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Dea occisio ーFlos fructum nonー  作者: つつみ
Amore ardens summa superbia(熱愛と傲慢)
69/91

『Furor parvulis』

……夢を見る。夢を見ている。




夜の草原で■■■と話す夢。

幸せで、悲しい過去。ぜったい何とかするよ、と約束した■■■の姿はもう無い。殺されたのだ。


殺されてしまったのだ。

































随分と懐かしくもあり、見たくて、でも本心では見たくはなかった夢。

嘗て兄■■と呼んでいた者との夢。

彼は決して「忘れる」という選択は取らなかった。だから其れは彼の中で強く残り、心の傷となり、"女神を殺したい"と殺意を静かに燃やす切っ掛けとなった。




其の為に()()に近付いて、同行しているのだから。

…彼等を見た時確信したのだ。彼等も自分と同じだと。同じ存在へ復讐したいと。

















































彼はまるで思い出す様に夢を見る。過去の自分の追体験とでも言えそうな出来事。

聖都に来てから見るといういう事は恐らく■さんを殺した女神と関係が深いからだろう。

同時に、自分が一つの真実を知った場所でもあった。









「女神さまと、何とかやくそくしてくるから、待ってて」

夜の草原での遣り取りが再生される。

「うん、分かった。ちゃんとまってる」

彼の言葉に答えた自分の声。




『………なんですけれど、シーフォーンさんが………たツブ族を殺してしまったって…』

『…難だけど………だったから仕方が…………………………』

聖都で偶然小耳に挟んだ、とある追従者の言葉。

そして彼は確信した。

帰ってこない兄が女神シーフォーンに殺害された事を。

兄アーレンは機嫌の悪かった女神に"居合わせてしまっただけ"で殺されてしまった事を。









ツブ族の先祖が約束した不可侵条約は何だったのか。

女神が危害を加えない限りツブ族も女神には敵対しなかった筈で、その為にあった約束事だった。

「其の場に女神と其処に居合わせたツブ族だけだった」という理由で、不可侵条約が破られていいものなのか。

まして、エムオルにとっては血縁のある実兄だった。




■■■は…

……兄さんは……………


アーレン(兄さん)はたった一人の兄、最後の肉親だったのに。

































彼は不可侵条約を破り捨てる決意とシーフォーンへの殺意を抱いた。

(アーレン)を殺した女神を、彼は許さない。

兄の死を他の同族に知られればきっと大事になるのは分かっているから、(エムオル)は敢えて何も言わなかった。


先に不可侵条約を侵犯したのは女神の方だ。だからエムオルにとっては最早意味の無いものでしか無い。

けれど公になれば種族全体の未来は無くなってしまう。隠し事をするのならば其の道を取ろう。

此処までは短くて長かった。

復讐者達と同じ道を選んだから、自分はもう引き下がらない。




ーー夢から醒めた寝台の上で、誰にも聞こえない程にか細く泣いたエムオルの事を、彼等は知る事は無いだろう。

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