表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dea occisio ーFlos fructum nonー  作者: つつみ
Dura et somnia(夢想と苛烈)
52/91

『Ex insania deam』

………復讐者達が女神デインソピアの御所を目指す頃、星の乙女殺害を終えたニイスが遂に合流した。

『遅くなってごめん、復讐者』

フワリと廷内にあっさりと侵入し、ニイスは持っていた報復者の剣を復讐者へ投げ渡す。

復讐者は慌てる事もせず剣を受け取り、改めて開き直す。



「ご苦労様でした、ニイス」

『成果は聞かれなくたってやり遂げたさ。少し手間取ったけれども』

「…よく出来たな」

貴方ならやり遂げられると信じていた、と迄は言わなかったものの、エインの表情は目的の通りに叶っている事を素直に喜んでいる様子であり、復讐者はある意味驚いていた。









「復讐者さん、此の先なんですよね!?」

途中レミエが訊ねる。

「先に大広間がある筈、我々の存在が知られているなら奴は此の先の大広間で迎え撃ってくる筈だ」

相手はデインソピア。

シーフォーンと同格ながら、ある種彼女よりも厄介な存在。

相応の気は抜くなよ、苛烈と夢想の力を舐めるな、と。



そうして一行が大広間へ繋がる扉を開いた其の先にはーー

































































「ーーあっはっはっはっはっは!!!!!ほんとに来たんだ!!!!!!!!!!!!もーやっぱり見こした通り!!!先にデインちゃんをおくの方へにがしておいて良かったな!!!!!!!!!!」




一際大きな声が響いた。



「!!!!!!!!」一行は驚く。

童女特有の高い声の後、大広間にけたたましく響く無邪気な嗤い声。


きゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

















ーー大広間の遥か上、星々を(かたど)る大シャンデリアの上。

小さな身体に愛らしい服に身を包み、小さな足をゆらゆらと揺らしながらまるで卑俗を見下す様に嘲笑い続ける者。

女神シーフォーン。熱愛と傲慢の女神。

童女の姿をしているが、秘めぬ本性は残酷な人間そのものの"運命に選ばれた女(ファム・ファタール)"を自負する「人間の残酷と薄情の本質を持ち」、「どんな形であれ女で在りたがる」女だ。




「…………シーフォーン、」

復讐者の声が何時もよりも恐ろしく低くなった。彼の瞳も、憎悪も、大シャンデリア上の一点に集中している。

「んー?なんだー?…あっ!おまえはふくしゅーしゃだったな!!いやーここは高すぎておまえ達がちーっぽけで、ゴミみたいにしか見えなかった!!!」

シーフォーンがケタケタと嗤う。



「何か何処かで聞いた事のある言葉を言いましたね…」

エインは大シャンデリアのシーフォーンを見上げながら言った。

「あ…あんな所に居たら危ないのに……!!」レミエが憎むべき敵の姿に何故かヒヤヒヤとしている。

(落っこちちゃえばいいのに)とエムオルは密かに思っていたが、復讐者が代わりに言ってしまった。




「ならいっそ落ちたらどうだ。降りないなら落とすぞ」

「きゃー!!こわーい!!!"いせいがいい"ってやつかー!!!おーこわ、こうばしいはつげんはひかえた方がいーぞーっ!!!!!」

相変わらずシーフォーンは復讐者を煽る。喜んでやっている辺りどうやら悪意はたっぷりと込めながら言っているらしい。


…何時まで経ってもシャンデリアから降りる事もせずに嘲笑と共に揺れていた為、復讐者は何も言わず銃で天井とシャンデリアを繋ぐ鎖を撃ち抜いた。

壁々の明かりのみの大広間は相応に暗い筈だが、復讐者の眼は鎖の部分を器用に捉え、そして彼の銃の腕前は鎖を断ち切ってしまった。

「えっ」

足を揺らしていた童女の嗤い声が止まる。そして童女は一瞬何事かと其の身を固めた。

















































ガシャアァァァァァァァァン!!!!!!!!

ーー空間内に硝子質の物が割れてゆく音が童女の無邪気な嗤い声を上回り、そして童女の姿を掻き消した。

復讐者とニイス以外の者達が落ちた弾みで潰されたのかと思っていたが、ーーただ二人、復讐者とニイスだけが大広間の一部分を捉えている。

「…小癪な、」復讐者が忌々しそうに吐き捨てた。



「きゃははっ!!!!!ざんねんだったな!!!そんなことで私をころせるとおもったのか!!!!!女神シーフォーンはそんなことで死んだりなんかしないんだからな!!!!!!!!!!」

またきゃはははとけたたましい嗤い声が辺りに響いた。

『全く以てしぶとさだけは連中最高峰だね君は。あの頃も余命がどうのこうのと言っていながら不健康な時間帯まで騒ぎ通し、挙句何処までもしぶとかったね』

自称少ない寿命が余計少なくなりそうな事を平気でしていたと、ニイスは言う。

「其の割には"寿命があと千年は欲しい"等と吐かしていたな」

紆余曲折があったが、今正に此の現状こそ彼女が叶えたかった言葉の通りなのだと再認識する。









「んっふふ〜…そうだ。やっぱりシーフォーンはかみにあいされた子なんだなって思ってるぞ。まあ、だからおまえたちみたいなのを見てると自分がいちばんだなって思えるんだけどな!!!」

ふふん、と鼻を鳴らしたシーフォーン相手に、復讐者は黙って銃を構える。

「高みの見物をするのは構わないが一部を尊重し其れ以外を蔑ろに見下し続けていると何時かは撃ち落とされる時が来るんだ」

「…………………」復讐者の言葉に童女は沈黙する。






「…じゃあ撃ち落とされる前に潰しちゃえば良いんですよ♡」

ニタァ…と口元に嫌な笑みを溢した。彼女の悪い嘲笑に合わせるかの様に上から巨大な()()が復讐者達の上に降って来る。

復讐者達が一斉に飛び退いた其の場所に、斃した筈の獣が立っている。

「……ガァgla2デ1n24噛みwwRソフィAcGara3剣ふグ衆kO6ス…ズ殺s………………」

追従者ファロナー。先程殺した筈の存在。

「あはははっ、デインちゃんに言っておいて良かったですよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って!!」

童女の幼さを僅かに残しながら少女の姿に変貌したシーフォーンが言う。




「貴方達が先程戦ったファロナーさんは偽者です。だってあんなにもあっさり殺されてしまったら戦力が大幅に下がるに決まってるでしょう?だから言っておいたんですよ、デインちゃんには。"ファロナーさんをデインちゃんの「創作」の能力でもう一人創って、偽物の方を連中に差し向けたらどうかな"って。まあ偽物でしたから貴方達の機転であっさりと斃されてしまいましたけれどもね」

そしてシーフォーンは、突然暗い表情へ代わり涙を流した。

「……っう、でも、例え創り者であったとしても、ファロナーさんだったのは事実です。仲間を殺されて悲しい。うっ、うう」

態とらしく、随分と大層な様子で。



「ほう、ずっと遠い昔に余命幾ばくも無かった貴様が、友の死を悼んだりする者だったお前が、仲間の命を軽んじた策を言うとは。随分と変わり果てたものだ」

復讐者のふう…という溜息。

「…だが、昔の貴様であっても"あの人"を追い詰め死に追いやり、自身を正当だ悪くないと言い、挙句彼の死を蔑ろにして踏み躙った。たった一つであっても貴様の罪は我々の中で消えない」

友の死を悼む程の人間であったにも関わらず、遠回しなりに人を殺し其の人の死を悼まなかった。

嫌いという理由で死すら踏み躙った。

尊厳をも殺した。

連なる者達との間に自ら怨恨を作り上げたのだ。


「貴様を片時も憎まなかった日など無いわ!!!!!」

復讐者の憎悪に満ちた叫びがシーフォーンの悲しむ素振りを否定した。

























「………っきゃっははははは、ははは、あははははははは!!!!!!!!!!なあんだ、そんな事?くっだらない、だから貴方達は私の為に消費されるだけでしか無いんですよwあはは、はー面白いwwこんな馬鹿な人達に憎まれてるんだ私?wふふっおかしくて笑いが止まらないwwwwww()()()()()()()()って、あと何回言ってあげたら良い???wふふふっwww」

「吐かせ、傲慢な女よ。自己擁護の為に其の言葉を使っていたのか」

復讐者は躊躇いも無くシーフォーン目掛けて数発撃ち抜いた。




「…痛いじゃないですか……()が話している最中に殺しに掛かるだなんて」

「お前はもう"()"じゃない。()()()()に成り下がっただけだ」

女神の言葉に復讐者は吐き捨て続ける。

































「……ふふっ…………じゃあそろそろ私が此処に居る理由でも話しましょうか。強い私と弱い貴方達じゃ不公平ですもんね」

シーフォーンがパチン!と指を鳴らす。

「来なさい。貴女に初めてのお仕事をあげましょう」

彼女の言葉の後に、広間の向こう側から現れた人影。









































見覚えのある、麗人の姿。

















































「え…………………」レミエの表情が青ざめてゆく。

女神シーフォーンの愛らしい顔に、狂気が宿る。

女神の言葉に、ねっとりとした魔性が、ただ使命の履行を促し、誘う。




女神の騎士(ディエシュヴァリエ)計画プロトタイプ、ユイル(Y-I-L)。貴女の初陣を飾るのは彼等にしましょう。復讐者達と、聖女レミエを殺しなさい」

虚ろな瞳が、彼等を捉えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ