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Dea occisio ーFlos fructum nonー  作者: つつみ
Amore ardens summa superbia(熱愛と傲慢)
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『Alba muri in regionem suam』

ーーさて、今更になるだろうが。

復讐者達一行は極力女神達の管轄下にある場所を通るのを避けながら目的地まで進んでいる。


本来ならば馬車等の交通手段に頼った方が明らかなのだが、生憎管轄下以外の整えられていない場所は対応していない場合があったり、女神の管理下である場合があったりと厄介でしか無い。



何かと不便極まりないながら、女神達の目を避け騒ぎを極力起こさぬ様に務めている。









…然しながら、噂というものは千里を駆け抜けてしまうものである。

復讐者が女神を殺したという出来事は、アンクォア殺害辺りから瞬く間に広まった。だからこそエムオルの力に頼らざるを得ない訳なのだが。



女神殺しについて、或る者は嘆き、或る少数の者は歓喜している。

傍から見て明らかにやり方こそ良くなくても世界を統治している存在だ。だから殆どの場合統治者の死による統制の喪失と混乱は免れられない。

故に嘆く。

一方少数の者は女神から理不尽に虐げられている者達ばかりである。

彼等もまた立ち上がり抗いたいとは思うが、数百年前の抵抗軍(レジスタンス)の戦乱を忘れる事は出来なかった。


だから、そういった者達にとっては復讐者は雲の上の存在なのだろう。

ーー自分達の代わりに無念を晴らす存在。

彼等からしたら一番に輝く一等星の様なものだ。だが、実際は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が欲しかっただけかもしれない。

































復讐者もまた、彼等の事なんか眼中には無かった。

『或る少女の願いを背負っているから女神を殺す』というのもあるのだが、其の最もたる理由とは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をする為である。


…全体から見れば彼の動機など身勝手極まりないものだろう。

然し現状を顧みれば、たった一人を死に追いやった彼女達が今や世界を統べ、そして世界中の人間達を飼い慣らし、挙句気分次第で殺戮すら厭わない。


彼女達にとっては、仲間内、内輪の団結で追放し更には追い詰め、そして自らの手を汚さずに相手を殺した。

其れが自分達の絶好にして最高の転機でもある訳であり、そして()()の彼女達が()()()()となった始まりだ。

…寧ろ、自分達が世界を治める程の力を得、好き勝手しても力で捩じ伏せられる様になり、どんな暴威も許されるようになった。そういう意味合いならば共犯となってしまった事すら気にする程でも無いし、ある人物を死に追い詰めた事なんて後悔していないだろうし、死んでくれた事を喜びすらしているだろう。


リーダー格とも言えるシーフォーン辺りならば「私達の為に自殺してくれて有り難う!!」なんて言いそうだ。

…記憶に偽りが混ざっていなければシーフォーン自身は親しい友人と死別してしまった為に人の死に関した傷があった筈なのだが。









ーー兎に角、

兎に角酷かったのだ。復讐者が四女神の内の一人、リンニレースを襲撃し、彼女の追従者であった筈のスノウルに殺される迄は。


























































女神達の失墜はリンニレースが死んだ辺りから始まった。

リンニレースの件については復讐者の手柄とは言えないが、表向きでは()()()()()()()()()()()による殺害とされている。



次にアンクォア。彼女については復讐者達が殺害を果たし、追従者ディーシャーも殺害されている。

もう一人の追従者については一応消息不明という扱いらしい。

何より彼の理念に影響を及ぼした出来事があったのは此の辺り。

















…三番目は、女神デインソピアなのだが、復讐者達にとって或る意味面倒で厄介で、そして非常に許せない存在だった。

最も許せないのはシーフォーンに越した事は無いが、其の最も許せず怨念を抱く対象と最も深い関係であるデインソピアもまた、悍ましくなる程の怨念を向けてしまう程であり、現行の世界に於いて彼女のやり方自体は相当イカれていた。


顛末は明らかであるが、デインソピア殺害後の混乱はこれ迄の二人と比べると大きかった。恐らくシーフォーンを殺害した際は其れ以上の混乱を招くかもしれない。

…まあ其の実を言えばリンニレースとアンクォアの件に関しては、医療組織や商人ギルドの人達の統率力が女神よりも優れていたからかもしれない。

















































「見えてきたぞ」

……おっと、復讐者が目的地を見据えている様だ。

「あれが聖都ミストアルテル…白壁の都……」

実際には遠くではあるが、目視の出来る距離に目的地は在る。

「何も厄介事が無ければ良いのだがな」復讐者は一行の身を案じている。聖都に向かう此の道程で、追従者から襲撃されたりする様な出来事が無ければいいが、と。




『都全体があの騒がしい女神の御所だって聞くけれど』

「噂程度だがな一応。スラムがあるんだし全体までとは少々言い難そうにも思えるが…」

復讐者もエインも、エムオルの魔法によって姿が変わってゆく。どうやら今回はソフィアリア・イルの時の様な姿ではいかないつもりの様だ。



『僕も実体さえあればなあ』

僕は彼等みたいに身体があれば、と少しだけ惜しく思った。

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