでもいいよ」

 「今どこでもいい、って言ったね?言質取ったからね?」

 あ、と思った時にはもう、弓岡さんは美門さんと歩き始めていた。やっぱり何か企んでいたらしい。

 どうせ無理やりでも連れて行かれるんだから、と、諦めて僕も歩き出す。


 *


 またエスカレーターで階を一つ上がり、三階につく。

 「律くん、ちょっと目つぶってね」

 途端、そう言われ視界を塞がれ、真っ暗になり、弓岡さんが落としかけた書店の袋を美門さんが持つ。美門さんも敵か。

 されるがままに歩き出すが、早々さっきまでの諦めに後悔する。行くところを聞き出してからついて行けば良かった。目を塞ぐほどの場所とはどこなのか。

 周りから見たら怪しいだろうな、とか考える。


 右だか左だかに何度か曲がり、そろそろ頭が痛くなる、と思ったところで、何の予告もなく視界が開ける。急だった為か、目の前が真っ白になってちかちかする。


 「はい、正解はここでしたー!」

 ようやく視力が戻ってきた僕に、弓岡さんが言い放つ。

 そこでやっと、自分の状況を理解する。




●作者から

 こんにちは。作者です。読んでくださり有り難うございます。

 これは…。読んでいて、待たせた割に少ないな、とか思った方もいるかもしれません…。すいません…。更新結構遅いのに、軽いし少ないんです…。スラスラ書けないんですよね…。申し訳ない…。あと、私の趣味が出まくりましたね。曲と本はなんでしょう?(笑)分かりやすいな。まぁ自分が好きなものと当てはめて考えてください。

 そして律の闇(笑) 



 次回予告としては(今の所…)、多分重くなります…。だから正直書きたくない…。あともしかしたら(本当にもしかすると)、新しい出会いがあるかもしれない。律にとっては。



Twitterも宜しくです。


 長くなりました。

 ミス等あったら指摘を…。

 次回も良かったら、宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ