『Comantem flores, qui oderunt me et supra』
「……………………!!!!!!!!」
キラキラと両目を輝かせながら、一行を嬉しそうに見詰める女性の姿が其処に居た。
「す………数日振りです〜〜〜っっ!!!!」
「レ……レミエさん!!?」
唐突に腹の底から嬉しそうな声を出して再会の感動を噛み締めているであろう女性に驚きと戸惑いを見せながら、復讐者はよく知る人物の名を出した。
「何とか早くに合流出来て良かったです…」歓喜から一転、はーっと息を吐いてからの安堵の様子に変わる。
間に合わないんじゃないかと思った。と彼女は言った。
「エイン…どういう事だ………」
復讐者は後ろに立つエインの方へ振り返り、事の次第を問う。エインは澄ました顔で、同じく事情を知るであろうエムオルもふんすふんすと鼻を鳴らして其処に居る。
「私は出来る限りの事をエムオルと一緒にしただけですけれども」
至極あっさりとした様子で復讐者の問いに答えた。彼の性格も相俟って非常に淡々としている。
「お二人の事をそう、あまり言わないであげて下さいな。お二人のお陰なのですから」レミエが二人の間を割って入り、復讐者を宥める様に仲裁した。
「然しレミエさん、どうして既に」
何か一言でもあればちゃんと考えられたものを、と復讐者は改めてエイン達を軽く睨んだ。
「…ユイルさんの一件の後、お二方が私とユイルさんの為に、って馬車を用意して下さったんです。エムオルさんの伝手でツブ族の方が御者を務めているものを」
「ツブ族は中立種族でしょう?だから、女神や其の関係者達もツブ族が御者を務めている馬車に手出しは出来ませんからね」
エインの説明を受けて、復讐者は初めてああ、と頷いた。
「成程な、女神もツブ族を迂闊に傷付けられない筈だから確かに安全に行動出来るな」
「ええ。其れに私の事もよく聞いて下さって…ツブ族の魔法で此の姿にしてもらったんです」
レミエの姿が違う理由も序に明らかになった。
「……………………」
二人の遣り取りを、珍しい事にエムオルが少し離れた所から見ていた。
其の小人の表情は無表情の様だったが、何故か少しばかり翳りのある無表情に見えた。
エインは静かにしているエムオルの様子が気になって、何事かと訊ねる。
其れでもエムオルは何も言わなかった。
日も落ち、夜が近付く。
白壁の都の人並みは少なくなり、灯りが都を明るく照らす。
世界中では最も大きく一つの国の様な聖都だが、夜は静けさに包まれる。
今日ばかりは復讐者達も宿で休み、次の行動の為に英気を養う。
ーー女神の高く嗤う声が聞こえてくる。
猛火で輝く光景を、
世界が崩されてゆく光景を、
大切な"あの人"が死んだ事を知った時の絶望を、
彼は思い出す。そして同じく動く仲間も、夫々の痛みと虚しさを持っていた。
エインも、レミエも、ニイスも。
ーーエムオルもまた。
………今夜の月は暗く、赤い。




