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Dea occisio ーFlos fructum nonー  作者: つつみ
Epilogue:Flores ex flore flamma(咲き乱れ焔の花よ)
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『Quotque in flore malum esse oportet』

…………女神シーフォーンが、討たれた。




熱愛と傲慢に満ち溢れた女神は討ち滅ぼされた。






遂に、無辜の民を苦しめる根源は消えた。

彼女の死によって、恐らくは全土の殆どの人間達に掛けられた洗脳は解かれた事だろう。


何より、復讐者の望みが叶ったのだ。彼の恩人であった"あの人"の無念を、とうとう彼は果たしたのである。

















































「……………………はあ、ああ、やった、やったんだ」

彼は其れ以上言葉を紡ぐ事に難儀している様だった。

「あの人の………"彼"の無念を晴らせたんだ…………」

復讐者は崩れて生まれた夜明けの光に照らされながら、見上げている。

青紫色と黄昏よりも明るい黄金色の空を。




肩で息をする復讐者の姿は、満身創痍であり、同じ様に仲間達も満身創痍だった。だけど、彼等は気にしない。

出来る事の全てを彼等はやったのだから。

事柄の達成を実感していた。…此の後に何も残る事が無く、迫って虚無が彼等の心を蝕んだとしても。

























本来なら早くにでも帰路に着くべきなのかもしれなかったが、傷だらけである彼等に今はそうする余力も残ってはいなかった。



「はぁ、はあ………ああ、勝てたん、ですね」

レミエの身体から力が抜け、ふらふらと其の場に座り込んだ。

「やった、やったよね。アーレン兄さんの、かたきを、とれたんだ」

エムオルも其の場で尻餅をついて座り込む。

エインも瓦礫に身を預けて、静かに目を閉じた。

ーー復讐者だけが、其処に立っている。

































…さらさらと、女神が居た場所から彼女の一部であっただろう灰が風に乗って遠くへ飛んでゆく。


(…本当に、本当に終わったんだ。此れで…………)

今の彼の心には、虚無が押し寄せる迄も無く、ただ感慨が残った。

安堵も、使命も、達成も、何もかもが綯い交ぜになって一行を包んでいる。

ーーそして、夜が明けて何時もの青い空が高らかに存在していた。


































ーーガラッ。


























ーー少し離れた場所から、瓦礫が崩れる音がした。

「!?」一行が音のした方角へ視線を向け、何事であるのか見た瞬間、彼等の目には燃える様に赤い色が映った。










































「……はあ……………、はあ、……はあ、はあ…………………………」

瓦礫に身を預けながら、一行を憎々しげに見つめている者と目が合った。ーー追従者ペールア。紅蓮の魔女と謳われる実力者。



「貴女は……!!」レミエがはっと立ち上がり、ペールアの名を呼ぼうとした。

然し其れよりも早く、ペールアの唸りが復讐者へ向けられた。


























「〜ぅぅぅ…復讐者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………!!!!!!!!!!!」

腹の底から、寧ろ地の底から這い出る様な、獣も怯える唸り声を上げて、憎悪と怨嗟を込めて復讐者を睨んでいる。

「……何のつもりだ」佇んでいる復讐者はペールアを一睨みした。だが、ペールアには無意味であった。彼女は、よろめきながら復讐者を殺さんと近付いてくる。


















































「………あっ…………………………!!!!!!!!」

レミエの顔が青褪めた。









ーー一歩、また一歩とペールアが向かう度、彼女の身体から黒く禍々しい気配(オーラ)が溢れ出た。

歩を進める度に其れは禍々しさを増し、軈て紅い追従者は其の許容を超えて魔性を其の身に宿した。

そうして、黒い種子に増幅された彼女の憎悪や怨嗟は、留まる所を失う様に、彼女の内側から突き破る様に噴き出した。



………膨大な負の感情と闇が、螺旋を描いてペールアを取り囲む。

其れは黒い焔となり、遂には彼女の姿を変貌させた。

































「!!!!!!!!」

一行が驚愕し、変貌した彼女の姿を見て警戒を強めた。

各々が武器を取り、追従者の動きに備えて身構える。

ーーいや、追従者では無い。最早、最早一人の女神となって其処に顕現している。




「馬鹿…なっ、追従者が、女神に!?」

復讐者が驚くのも当然だった。ーー女神は、最初に万能の力を与えられたシーフォーンによって叶えられ、成り立った存在だったからだ。

女神は女神として、

追従者は追従者として。

シーフォーン亡き今、追従者であるペールアが女神になるのは可怪しい事なのだ。()()()()()()()()()()としたら有り得るのかもしれないが、そもそもシーフォーンはデインソピア、アンクォア、リンニレースの三人を女神にしろ、と望んでいただけであり、残る仲間は全て追従者として彼女自身の力で変えた筈だった。




ーーつまり、()()がペールアに何らかの仕組みを施し、シーフォーンの死、特にペールアの特定の感情が一方的に大きくなる様に変えた。

そして一定の条件が揃った時、「追従者ペールア」は「新しい女神」になる様にされた。

………そうだとしたら。

































「ーー…だとしたら、不味い事になる!!!」









復讐者の予見は、直ぐに成就されてしまった。

















































「ーー〜ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




ペールアの叫びは禍々しい炎を伴い、彼女の暗く淀んだ闇と病んだ心は、復讐者達の居る空中庭園を、聖都を業火に包んだ。

















































新しい女神として変貌し顕現したペールア、

…改め彼女が名乗った「ペールア・ラショー」は、女神シーフォーンを殺した復讐者を殺す為、世界に焔の花を咲かせたのであった。









          …………To Be Continued.

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