『Hiems vestigiorum』
ーー遠方の何処かで、恐らくは辺境と思われる土地。
珍しく雪の降る地域で、少しだけ積もっている。
此処は元々寒冷な土地なのだろう。冬枯れに伴う白雪がはらはらと降っては、様々な所を白く変えた。
其の白い大地を赤く染めながら、横たわる者が居る。
「あ…ううっ………………………、」
微かにだが呻き声を上げている。どうやら、赤く染まった雪は此の人物の流血によるものらしい。
何故流血した儘横たわっているのか、其れは本人にしか分からなかった。
ザク、ザク、ザク、ザク。
ーー少し遠くの方から、何かが歩いてくるらしい。雪を踏む音が、此方に近付いている。
ザク、ザク、ザク、ザク、ザク…
音は次第に大きくなり、足音の主が確実に近くに居る事を示していた。
ーー………ザク………………
足音は其処で止まった。大凡目の前。獣だろうか、其れとも人か。
倒れる者に、正体を知る為に見上げる力は無かった。
「………。」
倒れる者、追従者であるニルスィには、もう殆どの力は残っていないし、獣であれば間違い無く喰らわれている。
然し、足音の主は立ち尽くすばかりで何もしてこない。
警戒してるのか?
其れともやっぱり人間なのか?
(あ…駄目だ……目が……………もう…開けられ……ない………………………)
ニルスィの視界は暗くなってゆく。最早目すら開けられない。流血があまりにも多過ぎたらしい。…尤も、幸いな話追従者の一人である為此の程度では死なずに済むがーー
ニルスィの視界と共に意識が沈んでゆく時、僅かだが足音の主が知己である様な、そんな気がした。
……ああ、大丈夫ですかねこの人…
……………でもまあ大丈夫だろうね………この人も追従者だし……
丁度仲間が必要だって思ってたし■■さんなら適任かな。
確か…幻術使いだったっけ……上手く撒く事が………………
…こんな所で死なれちゃ困るわーほんと
「■■さんには存分に役立ってもらう。だからこんな所で死なないでねー」
スノーリーの為にね。




