『Post nostra intentio est scriptor』
…シーフォーンの件から日を跨ぎ刻限は午後。聖都ミストアルテルの某所に、追従者達が集まっていた。
追従者達は、殆どがシーフォーンの配下ばかりになってしまっていた。其々が沈痛な面持ちで立ち尽くしている。
「……もう、女神はシーフォーンさんだけになってしまった」
暗く、落胆した声が、其の場に木霊する。
「リンニさんも、アンクォさんも、ディーシャーさんも、……デインさんや、ファロナーさんまでも、居なくなってしまった」
一人は長い白い髪を持ち、もう一人は桃色の髪を持つ者。
桃色の髪の追従者ーーアラロが震える。
「彼女達を殺したのって、復讐者って人なんですよね?………怖い、怖いよ…!!今度は、私達がーー」
「其れ以上は言わないで下さい!!!!!」
白い髪のーークロルの叫び声が辺りに響く。
「……其れ以上は言わないで下さい。分かってるんです。復讐者、彼が彼女達を殺害しました。原因は確かに彼なのです」
「怖いわぁ。あのあんさん、ウチらを本気で殺すつもりやなぁ」壁に身を預ける、アユトヴィートが随分とオーバーに言う。
…が、彼女の言う事もオーバーな表現というものなんかでは無いのだ。事実であるし、復讐者は最後の目標としてシーフォーンや追従者達を殺そうとしている。
「そう。復讐者はシーフォーンさんだけで無く私達の事を殺すつもりでしょう」
クロルは毅然とした声で言った。
「でも、其れでも私達は戦わねばなりません。彼等は私達の敵でもあるのですから」
クロルは此の場に居る追従者達を鼓舞する。怯えていては敵わない。其れを伝える為に。
「でもーー」
アラロが其れでも怯えながら、ある一言を打ち明けた。
「…遠征に行ったニルスィさんも行方不明だし、ペールアさんも此の頃おかしいしーー………こんな状態で、どうにか出来るのでしょうか…っ」
アラロは酷く臆している。アユトヴィートの言った通りでもあるが、彼女の言う通り自分達の所でも問題が起きているのだ。
追従者ニルスィの失踪と、ペールアの異変の二つ。
最も深刻なのはペールアだが、この期に及んで消息を絶ったニルスィに対して、一抹の不安と疑念は拭えないでいる。
クロルもまた同じだ。アラロの言った通り、其の事を気にしている。ーー最も、シーフォーンの荒れ様が最もな心配なのだが。
「それは…確かに…そうですが………」
クロルもまた不安そうに眉を歪め、現状の不利に頭を抱えていた。
三都の女神が居ない今、世界情勢は不安定になっている。「女神による平定以前の世界」に戻りつつある。
更には戦力の大幅な減少もあって復讐者と相見えれば制圧されてしまってもおかしくなんて無いのだ。
「………。」アユトヴィートは独り、クロル達の様子を少し遠巻きに見ている。
彼女の表情は何時もの振る舞いと表情とは異なって彼女らしく無いものだった。
「……………………」クロルは現状を憂いながらも、相当落ち込むアラロを慰める。そんな彼女自身も不安には感じていたが、更に誰かを不安には仕手はいけない、と虚勢を張った。
(ペールアさんも、ニルスィさんも…どうして、何が………)
彼女は心の中でそう思いながらも、心の何処かに敢えて封じた復讐者達へのある一念から背を向けて、彼等を殺す事を誓った。




